ドガと写真の関係

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qual quelle @qualquelle

栃木県立美術館「サルからヒトへ、そしてスペクタクルの社会 画像進化論 - メディア的進化と創造的退行のダイナミズム」という長い長いタイトルの企画展、そのWEBサイトではピーター・ガラシの仕事を援用している。http://t.co/F3u8BJ6

2011-06-24 23:13:38
qual quelle @qualquelle

近代絵画への写真の影響を積極的に評価したガラシだけれど(懐疑派の元祖はフランカステルあたりか?)、栃木の展覧会は「メディア的進化」という発展史観にとどまらず、それが「創造的退行」と絡み合う「ダイナミズム」を検討するという事のよう。

2011-06-24 23:18:00
qual quelle @qualquelle

福居伸宏氏 @n291 のブログに教えられた。喜多崎親氏が、ドガについて良く言われる「写真的構図」への疑念、というものを紹介している。http://t.co/v8tuZsH

2011-06-24 23:23:48
qual quelle @qualquelle

引用: 先程も言いましたように、当時はシャッター・スピードが長く掛かるのです。スナップ・ショットを作ろうとしても、画面の端にきちっと人物が通過する姿が切り取られるということはなくて、それはボヤボヤの影になってしまうのではないか。

2011-06-24 23:25:46
qual quelle @qualquelle

引用: そして、実際にドガがそういった構図を作り始める1870年代の写真では、そうしたスナップ・ショット的なものを作ることは未だできなかったんです。

2011-06-24 23:26:23
qual quelle @qualquelle

引用: もっと面白いのは、写真が持っているそういった特性、写真独自と考えられるスナップ・ショット的な構図は、実は絵画が伝統的に持っている遠近法の問題と同じなのではないかということです。

2011-06-24 23:26:39
qual quelle @qualquelle

こういう事は、ピエール・フランカステルも言っていた気がする。『絵画と社会』だったか、『近代芸術と技術』だったか。「写真と似たもの」が、その発明に先行する作品の中にあったという風に、絵画史への解消を図る訳だ。

2011-06-24 23:29:37
qual quelle @qualquelle

しかし僕は、ドガは写真からかなり影響を受けたと考えている。彼は何台かカメラを持っていて、相当数の写真を残した。それが小さな本にまとまってもいる筈。

2011-06-24 23:32:04
qual quelle @qualquelle

「スナップショット的」と言えば間違いかも知れないが、「トリミング的」と言えばどうなのか。彼は自作を切り貼りする事が好きだった。特にパステル画では、実に伸び伸びとそれをやっている。これは写真の額装と何らかの関係がないかと想像する。

2011-06-24 23:34:48
qual quelle @qualquelle

それからドガは、特定のモティーフを克明に描き、それと近接するモティーフの詳細をぼかす、という事もやっている。露光時間が長く、被写界深度が浅い当時の写真を思わせる。

2011-06-24 23:36:54
qual quelle @qualquelle

本当なのかどうか、ドガは写真に着彩していた、という逸話もある。等身大の少女像の蝋人形に着彩し、本物の服を着せるというような「奇行」のあった画家であれば、ありそうな事だと思われる。

2011-06-24 23:39:20
qual quelle @qualquelle

人間の眼は、ものを写真のようには見ない。写真の奇妙さを模して描かれた絵画は、そこに一種の戯画として「視覚の自画像」を映し出す。ドガにとっての写真(あるいは写実)は、一種のプリミティヴィズムだったというように考えている。

2011-06-24 23:43:58
qual quelle @qualquelle

ドガには「記憶描画」へのこだわりもあった。同世代の画家(彼は「印象派」と呼ばれる事を嫌った)とは異なり、戸外でのスケッチはしない。写真か、記憶に従って描く。写真、あるいは記憶という、自動変形の作用(オートマティスム)を、彼は楽しんでいたように思われる。

2011-06-24 23:47:11
qual quelle @qualquelle

日々の勤勉な制作、厳密な観察と探究の挙句にこそ起こるような、見たようには描けない、描いたようには見えない、という転倒。そのようなアイロニーとして芸術を捉えたところに、ドガの異常さと新しさがあったのではないか。

2011-06-24 23:52:37
qual quelle @qualquelle

ドガ話をもう一つ。ヴァレリー『ドガ・ダンス・デッサン』の伝える逸話(冗談かもしれない)だったと思うけれど、ドガはテーブルに石炭を積み上げ、これを描いて「風景画だ」と笑っていたという。

2011-06-25 09:32:41
qual quelle @qualquelle

この話が本当だったかどうかは分からない。しかし、ドガが僅かに残した風景画の、それも晩年の作は、確かに「山のようなもの」や「海のようなもの」を描いた奇怪な仕事である。

2011-06-25 09:39:31
qual quelle @qualquelle

写真は大きさを写さない。ドガの奇妙な試みは、写真の「使えなさ」から発想された機知であったかも知れない。

2011-06-25 09:41:31
qual quelle @qualquelle

ドガには印象派(視覚への盲信)に対する侮蔑があった。写真は、彼らへの最強のアンチテーゼになると思われたのではないか。彼は視力の減衰に長いこと悩まされていたのでもあった。ドガの風景画には、薄れゆく光と色彩、世界とその記憶への哀惜も感じる。

2011-06-25 09:44:59