誤った知見に基づいて検査の要否を語るのは、防疫の面でも臨床の面でも有害無益であり、科学の徒を自認する者ならば、慎むべき #PCR検査 #新型コロナウイルス (2020.6.5作成)

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suna @sunasaji

medrxiv.org/content/10.110… 例のPCR偽陽性の論文だけど、雑な内容に見える。 そもそもSARS-CoV-2 RT-PCRの分析では特異度100%だと広く報告されている(SARS-CoV-2 RT-PCR assays are widely reported to have 100% specificity)と言っている。

2020-05-28 01:33:36

False positives in reverse transcription PCR testing for SARS-CoV-2 | medRxiv https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.26.20080911v2

suna @sunasaji

しかしSARS-CoV-2ではEQA(外部品質評価)がまだされていないので、過去のRNAウイルスのEQA結果を43件調査して使っている。それは仕方ないのだけれど、まとめ方が雑すぎるように見える。 各EQAの偽陽性数を足した336件を、陰性検体数合計の10,538件で割って、PCRの偽陽性率だと言っているように見える。

2020-05-28 01:35:21
suna @sunasaji

まず母数が少なすぎる。少なくともSARS-CoV-2の感染爆発によって、世界では数千万件の検査がされるようになったわけで、偽陽性率も下がっているはずである。実際に最近はニュージーランドでは0.03%以下、中国武漢では0.005%以下の偽陽性率が実現しているが、本論では考慮されていない。

2020-05-28 01:36:42
suna @sunasaji

ちなみにv1版では7つのEQAで偽陽性率が検出限界以下だったと書いてあったがv2では消えている。 そもそもPCRは偽陽性が出づらい試験であるため、出た場合の個別の原因を調べることには意味があると思うけれど、少ない事例を単純に足してPCR全体の偽陽性率だと言うのは過剰一般化としか言えないと思う。

2020-05-28 01:38:57
suna @sunasaji

この著者は、他の報告でなぜPCRの特異度が100%と仮定できているのかわかってなさそうだなあと思った。

2020-05-28 01:39:59

suna @sunasaji

日本では、PCR検査は精度が低く、高確率で偽陽性偽陰性が発生する、と盛んに喧伝されています。 しかし実際は、PCR検査は特異度が非常に高く、感度も高い検査です。 それはなぜか、原理から説明してみることにします。

2020-06-02 09:38:01
suna @sunasaji

PCR法とは、あるDNAに特異的に反応するプライマーという試薬を用いて、調べたいDNAを2倍に増やす操作を繰り返し、DNAを数百万倍や数億倍に増幅させて検出する技術です。プライマーが反応しなければ、DNA増幅はいつまで経っても起こらないので、陽性になることはありません。 pcr-nsg.jp/docs pic.twitter.com/Ry2We9HEOd

2020-06-02 09:39:18
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suna @sunasaji

つまり、陽性は、プライマーが結合できるDNAが存在した証拠になるので、原理的な特異度は100%になります。しかし実際にはコンタミネーション等が起きる可能性はあるので100%にはなりません。ただそれを言うならどんな検査手法でもコンタミはあり得ますし、普通は原理的にも特異度は100%より劣ります。

2020-06-02 09:40:17
suna @sunasaji

たとえば抗体検査は、ウイルス自体を検出するのではなく、ウイルスに対する人体の免疫反応を検出するものであるので、必ず非特異反応があり、特異度100%にはなりません。陽性率が低い疾患においては非特異反応が大きな問題になります。 kantei.go.jp/jp/singi/kenko… pic.twitter.com/pvN03smzGJ

2020-06-02 09:41:44
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suna @sunasaji

ただし抗体検査の有用性は否定されません。たとえばPCR検査に比べて専門的な設備・器具や人員を必要とせず、どこでも安価かつ迅速に検査判定ができる意義は大きいです。しかしPCRの特異度や偽陽性が問題であると言うなら、抗体検査は更に問題があることになります。kansensho.or.jp/uploads/files/…

2020-06-02 09:44:44
suna @sunasaji

抗原検査は、SARS-CoV-2を構成する蛋白質に反応する抗体を作り、その中で特異性のある抗体を実験的に選択してウイルス検出に用います。SARS-CoV等の近縁のウイルスへの交差反応がないものを選ぶことになりますが、特有の遺伝子配列自体を標的にするPCRよりは特異度は劣ります。yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/20…

2020-06-02 09:46:06
suna @sunasaji

ただし抗原検査の有用性は否定されません。抗原検査で特別な装置が無くても病院内で短時間に検査をすることができれば、感染力の高い人を簡便に見つけるために有用であると言えます。しかしPCRの特異度や偽陽性が問題であると言うなら抗原検査は更に問題があることになります。kantei.go.jp/jp/singi/kenko… pic.twitter.com/Uy8iu8inhN

2020-06-02 09:49:55
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suna @sunasaji

以上の通り、SARS-CoV-2においてもPCR検査の特異度は原理的に100%で、抗体検査や抗原検査よりも原理的に高い特異度を誇ります。そして、論文でも通常は100%であったり99.9x%といった、高い特異度を持つものとして言及されます。

2020-06-02 09:50:58
suna @sunasaji

たとえば、プレプリントではありますが、中国広州の実績値で特異度99.96%と言及されています。 medrxiv.org/content/10.110…

2020-06-02 09:51:32
suna @sunasaji

実績値についても見てみましょう。一般に防疫ができている国ほど陽性率が低くなり、それらの国々の陽性率の低さから特異度の高さを検討できます。なぜなら有病率が低い国で検査をすれば、特異度の低い検査では大量の偽陽性者が出るはずであり、陽性者が少なければ偽陽性率も低いと推定できるためです。

2020-06-02 09:52:22
suna @sunasaji

ニュージーランドでは5月に10万件以上検査して、陽性者0.025%未満でした。仮に全員が偽陽性であったとしても、特異度は99.97%以上となります。実際には全員が偽陽性であることはないと思われるので、特異度は更に高くなることになります。 twitter.com/kurimushi3/sta…

2020-06-02 09:53:02
kurimushi @kurimushi3

3/n 2.ニュージーランドのデータ 5月1日から27日まで10万人以上検査して陽性者25名。陽性率0.025%未満。 99.999%信頼区間の上限でも0.05%未満となります。 全員が偽陽性と仮定しても、偽陽性発生率0.1%(感度99.9%)もありえません。 health.govt.nz/our-work/disea…

2020-05-28 17:10:42
suna @sunasaji

中国武漢では全員検査に踏み切り、たった10日で657万人に検査をして189人の無症状感染者を発見しています。陽性率は0.00287%で、仮に全員が偽陽性であったとしても99.997%以上の特異度があることになります。これも全員が偽陽性ではないはずで、特異度は更に高くなります。 jksb.com.cn/html/2020/trea… pic.twitter.com/HVk3XgsgqI

2020-06-02 09:54:18
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suna @sunasaji

以上より、理論においても実績値においてもPCR検査の特異度は一般にきわめて高く、偽陽性もごくわずかしか出ないことがわかると思います。偽陽性が完全にゼロではないとしても、大抵の国では真陽性の心配をした方が良いでしょう。特異度99%や、ましてや90%などというのは完全にデマといえます。

2020-06-02 09:55:16
suna @sunasaji

日本のPCR検査の特異度が、ニュージーランドや中国レベルであるかわからないという話はあるかもしれません。それはそれで問題ですし、仮に特異度が低いならば、改善する必要があります。世界では広く活用されている特異度の高い検査を、日本でだけは推進しなくて良い理由にはなりません。

2020-06-02 09:56:11
suna @sunasaji

次に、感度についても見ていくことにしましょう。 PCRの原理は、特定のDNAに反応するプライマーで、調べたいDNAだけを繰り返し複製し、数百万倍や数億倍に増幅させて検出する技術でした。原理的にも、ごくわずかなDNAを莫大に増やして検査する手法なので、基本的には感度も高い検査手法です。

2020-06-02 09:57:14
suna @sunasaji

しかし、検体採取や運搬や、PCRに掛ける前にウイルスのRNAを抽出してDNAに逆転写する過程でRNAが壊れる等の、さまざまな理由により、実際には感度が下がり、偽陰性が出ることがあるのも事実です。ではその感度はどの程度と報告されているのか見てみることにします。

2020-06-02 09:58:09
suna @sunasaji

まず、中国の報告で喀痰72%、鼻腔スワブで63%の感度と報告されています。そして、それらの検体はCOVID-19の患者から採取されたと言っています。一般に、COVID-19の確定診断はPCRでなされるので、どこかでPCR陽性になった人が分母となることに注意が必要です。 jamanetwork.com/journals/jama/…

2020-06-02 09:59:30
suna @sunasaji

言い換えれば、COVID-19確定症例者が最低1回はPCR陽性となる確率は100%です。PCR検査がCOVID-19の確定診断に用いられるというのは、そういう意味だからです。偽陽性率がきわめて低い上に、ごくわずかなウイルスの遺伝子も検出できる手段がPCRなのですから、ある意味で当然の話です。

2020-06-02 10:00:27