「本格ミステリの原罪」と後期クイーン的問題

メフィスト2020Vol.1掲載の拙論にまつわるあれこれ
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@quantumspin

「虚構本格ミステリと後期クイーン的問題」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1492592

2020-04-11 16:22:14
@quantumspin

自分が理系にしてなぜかミステリ評論などという文系作業をどうにか続けてこられたのも、ひとえに理系研究が実践する仮説構築作業と文芸評論で必要とされる批評的読解とがほとんど同じ頭の使い方をしているからなのだよな。

2019-08-30 16:53:59
@quantumspin

要するに、自然科学における実験データが、文芸評論においてはテクストに対応するわけです。これらに対する説明体系を、理系は科学法則と呼び、文系は評論と呼ぶわけですが、いずれも無矛盾な説明体系というか理論というか、そうした人工的仮説という点で共通しているわけです。

2019-08-30 17:03:40
@quantumspin

理系は最終的に『真実はいつもひとつ』というふるいにかけられるので、解釈の多義性を誇る文芸評論とは別物と思われるかもしれませんが、それは事実と仮説との一致度の検証で精査される時点の話であって、仮説構築の時点での理系の発想の飛躍っぷりたるや、『真実はいつもひとつ』を守っているとは到底

2019-08-30 17:12:46
@quantumspin

理系と文系の関係については推理作家協会会報の『入会のご挨拶』でも語っています。こちらではミステリ評論と特許発明との関係について語りました。実は本稿はメフィスト評論賞の原稿執筆の合間に仕上げたもので、そういった視点で改めて読み返すと面白いものかもしれません。 mystery.or.jp/magazine/artic…

2019-08-30 17:37:52
@quantumspin

『法月綸太郎の消息』は『ガウス平面の殺人』や今書いている文章にも本質的に繋がる論点を主題とする短編集で、この本の出版がもう少し早かったら自分のメフィスト評論もかなり違ったものになった気がしますね。それくらいクリティカルな指摘をさらっと書かれています。どこまで深いんだ法月さん。

2019-09-21 11:33:30
@quantumspin

メフィスト評論賞の選考対談で法月さんは、拙論のリアリズムに関する指摘を『早坂吝の社会派への目配せに通じる倒錯感』と評されていましたが、『消息』を読むとその意味がとてもよくわかりますね。このあたりは今の文章にもダイレクトに繋がっているので、詳しく掘り下げたいところです。

2019-09-21 11:45:03
@quantumspin

こうした作者の意図は書き下ろし短編『白面のたてがみ』を読み初めて伝わるよう書かれている、つまり他の三編を雑誌などで読まれた方が『白面』を通過する事で読み方が変わるよう設計されていると読めてしまったのですが、本当にそうなら何とも恐ろしい話で。。

2019-09-21 12:23:43
@quantumspin

たぶん『法月綸太郎の消息』が安楽椅子探偵形式をメタミステリで挟んだ短編集である事には意味がある筈ですよ。

2019-09-22 21:36:02
@quantumspin

そういえば『法月綸太郎の消息』で法月さんは、間の二編を『安楽椅子探偵形式に焼きなまし(アニーリング)処理を施したような』と表現していますが、安楽椅子探偵形式の自由エネルギーを最小化するともっとカオスな作品が出現する筈なので、さすがにそこまでやってしまうのは自粛したのでしょうか。

2019-09-27 16:14:24
@quantumspin

ともあれこうした〝アニーリング〟がかつての肩こりを和らげているのは明らかであって、法月さんはこうした準安定解にトラップさせる事であえて『初期クイーン論』からの連続性を担保しようとしたのかもしれませんね。

2019-09-27 17:46:15
@quantumspin

ルビ論はデリダのエクリチュールの議論を思いだして大変面白かったです。

2019-12-08 22:46:34
@quantumspin

「蘇部健一は何を隠しているのか?」で個人的にツボだったのは、モダーン・ディテクティヴ・ストーリイ論を叙述トリックに拡張する感じの事を書かれていたあたりだったりします。何故か最近『黄色い部屋』が気になっているので。

2019-12-12 18:07:58
@quantumspin

ホワイダニットを期待するのは通常犯人ですが、叙述トリックではこれが作者になっているわけですね。作者を犯人と見立てた上で、「何故殺したか」と問う代わりに、「何故書いたか」と問うているわけです。

2019-12-12 19:08:25
@quantumspin

4月8日発売のメフィスト 2020 VOL.1に、メフィスト評論賞受賞後第一作「本格ミステリの原罪――井上真偽論」を掲載いただけるようですね。「ガウス平面の殺人」では語り尽くせず、やむなくカットした井上作品の多くについて、原稿用紙50枚分も語らせてもらえました。 amazon.co.jp/dp/B086JTXM3C/…

2020-03-30 21:46:47
@quantumspin

身辺バタバタしていて、本件の営業活動をなにもしないまま発売日になってしまいました。。近日中にはなにか書かせてもらおうと思っていますが、とりあえず、受賞作は後期クイーン的問題を中心に据えましたが、本論の核はモダーン・ディテクティヴ・ストーリイとだけ書いておきます。

2020-04-08 18:10:05
@quantumspin

「ガウス平面の殺人」を読まれた方なら、本稿で虚構本格ミステリとモダーン・ディテクティヴ・ストーリイ論との関係を論じたと言うと、それなりに驚いてもらえるものかもしれませんね。というのも「ガウス平面」を読む限り、犯人やホワイダニットといった概念が入る余地がなさそうに見える筈だからです

2020-04-09 17:56:06
@quantumspin

「ガウス平面」のこの弱点は、執筆当時、既に気付いていました。そしてもし本当に、ライトノベル的な虚構本格ミステリが自然主義的な実本格ミステリと対をなす形式なら、単に探偵をキャラクターに置き換えた、キャラクター認識論を論じただけでは恐らく済まない筈と、そうぼんやりと思っていました。

2020-04-09 18:06:09
@quantumspin

これは当たり前すぎて誰も指摘しない話ですが、後期クイーン的問題というのは読者=探偵に関する理論であって、オブジェクトレベルにおける主観というか、認識論的な議論です。他方モダーン・ディテクティヴ・ストーリイ論は作者=犯人に関する理論で、作品をメタレベルから客観する超越的な議論です。

2020-04-09 18:12:19
@quantumspin

読者=探偵と作者=犯人との知的ゲームというのは、笠井さんや法月さんが指摘するまでもなく、本格ミステリの大前提という気がするのですが、そうならキャラクター探偵と後期クイーン的問題を論じた「ガウス平面」と対をなす理論は、キャラクター犯人とモダーン・ディテクティヴ・ストーリイ論になる。

2020-04-09 18:18:10
@quantumspin

ところで、探偵=読者と犯人=作者と被害者とで2つの三角形を成すというのが笠井・法月理論なのですが、だからミステリ批評の理論も3つあるわけです。探偵=読者…後期クイーン的問題、犯人=作者…モダーン・ディテクティヴ・ストーリイ論、被害者…大量死論となるのですが、これはご存じでしたか?

2020-04-09 18:24:11
@quantumspin

だからキャラクター実装型本格ミステリ論は恐らく3部構成になる筈のもので、最近はキャラクター小説と大量死/大量生論との関係についてよく考えています。東浩紀さんの興味深い議論も刺激になり、いずれ機会があれば論じてみたいと思っています。

2020-04-09 18:42:19
@quantumspin

「本格ミステリの原罪」に話を戻すと、実は本稿は「法月綸太郎の消息」を読んで一気に理論的整備が進んだような所があります。これは法月さん円堂さんにもお伝えしましたが、先のミステリ論の分類も、実は「消息」を読むまでは明確に意識する事がなかった。あの本には私が求めていた答えが書いてあった

2020-04-10 22:21:23
@quantumspin

あと「ベーシックインカム」や「2020本格ミステリ・ベスト10」も、原稿を書いてる最中に出版され、これに伴い論旨を微調整したりもしています。現役作家を手探りで論じるのは、何が出てくるかわからなく、その分読みが嵌った時の感動は大きいです。「青い告白」を論じられなかったのは若干心残りですが

2020-04-11 07:39:30
@quantumspin

そういえば渡邉大輔さんが「その可能性はすでに考えた」を思弁的実在論に引き付けて論じられていたのですよね。完全に見落としていました。こうしたいかにも現代思想的な論法を批判的に分析していくのは大好きなのですが、読み物としては難解になりすぎるので、いずれこちらで連投するかもしれません。

2020-04-11 07:56:41