「VRおじさんの初恋」の作者コメンタリーがすごい

暴力とも子 @violencetomoko

5話の役割は「ここまで一切何もわからなかったホナミのパーソナリティが明かされる」話です。当初は「ホナミとナオキの状況を平等に描く物語」として考案されたストーリーの名残が発生します。static.ichijinsha.co.jp/online/u/book/… pic.twitter.com/jwXchfJwCa

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ナオキの態度はまあまあ一貫してて、将来の話にビタイチ反応しない。良いことなんか何もないっってすごく自然体で思っているので。でもそこで何かを言い返して会話を回すほどの社交力もないので、ただただ地蔵。それはホナミ相手でも変わらないナオキの根底の特性です。 pic.twitter.com/A0rDPs0J6m

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具体的なパーソナリティを一気に明かすわけですが、重要なのは「ナオキと正反対の属性の人」であることと「それを明かすことで、ホナミがナオキとの関係を清算しようとしていること」です。ホナミは打算の恋愛もできる人だけど、ナオキ相手にそれを貫くことがとうとうできなくなった。 pic.twitter.com/3ADbEFx1Xw

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最期に踊ろうと思っていた場所で踊れなくなったのだから、ただ身を引こうという生き方が、ホナミ自身の矜持であったし、おそらくホナミの周囲の人もそれを尊重できる人たちだったのだろう的な匂わせ。 pic.twitter.com/hM2gAMlENE

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ここは本当に本当にひどいシーンのつもりで描いてました。 「自分より若いのに人生諦めて、でも自殺もしない奴がマジでいる！！！」って言ってるんですよ。もちろんホナミに悪意は無いにしても、言ってることはそういうことです。老人の諦念を慈しむのとはわけが違う。 pic.twitter.com/gRAbxhJ6fg

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ナオキにとっては「どこ見て言ってんだ」って感じでしょうけど、もうナオキの側には「離れたくない理由が自分の側にある」ってわかってるので、惚れた弱みです。 pic.twitter.com/wxybtznYJ3

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「自分の力で得られないものが、相手側都合で一方的に破棄されること」自体にもナオキはまあまあ慣れています。なのである程度先を見越して「自分からアクティブに人間関係を築けない性質で、恋愛を知ってしまって、これから先やっていけるのか？」みたいな怯えです。ホナミ何わろとんねん。 pic.twitter.com/ZV8X8V7fvj

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最終話を読んだ方はご存知の通り、5話は種明かしであると同時に、6話に向けて高速で伏線を張っている話でもあります。一旦ここでキレイに話が終われる状態を作りたかった。なぜならば「絶対にキレイに終わる恋愛なんかにしてやらねえからな」という暴力とも子の鋼の意志があったからです。 pic.twitter.com/0q2wqLEapT

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後半の雰囲気作りには「銀河鉄道」というギミックを活用しました。宮沢賢治から999まで、数多の作品で活用されてきた、もはやパブリックイメージ的な「生と死」の雰囲気で作品全体の印象をドライブしつつ、そしてこの瞬間はナオキとホナミの関係は完全に停滞します。 pic.twitter.com/MHkHxiTsXY

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…5話はナオキの話としては「告白を放つ前に腰砕けのオチがついた」という流れしかないので、熱量的にはほどほどでした。あとぶっちゃけ「要素の多くが二部も引き続き展開されるので、あんまり言えることがない…」という事情もあります。6話のコメンタリはまた明日（土曜夜）に！暴力でした。

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static.ichijinsha.co.jp/online/u/book/… 暴力です。「VRおじさんの初恋」6話（第一部完）のコメンタリーをぶら下げていきます！ pic.twitter.com/wkRtDbCZeJ

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この漫画の一番濃い主張が6話に詰まってる…と思っています。noteの後書きやインタビューでも答えたように、この作品は「ロスジェネ世代に希望の物語は響かない」という暴力の価値観から逆算して生まれた物語です。まず最初にしたかったのは「愛の記憶を糧に前向きに生きる物語の否定」です。 pic.twitter.com/fjpeNVEu9q

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振り返ってみると、海の一連のシーンはすごく熱量が乗っていた感じがします。美しい別れも、それを糧に新たな人生を生きるのも「そのチャンスを掴みやすい人」だけに与えられるものなんですよ。ため息をつくと幸せが逃げる？前向きじゃないと幸運に気づけない？何言ってるんですか？って感じですよ… pic.twitter.com/PoP70tDnZh

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「幸せをつかめないのは努力が足りないから」っていうねえ、一見ポジティブ風の、その実単なるマッチョ思想でしかないじゃないですか。誠実な人は恋愛においても幸運を掴めるだあ？そんなん完全に勝者の生存バイアスですよ。「こんな40歳はいない」って言われてるナオキの目の前で同じこと言えます？ pic.twitter.com/RcV0SzllAK

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「それでもナオキは行動したんだ」って綺麗事に落とすことも可能かもですが、やってることは個人情報を盗む犯罪行為です。ナオキは全部間違ってる。前向きの方向性も間違ってるし、それを達成する手段も間違ってる。間違ってて何が悪いんだよ！描きながらキレ散らかす暴力とも子。 pic.twitter.com/1l9Yg5fnFi

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まあそれはとも子の個人的な感情。ナオキ自身の話としては、ただ「俺に関係のない理由で関係を破棄するな」というホナミに対する叫びでした。この漫画は恋愛モノとしてはあまりにも旨味のないノイズが多い。だからこそ、ナオキの主張がすごくピュアなものに見えて欲しい、という思いがありました。 pic.twitter.com/s0YfPBjnib

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ナオキはこれしかない。ほかに何も持ってないので。 pic.twitter.com/02tb0JzXJH

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場所についてですが、熱海です。熱海伊東あたりはバブル期に売りさばいた別荘地が空き家化してる問題があって、かつ、観光地なので物価は高いがそれが昭和の頃ほど現地に還元されてないみたいな、「成功者側の人もいる一方、斜陽感もある」という塩梅がホナミすごく似合う感じがしたので… pic.twitter.com/ABdtUZ3IM3

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ホナミの病気は咽頭あたりの腫瘍を想定しています。（割と直前まで普通に喋れてたのに？とかあると思いますが、病状のリアリティそのものは主題ではないので見逃してください…）今は気管と食道の手術で電気咽頭を使わないケースも多いそうですが、見た目に伝わりやすい電気咽頭を採択しました。 pic.twitter.com/v94RmoIGh0

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ナオキにとってはホナミに会いに来るなんてなんでもないことです。ホナミにとってはそうではない。ホナミは恋愛の情緒をよく理解しているが故に「あんな別れをしたのに会いに来た」ことと「本当の姿を見ても何ら臆さないナオキ」に二重の意味で感動しています。ようやくホナミも「受け取る側」になれた pic.twitter.com/9BZIj6WMhw

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この作品を作るにあたって、なんとなくあったイメージが「レナードの朝」と「ムーンライト」という映画です。前者からは、ままならぬ恋愛が成就しない優しさを。後者からは、歪でもいいから共にいようという優しさを。それらが混じり合って、少しずつこの作品に反映されていると思っています。 pic.twitter.com/4VD4aklxnR

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振り返ってみれば、この作品を描くことで暴力が得たものは多かったです。ようやく「自分の、自分たちのための漫画」を描けた、という充実感がありました。当時その機会を下さった電脳マヴォとマンガコネクトには改めて感謝の気持ちです。この作品は「依頼があったから生まれた漫画」なので。 pic.twitter.com/eA0F4EUUnL

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そして実際にはほぼほぼ埋もれっぱなしだったこの作品の最初の飛躍、拡散に協力してくださったnote民とtwitter民、VR民のみなさま。更に、6話までを「第一部」として、その次の物語を描く機会をくださった一迅社様。それぞれに報いるものが描けるよう、どうにかフル回転して行きたいと思います。 pic.twitter.com/GMIqSHqEOD

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