開封動乱〜フレッシュ事変〜【完】

すいこばなし一のフレッシュ。 フレッシュ趙安率いる新鮮組の物語です。
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すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

王「そんなに焦って、早く来ないで、いいっすからね、皆」 趙「…」 王「お先に、席取りに、行ってきます…」 公「その時は私の奢りだ、王煥」 王「…やったね」 公「…」 王「…じゃあ、ちょっくら」 趙「…」 王「」 公「…」 王

2020-05-10 10:00:55
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

趙「捕縛した幹部は王慶の妻だけか」 張「役人に引き渡しました」 公「これで大虫窩は潰しましたね」 趙「王慶を取り逃したのは痛手だが…」 梅「あそこまで生き汚え下郎はそうそういないですよ」 趙「またいつか出てくるかもしれんな」 韓存保「王煥殿を連れて帰りましょう、李従吉殿」 従「…はい」

2020-05-10 11:00:15
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

王煥 趙「二人は先に、王煥を連れて帰ってくれ」 韓「かしこまりました」 従「…」 公「李従吉!」 従「!」 公「泣くのは宴までの我慢だ!」 従「はい!」 趙「…」

2020-05-10 11:00:15
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

公「…おや?」 趙「どうした、公順」 公「まだ血が臭う…」 張開「趙安殿、あれは…」 趙「!」 荊忠 公「荊忠!?」 楊温「酷えことしやがる…」 梅「…因果応報、ってやつか?」 項「それは違う、梅展」 梅「元さん?」 項「安らかな顔をして、眠っているじゃないか」 梅「…」

2020-05-10 11:15:29
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項「本当は、こんな顔をしているやつだったなんて…」 公「一体誰が…」 趙「荊忠がここに来た経緯を思い出せ、公順」 公「…そういう事、ですか」 項「彼は私が運びます」 梅「…俺も」 何信「よく戻られました…」 趙「十フレッシュマンズが、八人になったが…」 徐京「…あんまりやで、お月さん」

2020-05-10 11:15:30
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

王煥 荊忠 徐「これからって奴の命ばっかり奪いなさんな…」 趙「戦と同じだよ、徐京」 王文徳「…」 趙「二人の勇敢なフレッシュマンに礼!」

2020-05-10 11:30:02
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

趙安「!」 公順「!」 何信「!」 王文徳「!」 韓存保「!」 楊温「!」 項元鎮「!」 李従吉「!」 梅展「!」 張開「!」 徐京「!」

2020-05-10 11:30:03
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趙「いつの間にか、雨が止んでいたな」 公「あの土砂降りが、嘘のような朝ですな…」 趙「虹が出ている」 公「…趙安殿」 趙「どうした?」 公「何色に見えますか?」 趙「赤橙黄緑青藍紫、というから…」 公「…」 趙「七色かな」

2020-05-10 12:00:01
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

趙安…静かな宴になるよな… 公順…王煥の技は誰も真似できないのでしょうね。 何信…天稟としか言えなかったよ。あの技は。 韓存保…誰にも言わない秘密がある。 楊温…湿っぽいがしょうがねえよな。 王文徳…同志の生き様を見て、ようやく肚が座った。 項元鎮…今生きている実感を噛み締めている。

2020-05-10 12:00:09
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

李従吉…堰を切ったように涙が止まらかった。 梅展…韓存保からの酒を、一口ずつ大切に味わっている。 張開…下戸だから普段なら飲まないけど、今宵は一口だけ口にした。 徐京…ずっと塞ぎ込んで、料理も酒もほとんど口にしない。 王煥…悔いはねえっすよ! 荊忠…黒猫がずっとお墓の前に佇んでいる。

2020-05-10 12:00:09
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

段三娘…末恐ろしいほどの余罪が発覚。死罪宣告された時、呵々と笑ったという。 李助…金剣も死域の猛者には歯が立たなかった。

2020-05-10 12:00:09
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王文徳「趙安殿。お話が」 趙安「どうした、王文徳?」 王「策を申し上げに」 趙「どんな?」 王「…」 趙「正気か!王文徳!」 王「至って」 趙「…罪滅ぼしのつもりか?」 王「ただの自己満足です」 趙「王文徳」 王「はい」 趙「やっと良い顔になったな」 王「…やっとです、趙安殿」 趙「構わん」

2020-05-10 12:30:46
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

王「あなただけには、私の本意を知っていただきたいと思ってしまったのが、私の弱さですね」 趙「…分かった。許可しよう」 王「いつか必ず、あなたのお力に」 趙「待っている」 王「おさらばです。局趙安殿」 趙「さらば、王文徳」 王「フレッシュ!」 趙「…始めからこの声が出せれば良かったな」

2020-05-10 12:30:46
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

高俅「どの面下げて帰ってきた、王文徳?」 王「あなたの狗になりに、這いつくばって参りました」 高「ほう?」 王「ワン!ワン!」 高「ほう、見事な狗になって帰ってきおった」 王「ワン!」 高「健気な狗よ」 王「…」 張開「よくやったな、王文徳」 王「張開!」 張「見届けてこいと、趙安殿が」

2020-05-10 13:20:39
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

王「…お前も狗として生きる覚悟はあるのか?」 張「確かに、見届けるだけじゃつまらんな」 王「今は狗でいい。しかし我らには」 張「新鮮組の矜持と牙がある」 王「決して鈍らせるなよ、張開」 張「無論」

2020-05-10 13:20:39
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

徐京「…」 楊温「どうした、徐京」 梅展「あの日からずっと塞ぎ込んでんじゃねえか」 徐「…わいは、友達がいなくなるんがこんなにしんどいもんやと思わんかった」 楊「…優しすぎんのさ、お前は」 徐「…」 梅「お前の監察の仕事は、みんなが頼みにしてるぜ?」 徐「仕事はできても、心がもたん…」

2020-05-10 14:00:04
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

楊「…俺らは軍人だからな」 梅「慣れちまったところはあるかもしれねえ」 徐「わいは死ぬまで慣れる気がせん…」 楊「実家に帰るのは?」 徐「…こう見えて、勘当された身なんや」 楊「すまん…」 徐「独りが寂しゅうてな。道行く人を笑かそう思って、ずっと人の観察してたんよ」 梅「そうなのか?」

2020-05-10 14:00:04
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

徐「観察しとったら、いつの間にか気配ばっかり消せるようになってまって」 楊「おう」 徐「監察になってまったんよ〜」 梅「…くだらねえ」 徐「本当は笑いをとりたいんやけどな〜」 楊「じゃあ、芸人になれよ」 徐「芸人!」 梅「その方が良さそうだな!」 徐「なんで思いつかへんかったんかな?」

2020-05-10 15:09:02
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楊「…嘘だろ?」 梅「俺らに聞くんじゃねえ!」 李従吉「売れるか占うっす!」 楊「おう、来たな売れっ子占い師」 徐「頼んますわ、李従吉はん」

2020-05-10 15:09:02
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

趙安「新鮮組の面々も減ったな」 公順「楊温殿は江州へ出向。梅展殿は水軍強化にかかりきり」 何信「李従吉は占い師、徐京は芸人」 公「韓存保殿と元さんは?」 趙「元さんは退役される」 何「…韓存保殿は?」 趙「公順」 公「はい」 趙「韓存保のもとへ行け」 公「私が?」 趙「稽古場で待っている」

2020-05-10 15:37:25
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

何「行ってこい、鬼のフレッシュ」 公「フレッシュ!」 公「韓存保殿」 韓存保「…」 公「失礼いたします」 韓「公順殿」 公「はい」 韓「あなたが戸を開けたら、二度と振り返ってはいけません」

2020-05-10 15:37:25
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

公「…私は友や部下がついて来ているか確認する時は、振り返ります」 韓「…」 公「しかし、私が自身で決めた事については一切振り返りません」 韓「…」 公「失礼いたします」 韓「入られよ、公順殿」 公「…!」 韓「…これが私の身体です。公順殿」 公「何という数の傷が…」

2020-05-10 16:00:16
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

韓「私は生きている事が罪であり、罰でもあるのです」 公「そんな事は…」 韓「この無数の傷の多くは呼延灼との立合いで負った傷」 公「呼延灼?」 韓「私は呼延灼と立ち合った時、卑怯な手を使っていました…」 公「…」 韓「気づいた私は、戒めとして、呼延灼の鞭を全て身体で受けました」 公「…」

2020-05-10 16:00:16
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

韓「それ以来、我に帰った彼の顔が忘れられなくて」 公「…」 韓「この傷を治す最中、私は背中に刺青を彫りました」 公「刺青?」 韓「ご覧なさい」 公「!」 韓「…私には鬼が憑いているんです」 公「…韓存保殿」 韓「公順殿」 公「はい」 韓「私を救ってはくれませんか?」 公「あなたを、救う?」

2020-05-10 16:15:02
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