大河ドラマ的な『枕草子』、映像記録者・清少納言 ~片渕須直監督の話

2020/8/15~8/16前後の片渕監督のツイートを中心に収録。
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片渕須直 @katabuchi_sunao

@Xushino 例えば、 五月ばかりなどに、山里にありく、いとをかし。 草葉も水もいと青く見えわたりたるに、上はつれなくて、草生ひ茂りたるを、長々と縦さまに行けば、 下はえならざりける水の、深くはあらねど、人などの歩むにはしりあがりたる、いとをかし。

2020-08-16 11:05:22
片渕須直 @katabuchi_sunao

@Xushino 左右にある垣にあるものの枝などの、車の屋形などにさし入るを、急ぎてとらへて折らむとするほどに、ふと過ぎてはづれたるこそ、いとくちをしけれ。 よもぎの、車に押しひしがれたりけるが、輪のまはりたるに、近ううちかかへたるも、をかし。 牛車の速度感。 最後はたぶん、嗅覚によるよもぎ。

2020-08-16 11:06:52

第223段
 (陰暦)五月のころなどに、山里を(牛車で)あちこち行くのは、とても面白い。草の葉も水もとても青くずっと一面に見えているが、表面は何ということもなくて(下に水があるという様子は見せないで)草が生い茂っている所を、長々とそのまま続けてまっすぐに行くと、(その下草の)下はなんともいえないほど清らかであった水で、(それが)深くはないけれども、供の人などが歩き進むにつれて水しぶきを上げているのは、とても面白い。
 (道の)左右にある(家の)垣根にある、何かの木の枝などが、車の屋形などに入り込むのを、急いでつかまえて折ろうとするうちに、ひょいと(車が)行き過ぎて(手から)はずれたのは、まったく残念だ。よもぎの牛車に押しつぶされていたのが、車輪が回っていくのにつれて、鼻先にちょっと香りが漂ってくるのも面白い。
オンライン家庭教師 e-Liveより、大意を示すため引用。

片渕須直 @katabuchi_sunao

@Xushino きわめて映画的なカメラマンなんですよ。ただカメラを持たされておらず、言葉しか持ち合わせない。

2020-08-16 11:23:00
片渕須直 @katabuchi_sunao

@Xushino 「左右にある垣にあるものの枝など」で、道幅もわかっちゃう。 季節を考えて補足すると、この垣の枝は、白い花がたわわに咲いた卯の花なんですね。だから手を伸ばした。 「卯の花」という情報は「五月」「垣」というキャプションでもたらされるわけです。

2020-08-16 11:26:00
片渕須直 @katabuchi_sunao

@Xushino はい。写真ですらない。動画像なんです。

2020-08-16 11:28:31
片渕須直 @katabuchi_sunao

@Xushino あ、もうひとつ。 実は「山里」も「言葉の中で描かれない卯の花」を印象の中に存在させるための重要な「キャプション」なんです。当時の山里の別業の垣は卯の花が多かった、という「文脈」をわきまえてさえいれば。 ハイコンテクストであることによって隠されている部分はそうやって補う必要があります

2020-08-16 11:39:59