-
- いいね！0
てい
@orztee
月があんなにも綺麗なのは、決してぼくたちの手には届かない物だからなんだ、ご覧、と兎が差し出した掌には、小さなガラス玉が数個。 これらは手に入ってしまった月さ。比べてご覧よ。 受け取った玉を、夜空の微かな光にかざして見る。これはこれで綺麗じゃないか、と、私は思った。 #月夜話
2018-08-13 01:43:43
てい
@orztee
夜にしか会えない友達がいた。暗がりの中でぼんやり光るような、青白い肌をした子だった。ぼくたちはいつも公園のジャングルジムに登り、勢いよく漕いだブランコから放物線を描いて飛び降りた。友達はぼくが空を見上げるのを嫌がった。今思えば、その時、月は空にいなかったのだろう。 #月夜話
2018-09-04 01:33:07
てい
@orztee
月の光に目が覚めて、ふと机の上に目をやると、サボテンが土から抜け出て歩き出したところだった。白い光の下、物思いに耽るような足取りで机の端を往復し、時折ぼんやり月を見上げていたようだった。朝には何食わぬ顔で土中に入っていたが、向きの違いを指摘すると、慌てて方向転換をした。 #月夜話
2018-09-15 01:32:31
てい
@orztee
ある夜、道端で、光る石を見つけたのです。拾おうと手を伸ばすと、通りがかりの人に止められました。 「それは月の石だから、拾ってはいけない」 拾うとどうなるのか気になった私は、石に触れました。 それからです。月の光に当たると、身体が浮き上がるようになったのは。 #月夜話
2018-09-24 00:17:42
てい
@orztee
ぼくの獏は悪夢を食べない。悪夢と間違えて幸せな夢を食べてしまう。けれど、ぼくは幸せだ。悪夢を見て目覚めるたび、獏が心配そうにぼくの顔を舐める、それだけで安心してまた眠ることができる。獏が側にいてくれるなら、悪夢なんて怖くないのだ。 #月夜話
2018-09-30 00:58:42
てい
@orztee
いつかと同じ月が浮かんでいた。秋の風が窓を叩いている。私はぼんやりと座って、それを聞いていた。ひとつ、ふたつ。「ふたつ叩きましたね」そうだ。しかし今の声は誰だ、「ずっと一緒にいるじゃありませんか」ぞっとしながら辺りを見回した。窓に映る私が、私をじっと見つめていた。 #月夜話
2018-10-13 23:48:41