アイヌ民族の形成

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熊猫さん🐼🐷🐶🐻🐉🇵🇸 @xiongmao53

【アイヌ民族の形成】 擦文人は既にアイヌと言っても差し支えは無いと思う。実際、擦文文化中、アイヌ文化に連続する要素は多い。よく擦文文化とオホーツク文化との融合によるアイヌ文化の形成と言われたりするが、実際にはオホーツク文化は擦文文化に影響を与えながらも、擦文文化の終末に先んじて➡

2019-08-21 20:42:57
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北海道から姿を消している(工藤雅樹)。  それでも、やはり【アイヌ民族】と言うべき集団が成立したのはアイヌ文化期であるというほかはない。実際、アイヌの生活様式は《一三世紀末~一四世紀以降に革命的といえるほどの急激な変容を遂げていった》(榎森進)といい、➡

2019-08-21 20:44:04
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現在に続く伝統的なアイヌ文化やアイヌ社会が形成されたのはこの時期であり、それらの形成をもってアイヌ民族の形成というべきだと思うが、それを考えるためには、まず擦文社会とアイヌ社会との相違点を考えていかねばならないと考える。

2019-08-21 20:44:26
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その点、やはり重要なのは擦文社会と違ってアイヌ社会が既に階級社会形成前夜の段階に入っており、内部に首長層の権力や富の増加が見られたということであり、榎森進は藤本強『擦文文化』(教育社)の以下のような記述を引用している。➡

2019-08-21 20:46:13
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《「アイヌ社会では、交易品などを主体にして、貧富の差、さらにはある程度の階層分化さえみとめられるが、擦文文化の社会にあっては、これはほとんどみとめることができない」》。

2019-08-21 20:46:37
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続いて榎森をもとに進めるが、実際、擦文社会は《日本社会との活発な「交易」活動を媒介にして飛躍的な発展を遂げた社会》であり、そういった《「商品流通」の進展を梃子にして、先にみたようなアイヌ社会内部に階層分化が生じ、アイヌ社会の各地に首長層が成長し始めたものと推察される》。

2019-08-21 20:47:19
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原始共同体社会にあっては、交易の主体として他者に相対するのは一個人ではなく、《共同体そのものであったから、こうした交換関係の発生と発展は、当然のことながら共同体を代表する共同体首長の役割をも次第に大きいものにしていった。》

2019-08-21 20:59:04
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実際、和人から鉄製品などを入手する為には、自家消費以上の交換のための生産(狩猟採集であれ)を必要とする。鉄製品は擦文社会の生産力を高めると共に、交換の為の産物の取得、即ち商品生産を増大させたが、それが他集団との交易をつかさどる首長の権力を高め、首長の元への富の集中を招いたことは➡

2019-08-21 21:00:29
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間違いないだろう。 このように考えると、アイヌ文化成立の指標とされる土器を殆ど作らなくなったことなども、それは交易によって、それに代わる鉄鍋や漆器を大量に入手できたからであり、そのためには従来以上の交易用産物=商品の生産が必須であったはずである。

2019-08-21 21:00:54
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アイヌ文化を輸入品に大きく依存した文化と表現する向きもあるが、そのような輸入品を入手するためには、当然、自家消費分を超えた商品を生産できるアイヌ社会の生産力の発展の結果があったことを見落としてはならないと思う。(またその生産力は輸入品によって高められた)。

2019-08-21 21:02:00
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また、アイヌ民族成立の指標として重視されるイオマンテも、こういった社会の変革の反映物と考えるべきだろう。上述の榎森によると、イオマンテは「シネ・イトクパ集団」という父系血縁集団(コタンや首長を中心とするローカル・グループより次元の高い集団とされる)を単位として行われ、➡

2019-08-21 21:03:10
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イオマンテはこの集団の団結と組織を維持する上で大きな役割を果たしているという。 生産力と交易の発展による首長層の成長や階層分化、それに伴う私有財産の増大は当然、従来の共同体のありようをも変化させ、更に緊密な集団の形成を促したとも考えられる。

2019-08-21 21:04:31
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また、アイヌの神具として重要なイナウには《父系の系統を示す刻印エカシ・イトクバ(祖印)を刻み付けるが、このエカシ・イトクバをめぐって形成された父系血縁集団》が上記・「シネ・イトクパ集団」であるという。

2019-08-21 21:07:30
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このように階級社会形成期に入ったアイヌ社会は非常な活力を呈し、13世紀にはサハリンに進出、14世紀初頭に到るまで、サハリンや対岸の大陸を舞台に長期にわたって元朝とも戦ったという事実を見ても、そのことは明らかだと思うし、このような活力はより緊密な集団の結集を促したものと考える。

2019-08-21 21:33:34
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(参考) ・榎森進『アイヌ民族の歴史』(草風館 2015) ・工藤雅樹『エミシ・エゾ・アイヌ』 ff-ainu.or.jp/about/files/se…

2019-08-21 21:39:31

【参考】
下の noteは、榎森進『歴史からみたアイヌ民族 小林よしのり氏の「アイヌ民族」否定論を批判する』(岡和田晃 マーク・ウィンチェスター編『アイヌ民族否定論に抗する』2015年所収)からの抜き書きです。

リンク note(ノート) アイヌ民族の形成|熊猫さん|note 民族の定義 民族の定義については、さまざまな見解が提示されている。日本語における「民族」という語は、一般に、言語の共通性をはじめ、宗教・芸術・衣食住の習慣・価値体系の共通性を有する特定の個別文化と、こうした個別文化を有している人間集団の構成員の同集団への「帰属意識」の存在を「民族」形成の大きな要因とみる見解が支配的である。また、この場合の「民族」は、英語やフランス語の「Nation」よりは、ギリシャ語の「Ethonos」(エトノス)に近いニュアンスを持った言葉とされている。「Nation」には「国民」とい
アイヌ民族否定論に抗する

岡和田 晃,マーク ウィンチェスター