オーバーロード・オーバーライト #3

スウェーデン料理、マトモな物のほうが多いはずなのにアレが一番有名なのは不憫だと思う 2:https://togetter.com/li/1549427 4:https://togetter.com/li/1551655
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劉度 @arther456

「案外……?」「しょっぱい」「味にクセが……」「これなら大丈夫です」感想は様々だが、食べられない訳ではない、という所に落ち着いた。しかし別の問題に気付く。「これ、全部入れたらカレーの味が凄いことになりません?」霧島の言うとおり、缶詰が多すぎる。22

2020-06-28 22:06:00
劉度 @arther456

「カレーがしょっぱくなっちゃいますよね……少しだけにしましょっか」流石の比叡も全部使うのは諦めた。何しろ缶詰は数十個もある。「じゃあ、これをカレーに……あれ、カレーは?」「はっ、台所に置きっぱなしだった!」「Oh…。なら、戻りましょうか。皆、お皿を持って」23

2020-06-28 22:09:00
劉度 @arther456

「はーい」金剛たちはシュールストレミングが乗った皿を持つ。落とさないように慎重に、両手でだ。「赤兎馬さんも」「私か?」ロシア艦娘もシュールストレミングの皿を渡される。「余った缶はどうします?」「後で取りに来ましょう」余った缶詰は倉庫の壁際に追いやられた。24

2020-06-28 22:12:00
劉度 @arther456

「ハルナ、こぼさないでね。絶対こぼさないでね?」「はい、ハルナは大丈夫です!」やりとりからして不安しかない。「霧島」「はい、お姉様」「2人が転ばないように、しっかりwatch up」「わっかりました」榛名のどんなドジも見逃すまいと宣言するように、霧島の眼鏡が光った。25

2020-06-28 22:15:01
劉度 @arther456

大阪自治区。深海棲艦の東京大空襲により首都機能を喪失した東京に代わり、近畿・中国・四国地方を治める大都市である。一時期は西日本共和国として独立する構想もあったが、長野県に移転した中央政府が辛うじて息を吹き返したことと、京都府の横槍で、自治区止まりとなっている。27

2020-06-28 22:18:00
劉度 @arther456

日本最大の経済拠点となった大阪は、かつての東京を彷彿とさせる密度で企業が集結している。その中で、近年、一際目覚ましい発展を遂げている会社がある。名前は鏡花商事。日本政府との太い繋がりを持ち、軍民問わず多種多様の食料品の輸入・加工・販売を行う商社だ。28

2020-06-28 22:21:01
劉度 @arther456

鏡花商事の会議室では、今日も活発な話し合いが行われている。「里見クン、買収の件はどうなってる?」「6ヶ所は内々に話がついています」「後2ヶ所は?」「手応えはあります。もう1週間ください」「よし。矢車クン、生産量と予算は君の計画通りに行こう。存分にやっちゃって」「了解!」29

2020-06-28 22:24:00
劉度 @arther456

並み居る幹部たちを率いるのは、ボサボサの長髪を首の後ろで括った細身の人物。鏡花商事の社長だ。「で、海外部門は……農場防衛費の増額?またか……」「武装組織の襲撃が激しく、増員をかけないと何とも……」社長が渋面を作っていると、会議室のドアがノックされた。30

2020-06-28 22:37:02
劉度 @arther456

開いたドアから顔を出したのは、ウェーブのかかった黒髪に青い瞳の女性だった。「どうした?」社長の問いかけに、彼女は親指と小指を立て、耳と口に近付けるジェスチャーで答える。「っと。電話だ。ちょっと待ってて」社長は会議室を出て、女性と共に社長室へと向かう。31

2020-06-28 22:37:02
劉度 @arther456

「横須賀から?」女性は頷く。「弟?」女性は首を振る。「んじゃあ、ぬい?」頷く。「珍しいな。どうしたんだろ」社長室に入り、電話を取る。「もしもしらぬい?」《またそれですか》電話の向こうの声は呆れていた。「いいじゃない、面白いし」《そうですか。なら、用件だけ手短に済ませます》32

2020-06-28 22:37:02
劉度 @arther456

「えー、少しぐらいだべらせてよ」《お断りします。無駄な時間は使いたくありません》「ぬーん……それで、わざわざ私にかけてきた用件って?」《提督の過去のことで、確認したいことが》「本人に聞いて」不知火の言葉を、社長の固い声が遮った。「私が勝手に話せることじゃない」33

2020-06-28 22:37:02
劉度 @arther456

《そうはいきません。その、提督の記憶が怪しいのです》「……え?どゆこと?」それから始まった不知火の説明は、理解が追いつかないものばかりだった。鎮守府に不審な海外艦娘がいること。その艦娘が提督の幼馴染を自称していること。更に、出会った艦娘達の記憶が書き換えられていること。34

2020-06-28 22:39:00
劉度 @arther456

「なるほど。それで、その艦娘が本当に幼馴染かどうか、私に聞いてみた、と」《はい。ご存知ですか?スウェーデン人の幼馴染》「知らぬい」即答だった。社長の記憶に、そんな幼馴染はいなかった。《そうですか。それがわかれば、対処方針も決められます。ご協力ありがとうございます》35

2020-06-28 22:42:00
劉度 @arther456

「うんうん、役に立ったようで何より。ところでぬいぬい、最近どう?ちゃんとご飯……」《では、失礼します》社長の言葉は最後まで聞かれず、電話は切れた。無情な切断音が受話器から響く。「ちーちゃん、ぬいぬいが冷たいよう……」泣きつく社長に対し、女性は、知らぬい、といった風情であった。36

2020-06-28 22:48:00
劉度 @arther456

「確認しました。スウェーデン人の幼馴染というのは、存在しません」電話を切った不知火の言葉に、倉田は首を傾げた。「ふむ……ますますわかりませんね。実在する幼馴染を騙るならともかく、存在しない幼馴染を自称するとは。潜入するなら普通に外国の研修生を名乗ったほうが良さそうですが」38

2020-06-28 22:51:00
劉度 @arther456

「……いえ、それは有効ではありません」「ほう?」「海外艦の身元は徹底的に洗うようにしてありますので」そう語る不知火の声には、やや棘がある。「……もしかして、前にそういう事が?」不知火は答えない。その態度が答えになっているのだが、倉田は指摘しないでおいた。39

2020-06-28 22:54:00
劉度 @arther456

「おーっと、来たよ。提督だ」入口を見張っていた隼鷹が声を上げた。「幼馴染は?」「いないね。一人だ」「好機ですね」少し待つと、困惑した様子の提督が入ってきた。「ちょっとちょっと、何なのこれ?」やってきた提督は状況がさっぱりわかっていない様子だった。40

2020-06-28 22:57:00
劉度 @arther456

「不知火、倉田なんだから、こんな厳戒態勢にしなくても……」「提督」不知火の視線は非常に冷ややかであった。思わず後ずさった提督を、隼鷹と五十鈴が捕まえた。「一応、お伺いしますが」「な、何?」「ゴトランドとは、何者ですか?」「え?お、幼馴染じゃないの……?」「確保」41

2020-06-28 23:00:01
劉度 @arther456

「だって、みんなそう言ってるし……」「はいはーい、騒がないでねー」喚く提督は五十鈴に引きずられていく。提督はこのまま工廠に移動させ、護衛をつけて監禁する。「倉田さん、増援はあと何分ですか?」「50分です」「了解しました。こちらも準備を始めましょう」その間に、幼馴染を仕留める。42

2020-06-28 23:03:00
劉度 @arther456

【オーバーロード・オーバーライト】#3おわり#4へ続く

2020-06-28 23:04:00