弾薬小話~ソ連の14.5mm弾薬はどうして成功したのか?

15mm級弾薬といえば比較的マイナーですが、どうしてソ連の14.5x114mm弾は例外的に成功したんでしょうね?というおはなし
38
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

弾量3倍云々の話は勝手に言ってるだけで、なんかちゃんとした説があるとかいう訳じゃないんですけどね。さて東側14.5mm弾薬については、他国のような大威力20mm級が実質無いことと関係してる気がします #マシュマロを投げ合おう marshmallow-qa.com/messages/f56e7…

2020-07-25 20:27:07
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

なにしろ戦前のソ連では小口径機関砲の開発が恐ろしく迷走しておりました。ドイツの2cm Flak30を少数採用したかと思えば、同弾薬の国産機関砲を作ってみる。発射速度が不満なので航空用20mmベースの独自高初速弾で作ってみる、ボフォース系で25mmを作ってみる、23mmは遅れて開発者が逮捕される…… pic.twitter.com/NwnuZXPA8G

2020-07-25 20:39:06
拡大
拡大
拡大
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

他にも航空用ではエリコンを買ってみたり、12.7mmベースに20mmにネックアップしてみたり、その薬莢延長版高初速型(先述の陸用と同じ)を作ってみたり、開発者の頭が吹き飛ばされたり、いなくなったり pic.twitter.com/PkmNcKJxNj

2020-07-25 20:49:15
拡大
拡大
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そんなこんなで独ソ戦が始まった時、ソ連でまともに使われてる20mm口径の弾薬といえばShVAK用の20x99Rしかありませんでした。これは航空機関銃用としては軽くて悪くないんですが、対空用や軽戦車用には威力不足でイマイチ。他国のように20mmが広範に使われる状況ではなかったのです pic.twitter.com/OCKpY3rcaR

2020-07-25 20:53:22
拡大
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

まあ実際のところShVAKはTNShとして軽戦車にも搭載されたんですが、これはあくまで12.7mm重機の生産が振るわなかったが故の代替措置であって、別段大威力化を目指したものではありません。本来なら12.7mmが載ってたところなのでII号戦車なんかとはちょっと違う pic.twitter.com/b1biryxB3c

2020-07-25 20:55:48
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そして軽量な対戦車弾薬として20mmの代わりにその立ち位置を占めることになったのが14.5mmでした。こいつはもともと機関砲弾薬ではなく最初から対戦車銃用として独ソ戦直前に開発されたもので、銃側の開発は少し遅れたものの独ソ開戦直後にPTRDとPTRS大慌てで投入されます pic.twitter.com/1DaLQwE0h8

2020-07-25 21:05:04
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そんなわけで大戦期のソ連では他国の20mm級弾薬にあたる立ち位置として ・対戦車銃用14.5mm ・航空機関砲用20mm ・襲撃機用23mm ・高射機関砲用25mm が使われることになります。一見散らかってるようではありますが、まあ他国でもこのクラスが数種類に及ぶことはあるのでそこまで異常ではないです

2020-07-25 21:11:59
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

さて12.7mmと14.5mmは弾量差が少なくて口径が近すぎるんじゃないかと思われる向きもあるかもですが、しかし独ソ戦のソ連においてその差は重大な意味を持ちました。14.5mmはあくまで対戦車銃弾薬ですが、これで硬芯弾を使うと独軍戦車の即背面装甲を中距離で抜くのにピッタリだったのです

2020-07-25 21:15:13
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

実は12.7x108弾薬にも硬芯弾はあり、ショロホフ対戦車銃(なんとなのタンクゲヴェーア を今更コピーしたもの)で使えたんですが、こいつの場合は14.5mmに比べて独軍戦車の側背面装甲への有効射程が半分くらいになっちゃいます。まともな対戦車砲が足りてない独ソ緒戦でそれは大変まずい pic.twitter.com/uTWIrtdCR1

2020-07-25 21:20:00
拡大
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

つまり14.5mm弾薬は独ソ戦前半の状況にあまりにもマッチしていたので、クラスが近いからといって安易に12.7mmに一本化することは絶対に出来ませんでした。また上の23mm弾薬については、今度は大威力過ぎて歩兵火器としての軽便さに欠けるため、こっちに統合することもできません

2020-07-25 21:23:43
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

また14.5mm弾薬は当初は対戦車銃専用だったものの、1942年頃からそれ用の大口径重機関銃の開発も始まります。これも当初は対装甲火器の立ち位置でしたが、後に対空火器としても注目されるようになり、最終的にあのKPVになります pic.twitter.com/EkCkeF6fy1

2020-07-25 21:41:19
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そして独ソ戦が終わっても14.5mm弾の価値は残ります。もはや中戦車に有効な弾薬ではなくなりましたが、ありとあらゆる装甲兵車の装甲を遠距離から貫通でき、また高初速なので軽対空火器としても効果的です。また装甲兵車の普及は却ってこの弾薬の価値を一層高める事にもなったでしょう

2020-07-25 21:48:07
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

とは言え14.5mmが12.7mmより嵩張り厄介である事には変わり有りません。独ソ戦における絶妙な相性によって代えがたい位置を占め、生存を保証されたからこそ14.5mm弾は定着することができた、といった側面ももしかするとあるかも。あるいは独ソ戦が無いとか遅れたら、そうはならなかったかも(ふわふわ)

2020-07-25 21:52:49
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

14.5x114mm弾って対戦車ライフル弾薬としてはほぼ最後発なお陰で、実用化とほぼ同時に硬芯徹甲弾が存在していたんですよね(7.92x94もだけど)。通常徹甲弾しか基本的に持っていないか、硬芯弾の威力を前提にすることが出来たか、これは大口径対戦車銃の明暗を割と分けたような気がします pic.twitter.com/mQoCBhSFn0

2020-07-25 21:59:59
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

15mm級で硬芯弾のある弾といえばドイツのMG151で使われた15x96mmもそうで、こっちも大口径対戦車銃弾薬としての立ち位置が期待されていたんですが、要求された装甲貫通力が高すぎて達成できず終いでした。貫通力だけ見れば14.5mmに近いくらいではあったんですが、相手とマッチしてなかったのです

2020-07-25 22:23:37
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

他に大戦期に使われた同級弾薬でいくと、チェコののZB-60や英国の15mm BESAの15x104があります。まあまあ高初速なんですが徹甲弾は鋼芯弾しかないく装甲貫通力は100ヤードで27mmとかそんな程度。50口径に比べて優位が薄いのであんまり広くは使われずに消え去ることに pic.twitter.com/KCLQiuq6gE

2020-07-25 22:50:33
拡大
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

米軍のcal60 T17航空機の15.2x114mm弾薬にもやっぱり同弾薬を使うT1対戦車銃が考えられてました。こいつは76.5g弾を1100m/sで投げるのでソ連14.5mmより更に強力なんですが、その割に装甲貫通力は500ヤード32mmとあまり振るいません。数字からして硬芯弾ではない、のかなあ pic.twitter.com/UH957iSs0b

2020-07-25 23:54:01
拡大
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ところでcal60 T17航空機関銃はMG151をコピーしようとして失敗したもの、とよく言われますが、単純にコピーしようとしたのではなくて、前述の狂暴な弾薬を使う超高初速機関銃を目指していたようなのです。1000m/s超で1000発/分とかコピー云々以前に要求が野心的過ぎたんじゃないかなあとも pic.twitter.com/8IlZi6Cspd

2020-07-26 00:00:18
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ちなみに15.2x114mm弾薬はT17とともに終わった訳ではなくて、戦後も航空機関銃弾薬の候補として残ってT45ガトリングなんてものが試作されたり、20mmや27mm口径にネックアップしたり。最終的にあの「バルカン砲」と20x102mm弾薬に繋がるので必ずしも無駄だった訳じゃありません pic.twitter.com/OPYAiwrUsJ

2020-07-26 00:04:00
拡大
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

結局なぜソ連だけが15mm級弾薬を広く使う事になったのかというと……14.5mmのタイミングが良かったというのは大きい気がしますの。14.5mmは誕生直後に重要性が爆上がりしたので否応にも定着が進みましたが、他国15mm級はいまひとつ威力が脅威とマッチせず広まらなかった

2020-07-26 00:18:55
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

一般に新体系の弾薬は採用が躊躇される一方、一旦広まった弾薬はできるだけ使い続けたいものです。ことにソ連はそういう傾向がたいへん強いので、もし独ソ戦がなく14.5mm弾を否応なしに使わざるを得ない状況に追い込まれていなかったら、これも他国15mm級と同じ運命を辿っていたかもしれません

2020-07-26 00:24:50
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

あるいはもし独ソ戦が始まった時点でドイツが新III号、新IV号戦車への置き換えを済ませていたら、14.5mm弾の対戦車銃はたぶんほとんど作られることはなかったでしょう。となると14.5mm弾は定着せず、たぶんKPVも生まれず、戦後は高初速20mmや23mmがBTRに積まれることになっていたかも

2020-07-26 00:29:29
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

15mm級弾薬は対装甲用としての立ち位置が強くて(そりゃ榴弾的効果は期待できませんんし)、そして対装甲弾薬は相対的に威力が足りてるかが大変重要なんで、ちょっとした技術の導入如何や主な脅威の大小によって価値がまったく変わっちゃいます。なのでタイミングによって大きく運命が分かれるのですね

2020-07-26 00:44:00
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

例えば逆にBESA15mmに硬芯徹甲弾が最初から用意されていたら? あるいはボーイズがその弾薬前提で作られていたら? ひょっとするとそんな世界では英国がKPVめいたものを持つようになっていたかも知れません(完全に寝言)

2020-07-26 00:47:21
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

対戦車銃って基本的には戦車の側背面装甲を狙うものというイメージがありますけど[誰によって?]、PTRDとPTRSはマニュアル上では「前面装甲は至近距離(200〜400m)でのみ貫通できることに留意せよ」となってるのね。裏返せば正面の貫通も条件次第で期待していい事になってるわけだ

2020-07-26 17:54:49