はづきさんの秘密のメモ帳～Pと円香～

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@kivatokusari 円香にはいくつかのルートが与えられた アイドルとして日本を代表するアイドルになり未婚で一生を終えるルート アイドルとして輝き出した矢先、スキャンダルで引退、自暴自棄になり交通事故に巻き込まれるルート アイドルを続けるうちに担当に惹かれるが、告白できないうちに陽菜に盗られるルート

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@kivatokusari 勇気をだして告白したはいいものの、ファンにPが刺されるルート これまでの態度のせいで告白当日にPが自殺するルート 何とか付き合い、同棲したはいいものの強盗に殺されるルート ・ ・ ・ はづきさんは何度もそれらの物語を見てきました。これまで彼女が何度も、Pの初プロデュースを見てきたように…

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@kivatokusari そしてその度に、はづきさんは秘密のメモ帳に記していたのです。 どうしたらアイドルとプロデューサーが幸せなエンディングを迎えるルートができるか……… はづきさんの心が折れたのは最後から一つ前のルートを選びその行先を見ていた時です。

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@kivatokusari そのルートは、珍しく長く、幸せなルートに見えました。 円香はアイドルとして成功、引退後、女優として転向。 Pは円香のプロデュースを他に一任し、新人のプロデュースに励んでいたのです。 一見、失敗したように見えます。しかし、この時は既にPと円香は交際を始め、結婚を見据えて動いていました

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@kivatokusari そしてある日のワイドショーの一面に、《女優・樋口円香、一般男性と結婚！！》というのが載りました。 やっと、ここまで……… わたしとしても、嬉しさで涙がこぼれます。そしてまた祈るのです。 どうか、このまま………

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@kivatokusari それからしばらく、その幸せは10年近く続きます。 やがて、二人の間には二人の子供が生まれました。 そして、弟が5歳の誕生日を迎えるその日 －－－唐突に、その幸せは終わりました。

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@kivatokusari 樋口円香は、家庭に入り日々の子育てに勤しんでした。 7歳の娘も、今日5歳になった息子も、手はかかるがその分とても可愛い。 今日は弟の誕生日だから、きっと、あの人も早く帰ってくるだろう。 あの人と結婚して十数年、今思うと出会った時にあんな態度をとっていたのがとても可笑しいように感じる

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@kivatokusari ほんと、なんでこうなっちゃってるんだろう 自然とこぼれた笑みに反応して娘達も笑う 時計を見るともう7時に近づいている。 普段ならもう帰ってくるのに、何かあったのかな？ あの人の帰りを子ども達と待っていたら、電話が鳴った。 パパからかな？、子ども達にはそう言って、電話に出た。

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@kivatokusari ほんと、なんでこうなっちゃったんだろう……… あの人の携帯から掛けられた電話の声の元は警察署からだった。 警察の方曰く、 仕事帰りにケーキを買い、家に帰る途中信号無視の車に撥ねられて即死 どうやらそんな感じのことを聞いた。 とにかく、いろいろ混乱しちゃってるから落ち着かなきゃ…

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@kivatokusari 警察と病院の方に案内されて、夫に会ってきた。 子供たちに心配かけないように、仕事でパパは今日帰れなくなっちゃったという話にして寝かしつけてから来た。 子供達に嘘を着いてしまったけれど、この状態のパパを見せなくて良かったと、改めて思わされた。

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@kivatokusari これから、どうやって生きていこう……… 部屋に戻ってきては、そればかり… この部屋には、彼との思い出が多すぎて、かえってそれが自分の心を締め付ける。 彼と初めて出会った日、ノクチルの結成、W.I.N.G優勝、ファン感謝祭、G.R.A.D優勝…これらはまだ10代の頃の思い出だ。

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@kivatokusari 子ども達は帰ってきたらきちんと寝ていた。 余程お父さんの帰りを楽しみにしていたのだろう。 息子の顔は、泣き腫らしたあとがあった。 子ども達の泣き跡を見て、W.I.N.G優勝時のあの人の顔を思い出す。 そうしてみたら何故かもう悩んでばかりではいられなくなった。 「私……泣きませんので……」

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@kivatokusari 私がプロデューサーさんの訃報を聞いたのは、朝のニュースでした。 でも、あそこまで上手くいってたのに、どうして… どうやっても現実味はありません。 しかし、それは事務所に行った途端襲ってきました… いつも彼が来ているはずの場所、時間… もしかしたらいつも通りもういるんじゃないかって

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@kivatokusari そんな、淡いいろをした期待は一瞬で消え去ります。 「はづき……もしかしたらもう知ってるかもしれないが……彼が…事故で亡くなった……」 社長の言葉で受け入れざるを得ませんでした。

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@kivatokusari 円香さんに会いに行かなきゃ…… わたしの心はもう折れかけていました。 これまで何度も何度も、あの2人の行く末を案じてきましたが、流石に今回は運命、と諦めるべきなのでしょうか………

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@kivatokusari もはや希望は色を失い、諦めかけていた頃、彼との会話を思いましました。 そういえば 昨日は息子さんの誕生日だって、言ってましたっけ…. あの人のことです。机に誕生日プレゼントでも置き忘れてるはず。 それに何かヒントがあるかもしれない…… 透明だった希望に色が少し戻ります。

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@kivatokusari 彼の机を探してみると、おそらく息子さんに渡すはずだった手紙と、円香さんとの思い出の品がいくつかの見つかりました。 「あれ？これって………」

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@kivatokusari そこには、彼が円香さんをプロデュースする時に使っていた、ボロボロになったお手製の御守りがありました。 灯織さんや凛世さんに聞きながら作った、お手製の御守り。 この使い具合から見るに結婚後も円香さん達になにかあるときに使っていたのでしょう。

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@kivatokusari これらを渡してから、今後どうするか決めましょう。 わたしはそう決めて、円香さんに会いに行きました。

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@kivatokusari 円香さんは、すっかり元に戻っていました。 それも結婚後ではなく、結婚前、もっと言えばプロデュースが始まった頃の感じに……… 彼女としても辛かったのでしょう。 泣き腫らした様子は見られませんでしたが、目は充血してました。 多分寝れてないんだと思います。

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@kivatokusari 彼女に手紙や思い出の品を渡しましたが1つ渡しそびれてしまいました。 そして事務所に帰って来てもう一度だけ、もう一度やり直すことに決めました。 渡しそびれたものは、プロデューサーさんに渡してもらいます。

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@kivatokusari 秘密のメモ帳に、日付を書き込み、いつも通りソファー裏の床で寝ます。 それでは、 「休憩してきますね…」

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@kivatokusari ………ふぁ〜？ ちゃんと戻れてますかね？ 大丈夫そうですね。プロデューサーさんが仕事してます。 こうなれば後は野となれ山となれです。昨日…今日ですかね？まあどっちでもいいんですけど、それと同じように仕事をします。 きっと勝負は最後なので、帰る時までは大丈夫です。

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@kivatokusari 今日も、いつも通りの日々でした。 もう少しで今日の業務も終わりです。 プロデューサーさんったらさっきからそわそわしてて、天井社長からもそんなに気になるならもう帰っていいぞ！なんて言われちゃったりして… そうこうしてるうちに終業時間です。

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@kivatokusari 終業時間になった途端、プロデューサーさんは急いで帰ろうとします。 しかし、そうははづきがおろしません！ なんせ、そうした時の今後の展開を知っているから……… 「ちょっと待ってくださいプロデューサーさん！！」 急ぐプロデューサーさんを引き止めます。