#ありもしないはなし 19.10.26~20.4.9

#ありもしないはなし のハッシュタグで書いた怪談をまとめたもの。
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坂鴨禾火 @with_NEGI

繁華街の隅に電話ボックスがあり、中の電話はかなりの確率で壊れている。時折修理は入るようで使えるときも使えないときもある。場所柄酒飲みが無茶をするのだろう。面白いように吸い込まれてゆく。 #ありもしないはなし

2019-12-16 23:36:49
坂鴨禾火 @with_NEGI

先日理由がわかった。ボックスの扉に夜の繁華街の光がが映り込んで綺麗なのだ。面白いなと思って久方ぶりに入った。たぶん酔っていた。相変わらず誰かが捨てた煙草殻に酎ハイの缶が床に置いてあり、落書きがそこかしこにあり、電話が台に置いてあった。財布にテレカがあったので何となく入れる。

2019-12-16 23:41:50
坂鴨禾火 @with_NEGI

テレカが吸い込まれていった。受話器からは何も聞こえない。壊れている。そうしているうちに残り度数が二度減って、飽きたので受話器を置いた。テレカは使わなくなって久しいが随分度数が残っていた。柄は覚えていない。

2019-12-16 23:45:03
坂鴨禾火 @with_NEGI

そんな事を思い出したのは、占い師の友人と茶飲み話に電話ボックスの話になったからだ。色々聞かれてしたり顔をしていたので仔細を聞いたが答えてくれなかった。唯一壊れているのに度数が減ったと言ったら、あれは残りの寿命だといわれた。二度使って何かを聞いたはずなのだが、まるで覚えていない。

2019-12-16 23:49:56
坂鴨禾火 @with_NEGI

後日テレカを探したが、見つからなかった。

2019-12-16 23:52:55

死神伯

坂鴨禾火 @with_NEGI

骨だけの傘を差す老人がいて、小学生が死神伯だと怖がっていたが、月に三度は会うのでただの老人であると思う。大分昔になぜ傘が骨だけなのかと聞いたことがあったが、暫く考えて煙草を吸うのに邪魔にならないからだなと言った。先日も霙の中で吐いた煙の行方を見ていた。 #ありもしないはなし

2019-12-18 19:59:41

酒玉・毒玉

坂鴨禾火 @with_NEGI

道で酒精の匂いがするときょろきょろするのは、酒玉が落ちていることがあるからだ。酒玉は南天のような赤い小さな玉で、水に入れると良い酒になる。酒屋に持っていくと買ってくれる。子供が持っていると、大体大人に取り上げられる。 #ありもしないはなし

2019-12-25 21:28:59
坂鴨禾火 @with_NEGI

この話を新沼育ちの知人にしたところ、それは毒玉ではないのかという。毒玉とは同じく南天ほどの大きさの球だが色は青黒く、名前の通り毒である。毒もみに使う。子供が持っていると、あぶないからと大体大人に取り上げられる。

2019-12-25 21:30:36
坂鴨禾火 @with_NEGI

面白いなと思ったのはこの毒玉の毒を抜くには酒を垂らすのが良いそうだ。

2019-12-25 21:31:52

業の絵巻(西が原)

坂鴨禾火 @with_NEGI

西ヶ原の屋台で業の絵巻を売る店がある。無残絵に似た薄気味の悪い絵柄が薄い金属の筒に収められており、筒にあけられた隙間から引き出して眺める。わざわざ広げて売ることもあるが、大体は筒のまま売り、筒のまま買って後で広げる。 #ありもしないはなし

2019-12-26 21:40:36
坂鴨禾火 @with_NEGI

西が原の城主が抱えていた絵師が城主が死んでから糊口を凌ぐためにはじめたと言うが定かではない。大体は主人公を置き、簡単な筋立てがあるが、沢山の小仏に体中を覆い尽くされて苦しんでいたり、得体の知れない獣に八つ裂きにされたりしたりする。無論普通に死にもする。

2019-12-26 21:55:13
坂鴨禾火 @with_NEGI

筒のまま売るのは、実際の生死は別にして、そのときの業に応じた絵巻をひくからだそうだ。一度何も書いていない絵巻を引いた知人がおり、お祓いやなにやらをして貰ったようだが程なく死んだ。何も思わないままで死んだのだろうと事情を知っている人達は言った。

2019-12-26 22:07:15

庄屋塚

坂鴨禾火 @with_NEGI

川のほとりに堤があり、そこに板碑が立っている。庄屋塚と言う。庄屋の後家が髪に火をつけたところだという。 #ありもしないはなし

2020-01-07 23:12:33
坂鴨禾火 @with_NEGI

庄屋の一族は髪が伸びるのが異様に早く、恨まれるととみに伸びるのが早いという。昔堤を作ろうとした庄屋が治水を巡って村人に殺され、その後家が堤を完成させた。怨みはやむところを知らず後家を苛んだため、怨むなら怨めと堤に上り髪に火をつけた。

2020-01-07 23:20:56
坂鴨禾火 @with_NEGI

火が髪を伝い上るものの、髪の伸びる勢いもすさまじく、堤中に火の粉が飛んで誰も近寄ることが出来なかったそうだ。やがて怨む者が一人減り、二人減り、後家は火に包まれて死んだ。今でも庄屋の一族の末は今居に住んでいて、やはり人より髪が伸びるのが早い。

2020-01-07 23:26:43

御呂利(虫山)

坂鴨禾火 @with_NEGI

虫山へ行く途中に御呂利という停留所がある。山の中で降りる人はほとんどいない。バス停近くのガードレールが切れた所から少し下ったところにある巨石が御呂利の由来で、岩には注連を張り、岩の下には無数の石が詰めてある。この岩を御呂利と言う。 #ありもしないはなし

2020-01-14 19:08:58
坂鴨禾火 @with_NEGI

推すとわずかに揺れる。昔は頭痛平癒をこの岩に願ったそうだ。岩の下の石はその名残だという。ある日頭痛平癒の噂を聞いた何某が岩を推したところ岩はごろごろ転がりはじめ、同時にその人の首もどっと落ちて頭痛どころの話ではなくなってしまった。

2020-01-14 19:17:24
坂鴨禾火 @with_NEGI

以来御呂利を拝む人は減り、代わりに動いていないかを見張りに行く役ができた。停留所があるのはこのためである。御呂利の場所は今でもたまに動くので、そのたびに誰の頭が落ちたのだろうという。

2020-01-14 19:19:53

朱筆を買いに来る子供

坂鴨禾火 @with_NEGI

朱筆を買いに来る子供がいるのだと文具屋が言った。昔からある店で積もり積もった売物が随分ある。朱筆もいつか仕入れて売れ残っていたのが、子供に売れたので記憶に残ったそうだ。その後も来る。朱筆を買っていくので仕入れたらまた売れた。 #ありもしないはなし

2020-01-17 22:33:44
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