掌小説語り~自作つぃのべる集~49

自作ついのべるのまとめです。 2017年5月分。
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リュカ @ryuka511

倒した魔王には息子がいた。父親が世界を滅ぼそうとしたことも、僕が父親を殺したことも知らない、幼い子供。無垢な瞳に射抜かれ小さな手を取った。君を守るということは、喉元に剣を突きつけられているのと同じだ。それでもこの子を守ろう。孤独な子供は運命に利用されてしまうから #twnovel

2017-05-01 01:09:15
リュカ @ryuka511

桜の下には死体が埋まっていて、その血を吸うから桜はこんなに綺麗なのだと彼女は語った。私のようだなと言うとそうねまるでバンパイヤねと彼女は笑った。昔の話だ。なのに今も、桜を見ると悲哀に包まれる。人としてまた逢いたいと言った、彼女の最期の言葉の意味は、未だに解らない #twnovel

2017-05-02 00:07:23
リュカ @ryuka511

「もう嫌だ、やーめた」軽い調子で呟き匙を投げる。心の拠り所だった僕の楽園。美しく整えた機械仕掛けの箱庭。全て僕の思い通りになるはずだった。機械までも僕に刃向かうのか。電源を切ろうとした手が震える。理想の人生を挫かれ、それでも作り上げた楽園を捨てられない僕は憶病者 #twnovel

2017-05-03 02:12:08
リュカ @ryuka511

「我を倒せば魔界は消える。お前も共に」笑う魔王に勇者は笑みを返す。「覚悟の上だ」「平和のための犠牲というやつか?」首を振り勇者は笑みを消した。「違うな。ただの復讐だ」剣を向けた勇者に魔王は満足げに笑う。「いい目だ。それでこそ我が宿敵」この戦いに、英雄なんていない #twnovel

2017-05-04 01:13:20
リュカ @ryuka511

その文に刺さった短剣は、袂を分かったかつての親友の物だった。決着をつける時が来たのだろう。文に示された場所へ向かう。同じ志の下に戦ったあの頃を思い出す場所だ。どちらが正しかったかなんて、もはや些細な事。それぞれの誇りと信念の下に、刃を交えるのみ。 #twnovel

2017-05-05 00:22:38
リュカ @ryuka511

君を守る事は僕の義務だ。刃や銃弾から君を守る為なら、君に触れる事を許された。どんなに君を守っても、君は決して僕のものにはならなくて、傷を負った僕を君は平然と見下ろしている。どうすれば君の美しい顔は歪むだろう。僕が君を襲ったら、君はそれでも平然としているのだろうか #twnovel

2017-05-06 01:46:02
リュカ @ryuka511

魔王城を前に少女は表情を引き締める。師匠、ようやく私、ここまで来ました。私の旅は、世界を救うためじゃない。私に生きる道を与えてくれた師匠の、仇を討つための旅。苦しい旅を、それだけを考え乗り越えてきた。見ていて下さい、師匠。魔王を討ったら、私もそちらへ行きますから #twnovel

2017-05-07 23:31:23
リュカ @ryuka511

世界を救うには彼を止める、即ち殺せばいい。一見簡単な事だ。だが彼は恩師であり、また彼も確かに世界を救おうとした。どこで道を誤ったのか、彼の研究は世界を脅かす。彼を失いたくない、だが彼は今や世界の敵。複雑な心境、単純な答え。躊躇う私に彼は諦観を湛えた目で銃を向けた #twnovel

2017-05-08 23:59:47
リュカ @ryuka511

主は高名な人形作家だった。最期の作品である私は博物館に展示されている。美しいと褒められ主を賞賛されても、何の感慨も湧かない。主は私を作ってすぐに死んでしまったから。主の喪に服すかの如く誰かが勝手に着せた黒いヴェールも、主をよく知らない私には何の意味も為さないのに #twnovel

2017-05-10 00:22:23
リュカ @ryuka511

魔女の怒りを買い怪物にされた。愛を理解すれば呪いは解けるという。こんな姿で愛などと。だが永い時を経て彼女に出逢った。私は彼女を愛し彼女も私を愛してくれた。呪いが解けるまでは。 #twnovel 「人間め!」彼女の憎悪に、二度と解けぬ呪いを自らかけた。人間という怪物の姿で永遠に眠る

2017-05-11 00:40:54
リュカ @ryuka511

初めての敵は後の親友になるなんて王道にも程があるだろう。だけど僕は今、初めての敵と分かち合い共に旅をしている。まだ魔王軍が本格的に侵攻していない地で僕らは出会った。魔王軍最下層で軽視された君と、理不尽な神託に憤る僕は戦い、手を組んだ。僕らの敵は魔王ではなく、運命 #twnovel

2017-05-12 01:56:44
リュカ @ryuka511

天空都市に鎮魂歌が厳かに響く。あれは狂気の沙汰だったと、生き残った者達は語った。王による大粛清と戒厳令。天空人最高位の王には誰も逆らえず、また正論過ぎて逆らう理由が無かったのだ。高潔な理想は時に狂気となって、王を、街を破滅に誘う。#twnovel

2017-05-13 01:33:47
リュカ @ryuka511

「俺はもう戦わないと決めたんだ」もう一度力を貸してくれと訪ねてきた連中を追い返す。かつての戦いが俺にもたらしたのは、喪失だけだった。平和になった世界で、生きる意味を見失った。だがかつての相棒だった槍が、それでいいのかと問う。すっかり錆びた槍を手に、立ち尽くす #twnovel

2017-05-13 23:11:00
リュカ @ryuka511

「悪漢から助けてやったのだ、礼を求めても良いだろう?」「別に助けてなんて願ってません」不敵な笑みの吸血鬼に少女は気丈に笑った。「別に助けてなんて願ってません」逃げる悪漢を示す。「あれは貴方の手下じゃないって証明できる?」たじろぐ吸血鬼にひらひらと片手を振った #twnovel

2017-05-15 01:04:35
リュカ @ryuka511

館の主人はもう長い間目を覚まさない。深い憎悪に囚われ目覚めを拒み続けた。執事は今日も冷めた紅茶を黙って片付ける。コックも庭師も主人の目覚めを待ちながら、いつも通りに仕事をする。ご主人様、もうお目覚めになっても大丈夫です。貴方が憎んだものは我々が処理しましたゆえ。 #twnovel

2017-05-16 00:48:29
リュカ @ryuka511

我の聖域を荒らした者の末路は、壮絶で苦悶に満ちた死だ。だが最近の人間共は「そんなものはただの伝説だ」と嘯き、平然と我が聖域を踏み荒す。聖域の奥、対峙した我に歯を鳴らす臆病者は、筋違いな命乞いを繰り返す。死を恐れる人間共、安心するがいい。不遜な輩に死の安楽は与えぬ #twnovel

2017-05-17 01:14:50
リュカ @ryuka511

「怪盗に奪われた時計を取り戻してほしいの」形見の品だと言う少女の依頼を受けた。だが解らない。奴は量産されたブランド品など狙わない。あの時計に何が? #twnovel 後日、奴は奪った時計を手に現れた。中に麻薬取引のメモがあったという。「私と可憐な少女、どちらを信じるかは自由です」

2017-05-18 00:23:43
リュカ @ryuka511

「10年後にこの場所で会おう」なんて、物語みたいな約束を交わした少年時代。君は覚えているだろうか。10年振りに帰った街は驚く程変わって、何度も地図を確かめる。僅かに面影を残すあの場所へ。君は来なかった。あれからもう10年、期限切れの約束を本気にしていたのは僕だけ #twnovel

2017-05-19 00:43:02
リュカ @ryuka511

神様はどうして僕を四足歩行の生き物として生み出しだのだろう。あの人を抱きしめる為の腕がない。それでもあの人の涙を止めたくて寄り添う。額を寄せる。泣かないで。少し笑ってくれた。もっと笑ってほしくて頬を寄せる。小さく鳴く。腕はなくても、この身体全部で抱きしめてあげる #twnovel

2017-05-21 00:15:18
リュカ @ryuka511

私に買えないモノは無い。愛さえ金を積めば手に入った。それは上辺だけのものだが、買ったものと解っているのだから別に構わない。私は満たされていると思っていた。最期を迎えるまでは。集まった者達は、私の死に悲しみも喜びさえも感じていなかった。私は存在しないも同然だった #twnovel

2017-05-22 02:00:08
リュカ @ryuka511

「私達って似てるよね?」事あるごとに君はそう確認する。似ている事が愛し合う条件みたいに。僕とはまるで違う君が好きなのに、脅迫観念に囚われたような君の言葉に、頷かざるを得ない。「僕らは似た者同士だね」脅迫観念に囚われてるという点では、やはり君と僕は似ているのだろう #twnovel

2017-05-23 00:32:45
リュカ @ryuka511

色褪せた写真の中の私は、穏やかな微笑でこちらを見つめている。背景は真っ白で、他には誰も写っていない。不思議がられるが、これが一番気に入っている自分の写真だ。若い頃、遺影に使おうと撮った写真が、生きる希望になった。私をこんな風に撮ってくれた人に、もう一度会いたくて #twnovel

2017-05-24 00:06:00
リュカ @ryuka511

帝国軍が僕らを狙っている。リーダーと合流するまで隠れ家に待機し、かき集めた幾つかの武器と愛馬の調子を確かめる。武器を用意したけれど、僕らの目的は帝国軍と戦う事じゃない。大切に抱えた鞄の中身、帝国軍にさらわれた幼いドラゴンを、親ドラゴンの元へ帰してあげるんだ。 #twnovel

2017-05-24 23:09:21
リュカ @ryuka511

額縁を外して君に向け翳してみる。もう少し上かな。うん、この角度がちょうどいい。「何してるの?」不思議そうに問う君に微笑む。「こうして君を飾るんだ」「ヘンな人」くすくす笑う君に見惚れる。この表情を永遠に留めておきたいんだ。写真ではなく、リアルな君をこの額縁の中に。 #twnovel

2017-05-25 23:41:12
リュカ @ryuka511

データ移行完了、再起動。俺を見た君は不思議そうな顔をする。「貴方とは初対面です。しかし私は貴方に関する知識を得ています。これはどういう事なのでしょうか」「分からなくていいさ。前の君は俺と結ばれていたんだ」「では今の私も」「いや、君は君だ。知識と経験は別物だから」 #twnovel

2017-05-27 00:32:46