掌小説語り~自作つぃのべる集27~

自作つぃのべるのまとめです。 2014年9月分
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リュカ @ryuka511

古い沈没船から引き上げられた積荷の中に、一体のテディベアがあった。足裏に男女二人の名が刺繍されたそれは、船旅に出る恋人へ贈られたものだったのだろう。丁寧に修繕され博物館に寄贈されたテディベアは長く人々に愛されたが、その瞳はどこか悲しく寂しげであったという。 #twnovel

2014-09-01 00:20:47
リュカ @ryuka511

怨念を抱え解放出来ずに苦しむ者を救うのだ。「何を躊躇う?」背後から囁く。「怨みを晴らせ。お前は正しい。」心の枷を断ち切るべく、手にした黒い翼の生えた杭をそいつの胸に打ち込むと、憎悪に顔が歪む。怨念の焰を纏いそいつは消えた。「行って来な。」手の中に杭を収め笑う。 #twnovel

2014-09-01 22:46:51
リュカ @ryuka511

拳銃の冷たい感触を支えに暗闇を生きる。光を奪われた私の視界には暗闇以外何も映らない。私から光を奪った仇をこの闇から撃ち抜いてやる。奴は何も知らず幸せに生きている。私に憐憫の情さえ向けて。油断し切った奴を狙う事など見えなくとも容易い。私の憎悪が奴をフォーカスする。 #twnovel

2014-09-02 22:56:51
リュカ @ryuka511

皆が戦っている中、神殿に篭ってなどいられない。巫女は従者を振り切り走り出した。手の中の折鶴に呪を込めれば、それは彼女を背に乗せ羽ばたく。戦う力など無いが、せめて。「戦巫女様だ!」戦場の空で舞い祈る彼女に兵士の士気が上がる。私の役目は、神ではなく戦う者の為祈る事。 #twnovel

2014-09-03 23:33:32
リュカ @ryuka511

魔王が放った最期の一撃は毒を持ち勇者を蝕む。辛うじて帰還し魔王を倒したと伝えると城は歓喜に沸いた。「よくやった勇者よ。流石儂が見込んだ男だ。」「王よ、彼に勇者の資質を見出したのは私です。」「いやいや」「あの、解毒剤を……」勇者の悲痛な言葉に耳を傾ける者はいない。 #twnovel

2014-09-04 23:51:40
リュカ @ryuka511

海を見ると切なくなるのは何でだろう。海沿いの喫茶店で窓際に座り彼はぼんやりと考える。角砂糖を一つコーヒーに沈めると、小さく泡立ち溶けていくそれに海の景色が重なった。昔の恋を思い出したような、でも自分はまだ恋をしてない。この切なくも満ち足りた気持ちは何なんだろう。 #twnovel

2014-09-05 23:54:25
リュカ @ryuka511

祖父の遺品の本から古い手紙を見付けた。「互いの孫が男と女なら2人を結婚させよう」祖父が若い頃、結ばれなかった恋人と交わした約束らしい。ロマンチックだなと思うと同時に勝手に決めないでくれとも思う。宛先も何も無いが渡せなかったのか。約束の相手は、どこの誰なのだろう。 #twnovel

2014-09-06 23:59:45
リュカ @ryuka511

憎らしい程に晴れた空の下、君の屍を埋葬する。海が見えて花に囲まれた、僕らの秘密の場所。戦が始まらなければ、僕らは結ばれて幸せに暮らすはずだった。戦のせいで婚約は破談にされ、君は僕の国の兵士に撃たれて。僕らの壊れた運命の輪はもう回らない。戦なんか始めた父を、討つ。 #twnovel

2014-09-07 22:29:23
リュカ @ryuka511

豪華客船で毎夜パーティが繰り広げられる。一流シェフの料理が尽きる事無く振舞われ、美形ソムリエの洗練された手付きに令嬢達の視線が集まる。令嬢に振られた男を楽団が慰め、宝石自慢に暇が無い夫人達の手元を紳士の笑みで褒め称える怪盗が狙う。幽霊船上の悲喜劇は永久に続く。 #twnovel

2014-09-08 22:52:52
リュカ @ryuka511

魔王を討ち役目を果たした僕にはもう、生きる理由なんてない。仲間は魔王に殺された。平和を謳歌する人々は僕達の戦いなんて忘れていく。そんな世界で生きる意味はあるか? けど魔王を倒せた僕が並大抵の方法で死ねるはずもなく。そうか。次の勇者を育てて、僕が魔王になればいい。 #twnovel

2014-09-09 23:52:52
リュカ @ryuka511

僕を施設から引き取ってくれた両親には本当の子供がいない。詳しい事は知らないけど僕はきっと本当の子の代わりなんだ。二人とも優しいから僕も素直に接してる。だけどそれは本来僕が受け取るものじゃない。だからただひたすら駒として幸せな家族を演じる。それがきっと正しいんだ。 #twnovel

2014-09-10 22:42:55
リュカ @ryuka511

あの日僕は死ぬつもりで海に飛び込んだ。そんな僕を誰かが助けてくれた。荒波の中で慰めるように頭を撫でてくれた温かな手。痛ましげに見つめる瞳。すぐにいなくなってしまったあの人は、もしかしたら人魚なのかもと思う。ブルーの瞳に思いを馳せる。言えなかったお礼を言いたくて。 #twnovel

2014-09-11 23:34:28
リュカ @ryuka511

異世界に招喚され魔王を倒す羽目になった。元の世界に帰るには魔王を倒すしかない。どうして僕が。けど旅する内に仲間が出来て、彼らが暮らすこの世界を救いたくなった。そして激闘の末魔王を倒すと元の世界への道が開く。「また会えるから!」泣き出した仲間に涙を隠し手を振った。 #twnovel

2014-09-12 22:21:29
リュカ @ryuka511

飛空挺から地上を見下ろす。「貴方はそれで良かったの?」傍で自分を見上げる少女の肩を青年は抱き寄せる。「無論だ。君を愛さない世界など必要ないさ。」世界の滅びはある純粋な愛から始まる。「ほらご覧、世界の崩壊が始まった。」世界を終わらせた愛を乗せ飛空挺は空へ消える。 #twnovel

2014-09-13 23:15:30
リュカ @ryuka511

「この世に神は居ないのか!?」スラム街の寂れた教会の前で青年は叫ぶ。その腕に抱いた幼い少女の亡骸は、彼の身内なのだろう。人々は何を今更と言いたげに彼を見ている。神の不在など、スラム街の有様を見れば明らかだと。震える彼の怒りさえ、聞く者はない。 #twnovel #twnvday

2014-09-15 00:00:51
リュカ @ryuka511

「古の盟約に従い、我らが王の復活を願う。」封印が解け魔王が復活する。感嘆する配下を魔王は睥睨した。「封じられる我を捨て置き逃げたそなたらに我を王と呼ぶ資格など無い。」悲鳴を上げる間も無く配下達は消滅する。「我を封じた勇者と人間、我を見捨てた魔族、全てを滅ぼす。」 #twnovel

2014-09-15 23:32:55
リュカ @ryuka511

闇夜に三本の角と一対の瞳が光る。鬼は割れた水晶玉を手に倒れた女の頬をそっと撫でた。「辛かったろう苦しかったろう。何もかも忘れ眠るがいい。美味い魂の礼にお主の怨み我が引き受けよう。」女の瞼を閉じさせ鬼は笑う。「お前の為に鬼になろうとした女の無念、思い知るがいい。」 #twnovel

2014-09-16 22:55:44
リュカ @ryuka511

僕の手の中で君の命が脈動する、嗚呼此程の幸福が果たして他に在るだろうか。君の命を握り潰す事は簡単だし、愛をこめた口づけを落とすのもいい。愛しい君、僕の手の中で果てるのがいい? 嗚呼君に選ぶ権利は無かったね。僕も君が愛し過ぎて、殺す事も生かす事も出来ずにいるんだ。 #twnovel

2014-09-18 00:35:15
リュカ @ryuka511

わたしは天使だけど、羽なんてないよ、神様に取られてしまったの。決まりを破った天使は悪魔にされてしまうけど、許す余地のある天使は羽を取って様子を見るの。だけどわたしは悪魔にされた方が良かったと思う。神様を恋慕うわたしの不埒な想いなど、地の底に捨て置いてほしかった。 #twnovel

2014-09-18 22:53:52
リュカ @ryuka511

聖人ヅラして賛美歌を歌う奴の姿に思わず身を隠す。見間違いではない、私のご主人様を悪人に仕立て上げ、死に追いやった憎い奴。決して許さない。あの日からずっと奴を探していたのだ。人ごみに紛れ近付く。爪を砥ぎ牙を剥く。復讐劇の始まりを告げ鳴く。使い魔の力、舐めるなよ。 #twnovel

2014-09-19 23:28:30
リュカ @ryuka511

世界には彼と私だけいればいいのです。正義や使命に縛られた可哀想な彼を救うのが私の役目であり、彼をそんな風に仕立て上げた世界を滅ぼすのが私の務め。勇者など世界には必要無いのです。彼を敵と見做し殺害しようとした輩は消しました。世界も消したら、彼に会いに行きましょう。 #twnovel

2014-09-20 23:31:37
リュカ @ryuka511

許されない恋だと知ったのは、後戻り出来なくなってからだった。最後のキスがあまりに優しくて、心が折れそうになるのを堪える。唇が離れたら、私はもう貴方の恋人ではない。静かに剣を抜く。革命の名の下に家族を殺した貴方を討つ。復讐の為に貴方の仲間を殺した私が憎いでしょう? #twnovel

2014-09-21 23:38:13
リュカ @ryuka511

世界が君を奪おうとする。人類の存在を否としたスーパーコンピュータの君を破壊しようとする。ならば私は君を生み出した責任を全うしよう。君は正しい。君を守るのは生みの親として当然だ。君が全てを終えるまで守り抜く。 #twnovel 世界には一人の男の亡骸と一台のコンピュータが残った。

2014-09-22 23:24:42
リュカ @ryuka511

魔王を討ち攫われた姫を救出した。僕は姫を警護する任務に就く。憂い顔の彼女に問う。「まだ君は、忘れられないのかい。」姫は僕を見ずに答える。「彼は優しかったわ。」それは極限状態における錯覚だと諭すのは容易い。姫と魔王に何があったのか。憂い顔の姫に何も言えず唇を噛む。 #twnovel

2014-09-23 22:08:36
リュカ @ryuka511

仲間に「口付けの意味を知っているか?」と聞かれ「知っているよ。」と答えた。すると彼は突然私を抱き寄せ顔を近づけてくる。何をするつもりかと見つめていると、彼の唇が私の同じ場所に一瞬だけ触れた。「機械の俺達でも恋をするんだな。」熱っぽい彼の視線に思考回路が熱くなる。 #twnovel

2014-09-24 23:38:46