漫画版ナウシカ考察、土鬼神聖皇帝編+補遺

205
前へ 1 2 ・・ 5 次へ
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

「不変性」のもう一つの意味は、何事に対しても喜怒哀楽の感情がフラットという意味での「不変性」である。ナムリスが求めるのは本人が言うように「恐怖と歓喜の火のような日々」を過ごすことであり、彼主観で退屈さえしなければ後はどうでもいいのである。 pic.twitter.com/uRx8EqAKjk

2020-04-25 21:01:54
拡大
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

実際、ナムリスは弟を謀殺する際も特に積年の憎悪をぶちまけることもなく、淡々と「こなしている」(それどころか弟の亡霊とは和やかに談笑―ナムリス的にはだが―している)。弟の手先であった僧会の粛清もいわば「退屈潰し」の余暇であり、婚姻を目論むクシャナからの露骨な敵意すら楽しんでいる。 pic.twitter.com/7mL8K53DCF

2020-04-25 21:02:34
拡大
拡大
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

何より、6巻終盤、ナウシカの手により自身の計画―巨神兵を使い、クシャナを取り込んでトルメキアに侵攻する―を台無しにされた時でさえ、ナウシカにぶつける感情は邪魔者への憎悪ではなく、100年前の弟そっくりの少女の行動に潜む欺瞞の看破、或いは嘲笑である。 pic.twitter.com/MfeoRnxt5e

2020-04-25 21:03:43
拡大
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

ナムリスは言う。百年前はお前そっくりだった弟も、古の土王もみな圧政と狂気に転落していった。今のお前はあいつらとどこが違うのか、と。あのナウシカすら反駁できない、後々まで心に突き刺さる糾弾である。他人に感情移入せず、常にフラットであるがゆえに「見えてしまう」のだろうか。 pic.twitter.com/owAubMwtqn

2020-04-25 21:04:20
拡大
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

そんなナムリスのフラットさは己自身にも向けられる。ヒドラと同じ体に肉体改造したゆえ、首だけになってもなお死ねないナムリスも、最後は巨神兵の飛翔で放たれた衝撃波で空中から落下、(恐らく)死亡するが、その遺言たるや「折角面白くなってきたのにこれでオシマイか…」である。 pic.twitter.com/7W6DdJ5Azh

2020-04-25 21:04:55
拡大
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

正直、超常の力と恐怖政治を駆使する弟より余程化け物じみているが、そこでもう一つ出てくるキーワードが「快楽主義」である。が、彼にとっての快楽とは、繰り返しになるが「恐怖」と「歓喜」を併せ持つ「火のような日々」であり、凡そ常人が理解できるものではない。 pic.twitter.com/KbzPbLzsuf

2020-04-25 21:05:45
拡大
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

他人には感情を動かされないナムリスは、己が楽しむために禁令であるヒドラを秘かに培養し、巨神兵を墓所のテクノロジーで復活させ、弟と僧会を抹殺し、クシャナを取り込んで黄昏の世界に再度の戦乱を起こさんとする。己の命どころか全世界をベットした博打を全力で楽しんでいるのである。 pic.twitter.com/CM7Sc0CJBP

2020-04-25 21:06:24
拡大
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

そんな命がけの博打に彼が興じるのは何故か。ナムリスの語るところによれば、自身が恐れることは己が血を一度も滾らせずに終わることだけである。生の実感と言い換えて良いかもしれない。そのためにナムリスは100年間、弟の統治下で逼塞し、数十回の手術の恐怖に耐えて不死のカラダを手に入れたのだ。 pic.twitter.com/UiE1ftaXe7

2020-04-25 21:07:00
拡大
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

そうまでしても、ナムリスの全てを度外視した暴走によってすら、墓所の主の絶対性―主が定めた世界再生計画―を揺るがすことはできなかった。ナムリスは吐き捨てる。「俺はもう生きあきた 何をやっても墓所の主のいうとおりにしかならん」と。 pic.twitter.com/lckkc3tsRN

2020-04-25 21:07:32
拡大
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

もしかするとナムリスも彼なりに焦燥に駆られていたのかもしれない。あんな汚物と肉塊の化け物(墓所の主)が出す御託宣に、世界を、俺を全て規定されてたまるか。俺は俺の力で人生を切り開く、世界も変えて見せる―墓所の軛を脱してやる、と。 pic.twitter.com/jQTcULosn9

2020-04-25 21:08:15
拡大
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

そう考えれば断末魔のナムリスが「あとはあの小娘がしょっていけばいい」と毒づいたのは、ナムリスなりの不器用なエールだったのかもしれない。そのナウシカは、ナムリスから突き付けられた矛盾を抱えたまま、「墓所の主」と対峙して叫ぶ。「私達の生命は私達のものだ!」と。 pic.twitter.com/a7fRYvcw6v

2020-04-25 21:08:47
拡大
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

以上、悪役界屈指の(?)名キャラ、ナムリスについてあれこれ考察してみました。最後はややロマンチストな妄想が加速していましたが、もしナムリスの冷然さに潜む焦燥にいくばくかの「人間み」を感じて頂ければ、少し彼に感情移入しやすくなるかもしれませんね。

2020-04-25 21:09:18
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

漫画版ナウシカを彩る3人の王についての考察、お楽しみいただけましたでしょうか。3人とも、時にナウシカと戦い、あるいは手を取り、或いは救いを受けつつ、彼女の旅路を彩る実に魅力的な人物たちでした。そんなナウシカ世界の奥深さを感じて頂ければ幸いです。

2020-04-25 21:38:35

理表 @Rihyo37

岩波『独ソ戦』で書かれていた、何もかも奪いながら、ドニエプル川へ撤退していくドイツ軍、どっかで既視感あると思ったら、ナウシカ原作のトルメキア軍撤退の光景だ。 pic.twitter.com/4BtvlOEN0J

2019-08-12 22:43:53
拡大
岩波新書編集部 @Iwanami_Shinsho

まさしく。宮崎監督は独ソ戦もイメージしながらナウシカを描かれていたのではないかと思います。 twitter.com/Rihyo37/status…

2019-08-12 23:34:42
理表 @Rihyo37

このツイートで、ナウシカ原作が独ソ戦イメージしたものだと知りました。 包囲下のサパタ=スターリングラード、僧会=共産党、死守命令などがモチーフだったのですね。 pic.twitter.com/JS4nnaoF8Z

2019-08-13 07:46:49
拡大
リンク Wikipedia 武帝 武帝(ぶてい)は、中国の皇帝の諡号の一つ。武力を以て国土を広げた皇帝や戦乱を平定した皇帝に送られる諡号である。 単に武帝というと、前漢の武帝を指すことが最も多い。次いで西晋の武帝、三国時代の魏の武帝、梁の武帝を指すことが多い。 2 users
岡野 哲 @Tetz0929

この後のナウシカの「否、人間は暗闇に瞬く光だ」ってセリフ、ゲド戦記のエアの創造「飛翔せる鷹の虚空にこそ輝ける」に影響を受けた言葉だと思うんだけど、すごい好き。欺瞞的美辞麗句でもなく、悲観的なニヒリズムでもない、前向きな考えだ。 twitter.com/shirochichi070…

2020-04-24 09:46:01
しろちち@C101新刊BOOTH委託開始!! @shirochichi0707

漫画版ナウシカの名台詞の一つとして知られるヴ王の「失政は政治の本質だ!!」。ここだけ切り取ると暴君の開き直りでしかないのだが、よくよく前後を見ると、ナウシカとは別角度ながら、この世界の黒幕(墓所)の本質をよく突いているのである。というわけで以下少し補足したい。 #ナウシカ pic.twitter.com/YWGfVS1lKA

2020-04-23 21:22:59
いしかわ@FSM司祭 @u1ro_ishikawa

@shirochichi0707 早く出会って治世を築いたのが、エンディングで「生涯王を名乗らなかった」と伝えられるクシャナなのかなと思いました。

2020-04-24 09:49:24
しろちち@C103日曜西け28b委託 @shirochichi0707

@u1ro_ishikawa 凄くしっくりきました!クシャナ=ナウシカに早く出会えたヴ王と考えると、とても尊いですね…

2020-04-24 10:26:50
いしかわ@FSM司祭 @u1ro_ishikawa

@shirochichi0707 尊い…… あの二人、あそこで一別して以降は生涯再会することはなかったと思うんですが、互いに遠国からのうわさ話を聞いて、クシャナはニヤリと、ナウシカはうれしそうに微笑んだりしてるんじゃないかな、とか思います。 ホント、全編通しでアニメ化しないですかね……

2020-04-24 10:45:13
石◯健太郎 @marudosurdo

@shirochichi0707 連ツイ楽しく読みました。 ヴ王は、肥満体なところがリチャード4世、戦を起こして暴君扱い&実は王として正しく葛藤しているのに最後まで理解されないところがヘンリー4世に似ているなと。 クシャナは兄弟との確執に引き込まれるところや戦上手などヘンリー5世だなと、勝手に思っています。

2020-04-24 11:39:36
フロクニ @Furokuni2692

@shirochichi0707 民衆の事を考えた王、はあくまで民衆の未来を予測しそこに導くもので民衆の希望、願いを叶えるものでは無い。時には民衆を裏切ることさえある、と言うものでしょうか。民衆を思いながら民衆には慕われないこともある。王とは孤独ですね。

2020-04-24 12:40:13
えぬ崎🇯🇵販売担当 @Enuzaki

おおお! マンガ版「ナウシカ」最終回のかなり丁寧な解説。 当時ソ連が崩壊して、宮崎駿が共産主義の終焉といかに折り合いをつけたかという生々しい内面が浮き出てて大好き! アニメみたいなヌルい話じゃ終わらんからね♪ twitter.com/shirochichi070…

2020-04-24 11:52:16
前へ 1 2 ・・ 5 次へ