【目を見て、夏】福間健二 #k2fact267

福間健二 @acasaazul

そうだったのか。時間がたち、やっとわかった気がした。遠くから来て立ちどまる黒い服の人たちを見た。受け入れる。自分も連れていってほしいと願う。そして愛情の感じられる声で呼ばれる。そういう一瞬の夢。黒い服の人たちは消えるが、突然の雨に濡れている作者がいる。（目を見て、夏）#k2fact267

福間健二 @acasaazul

願った未来。やってきたのに、よくわからないことがある。いくつかの死や液体のこぼれた平面と起伏の役割のように。熱中できることなにかあって、ここじゃなくても大切に扱うべきイエローライン。でも、好きなおかずの皿。代表的なテーブルの上というわけにはいかない。（目を見て、夏２）#k2fact267

福間健二 @acasaazul

そうだった。ぼくが一番父に似ているし、母にだれより似ているのもぼくだ。いつも心配事があり、汗っかき。このラインの内側に。はい、わかりましただったのに外に出ている。急に真っ暗。落ちる。何十人、何百人もの子どもたちのささやき声。同じことを言う。月が友だち。（目を見て、夏３）#k2fact267

福間健二 @acasaazul

家族。似ていてもよくはわからない。父は昼でも麺類をいやがり、目まいって目が舞うのだと言った。母は楕円形を好み、青々としたって何色かと訊いた。路上では追い抜かなくてもいい人を抜き、その人も自分たちも危険にさらされた。買わなくてもいいものを買っているのだ。（目を見て、夏４）#k2fact267

福間健二 @acasaazul

相手の目を見てものを言う。アンデルセンの好きな人。たくさんいるなかのひとり、新聞屋さんがそれを教えてくれた。もうひとつ。アマチュアの立たない位置でものを言わない。守ってないけど、あきらめてもいない。壊れる寸前のこの箱のなかにある大事なものを出すときだ。（目を見て、夏５）#k2fact267

福間健二 @acasaazul

だれかに引きつけられて。あるいは隣室のたったいま動かなくなった機械のために。なにかの輪郭を撫でるという以上のことをしたか。その新聞屋さんは、勉強好きでしっかり者の娘さんと出会い、結ばれ、学校の先生になり、いまは退職して二人でおいしい野菜をつくっている。（目を見て、夏６）#k2fact267

福間健二 @acasaazul

夢の団地でも、いつまでこうなのかと心配するが、どの階段にも元気になにか言いながら降りてくる人がいる。のぼるな、じゃない。その汗を拭くタオルにはアンデルセンの書かなかった竜がいる。愛すべき楽天主義者。一瞬一瞬を生きることがすべてだろうという目だ。（目を見て、夏７）#k2fact267

福間健二 @acasaazul

遠くに青い光を見ながら、夜の旋律を追いきれない。はじまりと途中の同じところがよみがえるだけだ。好きになってはいけない人を好きになった。旅に出て長い時間がたった。どちらも嘘。空の飛行機の音に負ける。負けないのは古新聞紙の上におかれたジャガイモとタマネギ。（目を見て、夏８）#k2fact267

福間健二 @acasaazul

黙って通りすぎるのかと言われ、なにか言おうとすると「黙れ」だ。そのあとのことは想像がつかない。黒い服も下水道課も楕円形もいろいろだ。逃げない方がいいときもある。自由に色を塗れる夜明け同盟に会うことがある。その目は笑っている。手にはムラサキ色のキャベツ。（目を見て、夏９）#k2fact267

福間健二 @acasaazul

八月、覚悟したことはその通りになって、この菜園。見ちがえるような父と母がいる。仲よく農作業というほどじゃないが、どこか懐かしい知らない人たちと一緒だ。それぞれの目に尋ねる。これから何百年とかどうしてろってことかな。同じパターンの夢をなぞらないためには。（目を見て、夏10）#k2fact267