【ちょっと前のこと】福間健二 ‪#k2fact256‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬

4月29日から5月8日まで。 新型コロナウイルスによる情勢の深刻化が、いろんなふうに気分に作用している。 たとえば「ちょっと前のこと」が懐かしく感じられる。 そこからのタイトル。主に、3月30日のことを書いた。 感染は意識されていたが、空気はちがった。 続きを読む
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福間健二 @acasaazul

有楽町駅から丸の内方面へ出たところの、自販機の並ぶ場所。東宝の試写のときはそこでタバコをすう。三月三十日も詐欺師たちとプリンセスの物語のあとに。隣は換気をよくして営業中という飲み屋。店の前に配達されたマイタケやモヤシの入った箱。長いネギは箱の上。(ちょっと前のこと1)#k2fact256

2020-04-29 14:08:33
福間健二 @acasaazul

ひとりの人。二人組の人。黒っぽい背広がほとんど。ワイシャツ姿はひとりだけ。何度もかがみ込んで足もとを気にする。女性もひとりだけ。細い指に細いタバコだ。破れかけたポリ袋ををかぶった飲み屋の赤提灯が揺れている。本物よりもすばらしいニセモノを思うぼく。(ちょっと前のこと2)#k2fact256

2020-04-30 09:10:28
福間健二 @acasaazul

本物のふりをする。まだたいしたことない。本物を超えようとする。その努力。いや、努力とはちがう、自然にそうできちゃう斜面を転がって自分でもハッとするのだ。配達された箱。本物をスポイルするできそこないの短篇集にも吹き込む魔法使いの風。遺伝、関係ない。(ちょっと前のこと3)#k2fact256

2020-05-01 10:08:30
福間健二 @acasaazul

捏造されたプリンセス。その大勝利。詐欺って、見抜いても欺されてるふりするだれかが必要なんだ。納得しながら、銀座のお昼の分類学。これから食べる人ともう食べた人。駅に入っていく人と出てくる人。できのわるい身内には何をしてもいいと思う人とそう思わない人。(ちょっと前のこと4)#k2fact256

2020-05-02 09:27:19
福間健二 @acasaazul

柱ごとにきらびやかな骨董品に囲まれた白髪のカトリーヌがいる。その目と目の間隔にあるものと「至宝」という文字。好きじゃない。対照的と言うのも当たり前すぎる地味な服の、重い荷物の人が通る。肩が女性だ。ベルギーワッフルの店の前の女性たちはその肩を見ない。(ちょっと前のこと5)#k2fact256

2020-05-03 10:32:43
福間健二 @acasaazul

つまり、アヤメ、カキツバタ、アイリスよりも、マーガレット。一重の白い花びらで中が赤い種類。この日、銀座で出会った花のベスト。花に会う。目で呼吸する。でも日本でやるのは大変でしょうね。耳に入ってきた。何がなのか聞きとれなかった。あれもこれもだろうか。(ちょっと前のこと6)#k2fact256

2020-05-04 08:48:13
福間健二 @acasaazul

銀座では店に入らず、地下鉄丸ノ内線で新宿に出て、ラーメンを食べたのだった。わかりくいことを言ってしまうが、自信喪失の小さい数字に対して新宿はやさしい。小さい数字の欠如による自殺。だれがだれのことを言ったのだったか。思い出しながら替え玉をお願いした。(ちょっと前のこと7)#k2fact256

2020-05-05 09:27:24
福間健二 @acasaazul

ルミネ1の七階の喫煙所。去年の秋には台湾の詩人とここでタバコをすった。アメリカのタバコをすう彼にわかばをすすめた。わかば、まだ紙巻きがあった。彼は先輩の大詩人の詩を教えてくれた。たしか、こんなふうに終わる詩だ。新宿駅か、昔が懐かしくなる名前だな。(ちょっと前のこと8)#k2fact256

2020-05-06 11:05:25
福間健二 @acasaazul

そのちょっと前に、ある別れが。中途半端な、だれだれさんの消息を聞いているだけの知性への数字1の抵抗。新しい体験というわけではなく、右手で書き、左手で長い針を使って長く使ってなかった機械を動かした。ビックカメラ新宿東口駅前店の人に教えられたように。(ちょっと前のこと9)#k2fact256

2020-05-07 10:08:04
福間健二 @acasaazul

果樹園を歩き、背が少し高くなった秋から、たどりついた台所でもう使えないかもしれない消火器と棚の道具たちの覚えられない配列を見つめた冬。他人となる前に一羽の鳥だった彼女の目のなかを逃げる空、それを追うカミソリにひやっとしたが、客席はほぼ埋まっていた。(ちょっと前のこと10)#k2fact256

2020-05-08 08:08:21