僕ヤバの市川と山田、および彼らの関係について語る必要性をなんとなく感じた

電鋸雛菊 @DaisyAdreena

僕ヤバの市川と山田、および彼らの関係性について語る必要性をなんとなく感じた

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人間というのは案外他人のことを見ていないし、それは漫画読みでも同じ事なのだと思う

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僕ヤバは実際挑戦的な作品であり、楽しみ方でふるいがかけられる。ラブコメでありながら主人公市川のモノローグは間違いが多く、かつヒロイン山田に至ってはモノローグがほぼない。 見たままで流していると「状況把握を間違った上、ヒロインの心理の流れもよくわからない」という落とし穴に嵌る。

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反面、わかればわかるほど面白くなる。どんどん良くなる。未だにすべて理解出来ている気がしない。これほどまでに行間が多い作品というのもなかなか無いだろう。「ハート型折り紙レターの折り目である可能性」とか、他人の考察読まなきゃわからんレベルだ。

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市川と山田はある面において同類であり、ゆえに相手を特別な存在と認識したのだと、そこだけは踏まえておかなければならない

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市川という人物の設定。 自認が「底辺」、他称が「スライム」になる様な存在（※決まったアダ名ではない）。陰キャな自分に中二病で折り合いをつけつつ生きている様子の、スクールカースト低位らしき、小柄な少年。

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山田という人物の設定。 学校あるいは目黒区イチの美人でファッションモデル。男からの無遠慮な視線や絡みをゴミを見るような目で斬って捨てる、スクールカースト上位らしき高身長女子。

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市川は周囲と隔絶している。 劣等感が人一倍強く、臆病で、自分を見下しがちな世間に絶望して生きている。まぁよくあるタイプの孤独を抱えた、わかりやすい人物だ。その本当の人格をクラスメイト、まして女子に見せることなど通常考えられず、フニャフニャのカタコトでセリフが終わってしまう。

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では、山田はどうなのか。 対外的な作品紹介では「陽キャ」と称される山田。 本当に陽キャなのか？ 早ければ初登場シーンから違和感に気づく。上記紹介でも述べたとおり、「男性からの好意」に対し異様なまでの拒絶感を示すのだ。

電鋸雛菊 @DaisyAdreena

「スクールカースト上位の陽キャ女子」とみなされつつも、彼氏どころか「周囲に男の影が一人もない」異様な存在。それが山田なのである。

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市川とは正反対の原因により、山田にも陰がある。美人であるほど、「こっちをよく知らんのに積極性は高いクズ男」を引き寄せがちなのだ。 こうして書き起こせば作中と照らして一目瞭然なのだが、私ら男性には普通は意識しづらい感覚だよな。

電鋸雛菊 @DaisyAdreena

下品なちょっかいをかけてくるクラスメイトや、腕力まで使って強引にLINE交換をせまる先輩。それでもマシな方かも知れない。大人になれば違ってくるだろうけど、中2の山田の周囲には、下心が先走った年相応のくだらない思春期男子しか寄って来なかったのだろう。

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市川が山田に対し内面への好意を抱くに至った回は、厳密にはKarte.6だろう。「無縁の世界の住人と感じて関心を一気に失う」という流れを踏まえる念の入れ様である。「知らない女の人みたい」と離れかけた心を、再度引き戻され、強い親密さを植え付けられる。以後は大人な面も含め山田に惹かれていく。

電鋸雛菊 @DaisyAdreena

市川とて、決して見た目や身近さだけで山田を好きになった訳ではない。身長が低く表面的な強さもない自分とも壁を持たず接し、山田自身が魅力に感じる長所を見いだして褒めてくれるという、彼にとっては非常に稀有な相手なのだ。こんなん惚れるやろ。

電鋸雛菊 @DaisyAdreena

一方の山田。市川を特別視したのはいつかというと、なんと市川よりも早いKarte.4である可能性が高い。 「意外にピュアだった足立くん」というオチの印象に流されがちではあるが、作品の流れにおいて重要なのは、市川が山田にうっかり渡した紙切れの内容、またその顛末だ。

電鋸雛菊 @DaisyAdreena

私自身、これ「キモい系の地雷」なんじゃないかと思ってしまった、山田の似顔絵っぽいマンガ系イラスト。他の女子に同じ事をしたならドン引きされる可能性が極めて高いだろう。 しかし山田に限っては事情が異なり、晴れて好感度を上げる事に成功した。それは何故か。

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山田のモデル業、実はそれほど友人や同年代女子から注目されていない。友人たちは山田を担ぐ様なタイプでもなく、また専属ファッション誌の対象年齢がやや高めに設定されているっぽいせいか、校内でもそれほどファン慣れしている印象は見受けられない。ティーン向けならまた違う筈だ。

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市川のイラスト確認前と確認後で、山田の表情はライザップくらい印象が変わっている。「これはモデルをやっている自分を描いてくれたものなのか？」という不確かな感慨から来た変化だと見て間違いない。 なぜなら続くKarte.5は、山田自身のモデル活動への思い入れが空回りする回だからだ。

電鋸雛菊 @DaisyAdreena

男性からの「オナニーしてますか」は論外、「LINE教えて下さい」レベルですら山田にとっては問題外。そんな男縁ばかりで氷の視線を編み出すに至ったらしい山田のもとへ、自分の琴線に触れる一枚の紙切れが渡された。「適切に関心を持ってくれる市川」は、映画出演の話題の際に改めて明示された。

電鋸雛菊 @DaisyAdreena

深読みが過ぎるかも知れないが、この件が山田にとってどれだけ無意識下で大きかったのかは、様子を見ていた小林とのささやかな絡みから見て取れるのではないか。 イラストの内容を親友の小林にも内緒にして、どうやらポケットにしまった様子。職業見学帰りで示された山田の校内恋愛観はどうだった？

電鋸雛菊 @DaisyAdreena

（市川の備えたもう一つの長所である「暴走レベルの優しさ気質」についてはもちろん言うまでもないが、それを山田自身が感じ取ったのはKarte.10の文化祭準備回、また明確に認識したのはKarte.15のティッシュ回なのだろう。オチのコマでニヤついているのはお菓子が理由ではない。）

電鋸雛菊 @DaisyAdreena

市川と山田は、お互いに「人として孤独に渇望しているものをくれる」ベターハーフ同士であり、ゆえに「他の異性とは違う特別な存在」なのだろう。