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『ジョーカー』をアウトサイダー文学の歴史から辿り考察しよう

ただの映画好きが呟いて見ました。 好みに合えば幸いです。
映画 書籍 ジョーカー JOKER アニメ 感想 キャラクター 心理
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惣流・ドルフ・ラングレン弐号機 @YZNlfuMP8Vbaaoj
ソフト発売前にもういっちょう!映画『ジョーカー』をアウトサイダー文学史、犯罪心理学、その他諸々から辿り考察しよう。 数ヶ月前に『#ジョーカー』を観た。 とても好みな題材で普遍的な問題を多かれ少なかれ見事に描いていたと思う。 そのジョーカーを他の共通項あるジャンルから比較検証したい。 pic.twitter.com/yfH5kzXn5R
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ジョーカーで描かれた主人公・アーサー・フレックの人物像とその転換はアウトサイダーの典型だった。 そもそもアウトサイダーとは何か? 「社会の既成の枠組みにとらわれず、独自の思想・信念の元に行動する人」 インサイダー(組織人)の対義語である。
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1956年に評論家のコリン・ウィルソンが発表した著作に『アウトサイダー』という文学集をまとめた評論本がある。 その内容はバルビュスの『地獄』から始まりドストエフスキーの『地下室の手記』サルトルの『嘔吐』ニーチェの作品集等多岐に渡り共通項を比較し述べていくものだ。 pic.twitter.com/jXj6JqrGtX
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その共通項とは主に主人公達の屈折した心理描写にある。 常に孤独であり人生に於いて楽しみを何も見出だせない主人公は何も解決策を生み出せもしない。 行き着く先は達観したニヒリズム思想だ。 コリン・ウィルソンはこういった主人公達や作家に共通性を見出だしまた細かな違いを述べていく。
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宗教観ですらなんの役にも立たない彼等の様な人物をどう捉えていくかが主軸だ 「アウトサイダーとは真理を見据えた聡明な哲学者か、それとも社会から外れた独り善がりな落伍者か、あるいはその両方か?」 そういった曖昧性に肉薄していき定義付けしていくウィルソンの評論本は自身初の代表作となった。
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ウィルソンの論文の中で説明されている文学の中でも古く、アウトサイダージャンルの元祖とも言えるのはドストエフスキーの『地下室の手記』である。 40歳になる元小役人が社会規範を嫌い20年地下に籠りその恨み辛みによる自身の持論と過去を手記によって語っていく構成だ。 pic.twitter.com/DoAfa4sd74
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読んでいて決して爽快な気分にはならないが、『罪と罰』や『悪霊』にしろその内向的な心理描写は自分も含めて多くの日本人の肌に馴染むものがある。 その主人公「ぼく」の思考や引きこもりという在り方は古い作品ながら、現代社会の問題にも似かよる普遍的要素が早くから既にあった。
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ウィルソンの『アウトサイダー』の中で紹介されている物の中でも自分が最も気に入り感銘を受けたのは、学生時代に読んだカミュの代表作『異邦人』だ。 主人公ムルソーは周りの人間と「ズレ」ている。母が死んでも涙も流さない。だが本人からしたら其は至って普通であり、周りの目など気にも留めない。 pic.twitter.com/dO7OUHbXkl
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ある日ムルソーは成り行きで人を1人殺めてしまう。理由は本人からしても曖昧であり裁判でも「太陽が眩しかったから」と答える そんなムルソーを人々は日頃の振舞いを根拠に責め立て判決は死刑となってしまう。 そんな状況でも常に変わらない落ち着いた態度のムルソーだったが司祭との対話で其は変わる
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司祭に信仰心を通じての改心という「同調」を求められたムルソーは「私の内部で何かが裂けた」と記述と共にその怒りを露にする。ムルソーが初めて人間的感情を見せるのはラスト数ページ前だ。 その台詞の長さは3ページ弱にも及び思いの強さがダイレクトに伝わる。
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要約すると「他者の価値観等クソくらえだ。俺の正しさが俺以外に誰が分かる?何もかもがくだらない。」といった観念の主張だ。 ムルソーは感情が無い人間では無く普段は表に出さないだけだったのだ。 この対話による主人公の感情の発露というのは映画ジョーカーの終盤に繋がる共通項でもある。
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社会規範との『ズレ』により破滅に追いやられるという退廃的なラストは、アウトサイダージャンルに於いて多くの普遍性を持つ要素だ。 『異邦人』はソコにある種の終末ロマンすらも付属させた。 我が国に於いても代表的なアウトサイダー文学がある。純文学作家、太宰治による『人間失格』だ。 pic.twitter.com/d4PVEIwMn0
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「恥の多い生涯を送って来ました。」 作品自体を象徴するこの出だしの一文は有名だ。 主人公、大庭葉蔵は自分は他者とは決定的に違う。という感覚を常に抱えながら生きている。他者に対して怯えてもいる。 その生々しい人物描写や、起伏の少ない展開は読んでいて一切のカタルシスを感じさせない。
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アルコールや薬物依存に陥り何度も自殺を図るが死にきれずに、とうとう精神病院へと入れられる。 そこで自らは人間失格だ。と悟り退院した後は故郷の家で廃人同然の生活を送る姿を晒して終わる。 カミュの作風以上に退廃的でロマンも無いその徹底的に「閉じた世界」は太宰の死生感そのものなのだろう
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このドコをどう読んでも鬱になる作風は後世の様々な作家にも影響を与えた。 時代は飛ぶが、かなり筆がノッていた頃の大槻ケンヂの初期作やコラム等もこの系統だ。 日常に鬱積しながらも感情表現に乏しい主人公の描写等は作者の青春時代の鬱憤が良く反映されている この頃のオーケン作品はとても良い。 pic.twitter.com/zkmZzd3KOX
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そしてオーケンの影響を受けた滝本竜彦は少なからず自身を反映させたキャラクターの底辺ぶりをコミカルかつ親しみ易い物とした 太宰の影響もあるらしく、その鬱な作風描写に自己投影し共感する楽しみ方を「自虐ナルシズム」と表現したのが印象的だ 何気にアウトサイダージャンルでは重要な感覚である。 pic.twitter.com/M2c7zh1kNc
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ここでちょっとジャンルを変え、現実の社会問題と照らし合わせた犯罪心理学の観点で映画ジョーカーに繋げていく準備をしよう。 自分が興味深く読み参考になったと感じた書籍が、片田珠実氏の『無差別殺人の精神分析』だ。 pic.twitter.com/FgwiV0T2al
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この書籍によると日本やアメリカのコロンバイン高校で起きた凄惨で痛ましい無差別殺人事件を起こした犯人達には、ある共通の心理傾向があるという。 其は自身の自己愛の肥大化と、それに伴い社会が自分を受け入れてくれないという自己評価の低さから生まれる現実とのギャップによる強いストレスだ。
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それが人の脳にもたらす効果は絶大で、人は追い詰められると「自殺」という選択肢を見出だす。 だが犯人達の行動が一般的な自殺者達と決定的に違うのは、自身を殺すのでは無く他者を攻撃するという点にある。 自殺願望には無意識的に他者も巻き込みたいという心理も少なからず働いているらしい。
惣流・ドルフ・ラングレン弐号機 @YZNlfuMP8Vbaaoj
だが自己愛が強い犯人達には自殺という選択肢は浮かんでも決行する事は無い そこで他者を攻撃して自殺の代替行為をするという心理分析になる 元来から被害妄想を拗らせてしまっている故にそのターゲットは「誰でも良かった。」となる訳だ あくまで仮定と想定による理論だが的を射た見方かもしれない。
惣流・ドルフ・ラングレン弐号機 @YZNlfuMP8Vbaaoj
結局その行動の結果は自爆とさして変わらないので、辻褄自体は合うと思う。 この犯罪心理学から見た「社会に於ける個人のジレンマ」という要素はこれから述べるフィクション作品にも多く合致する大事な観点だ。 次はジョーカーと同じ映画というジャンルに移ろう。
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ジョーカーの元ネタ、オマージュした映画に『#タクシードライバー』というのがある。 屈折した主人公が社会の中で自らの在り方に悩み、狂気に蝕まれながらもそれを模索していく話だ。 脚本のポール・シュレイダーはサルトルの『嘔吐』とドストエフスキーの『地下室の手記』から着想を得たと語る。 pic.twitter.com/kWbax1mPdf
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主人公のトラヴィスには先人のアウトサイダー達と同じく卓越した見識がある。 だが日々のストレスで頭は非常に病んでもいる。 ベトナムでの兵役で名誉除隊という経歴はかつてはステータスだった。が、現代社会では意味を持たない実績はソレも消費期限が切れかけているのが現状だ。 pic.twitter.com/SYGnwR5u44
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理想の女性に救いを求め近づきつつも、その世間の感覚からの「ズレ」でフラれてしまう。 ソレ以来トラヴィスの拠り所は、銃を手にして実感した武力に依存する事となる。 トラヴィスの特徴はジレンマからくるストレスと持病の偏頭痛も相まって自殺願望をも抱えているという点だ。 pic.twitter.com/DiW61yV9dT
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トラヴィスの行動は衝動欲求に沿ったものとなっており、終盤に大統領候補暗殺を目論む理由は自身の武力の誇示という自己顕示欲から来ている 死ぬ前に一花咲かせたいという心理だ しかし計画は失敗してしまい、半ば八つ当たりと衝動をもて余した勢いで売春宿を襲撃して傷を負いながらもソレは成功する pic.twitter.com/r5mQ7blLfR
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「#ジョーカー」

コメント

dag @digital_dag 2019年12月22日
最近だとアイリッシュマンのホッファ(アルパチーノ)がアウトサイダーに当てはまるんだろうか
ティルティンティノントゥン @tiltintninontun 2019年12月22日
私が「津山事件」を、「八つ墓村」ではなく事件の詳細な説明として読んだのは島田荘司「龍臥亭事件」なのだけど、これは都井睦雄に同情的だったのよ、だからその後山岸凉子の「負の暗示」を読んだら、自分の実力や立場を自覚していたら:肥大化した自意識を捨てられたら、こんな事件を起こさなかったろうに、てな感じに描かれていて、見方が違えば全然違うんだなぁと思ったものでした。
諏訪真 @liarsuwa 2019年12月23日
ジョーカー観てた時、江ノ島盾子思い出したの俺だけかな? ネタバレ見た後で見たので最後のシーン以外作り話では、という前提で見てたので江ノ島盾子っぽいなと。そこの知れない理解できない壊れた常識の悪役としての共通点だけども。
ハイホー @Ho__Hi 2019年12月23日
だいたい同意なのだけど、アーサー・フレックは自分の周りにいる自分よりさらに困難で不幸な人、アウトサイダーではないが排除された存在と触れ合いながらも、そのことに気づいていない。何よりそういうアーサー視点の語りがおそらく主観の域を出ないものであることも示唆されている。アウトサイダーを描きながらもその独善性を相対化する視点も内包しているのが「ジョーカー」だと思われる。
やぬす @janusroad 2019年12月24日
Ho__Hi 気づいているから、ゲイリーもソフィーも殺さなかったのでは? この映画は一見上記のアウトサイダーものを踏襲するフリをしてるがそうじゃない、アーサーは社会から悉く追い詰められ裏切られ、自我を守るためにジョーカーとなるしかなかった。生活手段も薬も切られ、憧れてた人から病気をネタに侮蔑されたら心も壊れるよ。アーサーはジョーカーメイクの時も目に涙をため、クラウンではなくピエロだったんだよね。
やぬす @janusroad 2019年12月24日
自己顕示・承認要求で無差別殺人を犯すタイプは、ホアキン版ジョーカーではなく、ヒース版ジョーカーに憧れるんだよね。この映画をインセルの描写と捉える人は、まさにこの映画のトーマス・ウェインやマレーと同じ。上から目線。ジョーカーが暴動を煽り起こしたのではない。ウェインの無神経な言葉で人々は暴動を起こした。ギリギリまで生活も何もかも追い詰められたから人々は爆発する。ならば爆発しない社会にすればいいだけ。 返信 0
空弁者 @scavenger0519 2019年12月25日
アーサーとブルースの異母兄弟の可能性、これ映画の中では妄想とする台詞が第三者から語られていたけれど、本作のトーマスのキャラクター描写からは「ありえるよね」と思った。バットマンからすればトーマスは「愛すべき父親」なのかもしれないけれど、本作でのトーマスはとてつもなく傲慢な人だったし、若い家政婦(女中)に手をつける人に見えた。
田中 @suckminesuck 2019年12月25日
digital_dag ホッファはバリバリのインサイダーやん