鏡と以蔵さんの話

マスターと以蔵さんがあやしげなお屋敷に呼ばれたお話です
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かむい @sunyaxxx

「ここか」偵察と言う事で一騎のサーヴァントそしてそのマスターが真新しい屋敷に姿を現した。「マスター…ほんにここがか」「招待状は確かにここから来てるから、私と付き添い人一人ってあるから」「わしなんぞよりも、どこぞのお姫さんやら円卓なんちゃらとかの方がえいがやないか」ごつっと高い下駄

2020-08-15 21:49:51
かむい @sunyaxxx

を鳴らし屋敷を見上げながら自分などと言うが「せっかくさ、普段よりもめかし込んで恰好良い礼装になったんだから見せたいじゃない」にっと笑ってくれるマスターの無邪気な顔に苦笑を浮かべ「…ほうか」「以蔵さん、自分にもっと自信もってよ!!」強く背中を叩かれるがそれで揺らぐ大幹でもなく。もう

2020-08-15 21:49:52
かむい @sunyaxxx

一度屋敷を見て「ほいたら、行くかの、マスター」「護衛よろしくね」「任せちょ…」いつものように一つ返事を返そうとして言葉が止まる。背筋に冷たい悪寒が走ったのだ。今日はただの偵察だ、なのに今、この屋敷から何かを感じた「以蔵さん?」マスターに心配されてはサーヴァントのなおれと顔を作り直

2020-08-15 21:49:52
かむい @sunyaxxx

し「おん、任せちょけ」にぃっと犬歯を見せて笑った。

2020-08-15 21:49:53
かむい @sunyaxxx

外装も派手ならば中も派手で目を覆うばかりの光の波に目を細めながら前を見る。「いらっしゃいませ」穏やかな笑みを浮かべマスターと以蔵を迎え入れたのは女主人。「お招きありがとうございます」にこりとマスターが微笑み返すが以蔵は二人を見て女主人に微笑まれ手を差し出される。「藤丸立香の付き人

2020-08-15 22:46:16
かむい @sunyaxxx

の岡田以蔵ち言います、握手をご勘弁を」そう言って細く長く白い手を拒否する。護衛たるもの握手などは必要ない。「残念です」一つ柔らかく微笑まれればそこらいらの男などは難なく陥落するだろう。だが以蔵は今仕事で来ているのだ、そんな女の顔をした笑みなど興味はない。これが仕事でなければ一晩の

2020-08-15 22:46:16
かむい @sunyaxxx

相手を頼もうとは思うが。 そのまま会場に二人で入れば見た事もない洋装をした人間が歓談をするもの音楽に合わせ軽やかにダンスをするもの、それぞれに楽しそうに過ごしている。マスター肩を抱き以蔵の方がまず一歩を踏み込めばぬるりと何かが這い上がる気持ちの悪いなにか。だがそれをマスターに見ら

2020-08-15 22:46:17
かむい @sunyaxxx

れてはならぬと顔には出さず目を凝らして招待者達、そして招待してきた女主人を目で追う。この異様な空間から早く出て行きたい衝動を必死で押さえながら中に一歩ずつ踏み込み袖の中から一本の煙管を取り出した。「マスター、ここは外があるがかのう」「多分、あそこ」バルコニーへと続く場所を指差され

2020-08-15 22:46:17
かむい @sunyaxxx

「ほうか外があるがか、ほいたら、マスターちっくと吸うてくるが…おまん、わしと来い」「え?入ったばっかだよ」「えいから、来いや」そう言って入ってきた会場からすぐいバルコニーに移動し外の空気を吸うといくぶんか気分が落ち着いた。「どうしたの?」煙管の先に火を入れ「タブレット動かし」「な

2020-08-15 22:46:18
かむい @sunyaxxx

んで?」「偵察はわしが一人でやる、おまん帰れ」「え?なんで?」「なんぞ危ない、わし一人ならどうでもなる、おまんがおったら足手まといになる」珍しくも以蔵がそんな言葉を口にする。「そこまで」「おん」ふうっと紫煙を吐き出しマスターの向こう側バルコニーの中に人間達を見る。招待者達からは何

2020-08-15 22:46:18
かむい @sunyaxxx

も感じられない。かと言ってあの妖艶な女主人も何も感じられないなら、やはりこの屋敷になにかあるとしか思えない。

2020-08-15 22:46:19
かむい @sunyaxxx

「マスター、わしはおまんを守りきる自信はある、が、おまんはわしの話を聞かずに無鉄砲に無謀に無策に敵に突っ込んでいきゆう、それされゆうがは邪魔にしかならん、やきはっきり言う、藤丸立香、餓鬼の無茶に付き合うとれんカルデアに先に戻れ」珍しくもそうはっきりと言われて喉を詰まらせる。そこま

2020-08-16 23:54:47
かむい @sunyaxxx

ではっきり言われるとは思わなかったからだ。口から煙管を離しこんと手すりにあて中の灰を落とす。「すぐ…戻ってくれる」「おん」以蔵はマスターの後ろ、邸内の人間達から片時も目を離さずマスターの言葉を聞く。「以蔵さん、絶対だからね」カルデアに戻る前に以蔵の手を強く握る。「わしは、守れん約

2020-08-16 23:54:48
かむい @sunyaxxx

束はせん」右手を握られたまま左手を伸ばしマスターのオレンジ色の髪を乱暴にかきまぜ笑ってやる。その顔はいつもの顔でマスターを安心させるにたるものだ。普段ならば。だが今はその言葉を信じて以蔵の足手まといにならぬように戻らないとならない。「絶対、絶対約束だからね!!約束したからね!!」

2020-08-16 23:54:49
かむい @sunyaxxx

そう何度も確認しながらマスターだけがカルデアに戻っていく。それを見届けて以蔵は冷えた煙管を袖の中に戻しまたバルコニーのドアを開け中に入る。どいつもこいつも緩い顔で笑っている。だがよく見ればその目は誰もが虚ろ。なるほど「術かなんかにかかっとるんか」虚ろに笑う人間ほど気持ち悪いものは

2020-08-16 23:54:49
かむい @sunyaxxx

ない。「小さいレディはどうされました?」以蔵の後ろから女主人が声をかけてくる。「気分が悪いと勝手に別室で休ませてもろうとります」「あらまあ、一声かけてくだされば専属の医師を呼びましたのに」「結構、少し休んどればすっと治りますきに、それより水をいっぱい主にもっていきます」「ではまた

2020-08-16 23:54:50
かむい @sunyaxxx

ここにお戻りくださいませ、お待ちしております」「またあとで」また指が腕に触れる前に腕をひきダンスホールから出て行く。

2020-08-16 23:54:50
かむい @sunyaxxx

あの女主人の目も虚ろだった。どこかにこの場にいる人間全てを操っている幻術師がどこかにいるはずだ。そんな人間…いや、人間ではない怪しいものからカルデアにはわんさかといる。だから今更そんな事で驚きもしない。アサシンとキャスターは相性的には悪いが高みから見下し笑っている幻術師を見つけて

2020-08-17 00:19:09
かむい @sunyaxxx

自慢の人殺しの腕で斬ってしまえばなんら変わりはない「たっすいことよ」自分から逃げおおせるなどできるものかとにぃっと嗤う。

2020-08-17 00:19:10
かむい @sunyaxxx

ダンスホールを抜け出し一つ一つ部屋を確認するのも面倒で自らのスキルを使い屋敷内を動き回る。ただダンスをするだけの人間がいるわけではない。忙しく食事を運ぶ人間、グラスを運ぶ人間、洗い場にもそれぞれ人間達はいるのだ。その声を聞き耳をたてながら歩く。無駄に歩き回るほど頭が悪いわけでは

2020-08-17 23:43:39
かむい @sunyaxxx

ない。確かに屋敷内の人間達は目が虚ろだが、ぼんやりとしながらも時に正気のような声も聞こえる。それを辛抱強く待ち聞き逃さぬように聞き取るしかない。「…だか、…に」「……こ……聞こえ…」「目に……ない」そんな微かで小さな声。「声が聞こえるちゅうんか」ある部屋の人間が何人かで話をしてい

2020-08-17 23:43:39
かむい @sunyaxxx

る。壁に背をもたれさせたまま静かに聞く。「へ……の奧に…」ふむとその声を静かに聞き続ける。どこかの部屋の奧かと顎に手をあて次の言葉を待つ『来て』背筋を舌で舐められたような気持ちの悪い声が一瞬聞こえた気がしてスキルはそのままに振り返れば後ろには壁しかない。「なん…」じゃと続けようと

2020-08-17 23:43:39
かむい @sunyaxxx

した言葉はでない「カルデアのサーヴァント」虚ろな目をした人間が見えないはずの以蔵を見ているのだ。「っつ!?」「サーヴァント、待っていた」「待っていた」「お前」ざわっと全身に悪寒が走り鳥肌がたつ。ただ何もせず見えない以蔵のいる壁側に視線を向けている。虚ろな目が。

2020-08-17 23:43:40
かむい @sunyaxxx

「なんじゃ」何をするわけではないがただ見られていると言うだけで気持ちが悪い。すうっと手があがり指さされ「待っていた」「待つ」『奥の部屋に』ぞっとする。声とともにどこかでかいだことのある匂いが鼻孔を掠める。指を向けられたまま『待ってる』ぞろりと背中を撫でられたわけのわからない感触

2020-08-18 00:14:25
かむい @sunyaxxx

と声に思わず部屋から飛び出した。仮初めの心臓が破れるほどに暴れまわる。「気持ち…悪…」ぞろ…下を向いた瞬間声をあげそうになった。両手で口を塞がなければきっと大声をあげていただろう。下を向いた以蔵の顔を虚ろで真っ黒な目をした人間が仰向けに廊下に寝そべり見ていたのだ。「っつ!!」ただ

2020-08-18 00:14:26