映画『アメリカン・サイコ』 社会規範とアイデンティティをめぐる繊細なストーリー(ネタバレ有り)
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余談
『アメリカン・サイコ』のNetflixの字幕ですが、名刺バトルのシーンで「vice president」がなぜか「副大統領」と訳されている箇所があるんですよね 「副社長」と訳されている部分もあるので単純なミスなんだと思いますが
2020-06-08 01:30:28そもそもを言うと「vice president」は外資系企業の大半では「部長」くらいの地位らしいですね 学歴とコネで入ってきた若手社員に適当な役職をあてがって遊ばせておこうという、そういう社内での立ち位置に彼らがいるということなんでしょう
2020-06-08 01:34:30『アメリカン・サイコ』でベイトマンがポール・アレンをあまり人気のないメキシコ料理店に呼び出すシーン 店の不入りを見て文句を言うポールにベイトマンが引き合いに出すのがドナルド・トランプの元妻イバナ・トランプ pic.twitter.com/ixDhAhL04C
2020-06-08 01:45:47もちろんこれはポールを黙らせるためのベイトマンのでまかせ(ポールはしっかり黙る) このシーン以外でもベイトマンは「あれってドナルド・トランプの車か?」と言うシーンがあり、トランプ氏がベイトマン周辺でカリスマ的な権威をもっていたことを窺わせます
2020-06-08 01:50:28ベイトマンの審美眼について
ベイトマンの審美眼について「流行の音楽に関する薀蓄を滔々と繰り返し披露しているじゃないか」と思われた方もいらっしゃるかと思います ですが、この音楽薀蓄にはベイトマン本人の価値観が一切ともなっていない、というのがポイントになっています
2020-06-09 20:55:10ベイトマンの語る薀蓄は、すべてが音楽雑誌やテレビの評論の受け売りです それは感情や抑揚のともなわない口調からも明らかであるし、何よりその内容が彼の行動や心情と矛盾しています
2020-06-09 21:09:03ヒューイ・ルイス『Hip To Be Square』 「適合の喜びやトレンドの重要性」 ← ベイトマンの苦しみの根源 フィル・コリンズ『In Too Deep』 「彼らの合奏に耳を傾けよう」 ← まったく聞く素振りなし 「政治権力の濫用への批判」 ← 娼婦たちへの傍若無人な指示 「一夫一婦主義を歌っている」 ← 3P中
2020-06-09 21:24:20ベイトマンはときに音楽に深く聞き入るような表情をしますが、その仮面の下には何の感情も流れていません 彼はあくまで「お気に入りの音楽を聞いている人間がするべき表情」を忠実に模倣しているだけです ベイトマンは「哲学的ゾンビ」とも言える存在に成り果てています
2020-06-09 21:31:33ベイトマンについては極度に戯画化され誇張されていますが、彼の交友範囲でもこのような「哲学的ゾンビ化」傾向は共有されています だから彼らの多くはレストランを名前や格、人気という外面的な要素以外で評価することができないし、政治的な話題についても「中身」のあることを話せません
2020-06-09 21:39:48「哲学的ゾンビ」の群れの中で、ベイトマンにとって数少ない例外と言える存在が、同僚ルイス・カラザースと秘書ジーンです 彼らは「社会規範の理想像」としてのベイトマンにではなく、単純に一個人としてのベイトマンに好意を寄せているので、ベイトマンはひどく動揺します pic.twitter.com/G19Ooqa030
2020-06-09 21:52:03彼らの殺害にベイトマンが失敗するのは、彼らこそが自分のアイデンティティを肯定してくれる存在であることを感じ取っているからです しかし同時に殺害の否定は、確立されつつあった「殺人者」としてのアイデンティティを否定することでもあり、この矛盾にベイトマンは苦しむことになります
2020-06-09 22:00:09