マイナスワン音源を求めるリュート奏者は果たしていらっしゃるのか!?
初めてのリュート・デュオは定番曲から!

#SA では初となる、リュート・デュオ作品をアップさせていただきました。テューダー王朝期、エリザベス1世の治世の後半は、リュート音楽に関してもまさに黄金時代と称される時期でした。リュート・デュオも、ちょうどその頃に好んで演奏されたレパートリーです。 twitter.com/smrtaccompanis…
2020-08-26 05:49:37
#SA新着情報 ジャジャン!(最近擬音語多い、、)坂本龍右 @contra2nd さんによる最新マイナスワン、作者不詳(Anonymous) のリュート二重奏、Drewries accordesです!楽譜もファクシミリが無料で入手できますのでぜひ試してみてください! filmuy.com/smartaccompani…
2020-08-26 00:47:54
詳しい曲の解説に入る前に、実際にこの曲を演奏したライヴ映像からご紹介しましょう。デュオを組むロン・マクファーレンとポール・オデットの両氏は、いずれも現代におけるリュートの名手です!youtube.com/watch?v=y_moNe…
2020-08-26 21:05:14
この曲は複数の手稿譜に残されています。今回は、大英図書館が所蔵する、ジェーン・ピカリングのリュート手稿譜の版を用いて演奏しました。この手稿譜の前半部分にはリュートのデュオが多く含まれています。imslp.org/wiki/Jane_Pick… にしてもタイトルの「Drewries accordes」とは一体何なのでしょう? pic.twitter.com/Kp81UvbE7f
2020-08-30 07:44:00


これについては定説があるわけではありませんが、あくまで私なりの解釈を、これから2つ示します。そのためには、英語の「accord」という名詞にまず着目しなければいけません。それもこの曲のタイトルでは、複数形になっているところが意味深です。リュートとaccordという言葉の結びつきとは・・?
2020-09-01 07:34:50
16世紀後半にロンドンで出版されたリュートの指南書です。元はフランス語で、この版では本文は英語に訳されています。ただしリュートの調弦法を示す箇所ではこうして「Accord de Leut」と、元のまま記しています。accordは名詞で「調弦すること」の意味で、英国人たちも理解していたというわけですね。 pic.twitter.com/NwYmMVffXy
2020-09-06 07:30:25

訂正です!accordの後を拡大して良く見ると「de Leut 」でなく「du Ieur(先頭はi及びjの大文字)」と読めそうです。jeur は現代フランス語のjouer(演奏する)に対応するものとすると、その場合でもaccordの意味は「調弦すること」で問題ないはず。
2020-09-06 09:23:48
フランス人たちが相槌や同意の場面で良く使う「d'accord」からも連想されると思うのですが、accordには調和という意味があって、16世紀の絵画に描かれたリュートは、しばしば調和の寓意として用いられました。ですから、こうして弦が切れたリュートが描かれると、逆に調和が乱された状態を暗示します。 pic.twitter.com/CkV66f57I7
2020-09-06 07:35:47

Drewrie(Drewry)は最初にこの曲が捧げられた人名なのでしょうか。ともあれ「accordes」と複数形になることにより、2台の「良く調弦された」リュートが、互いに旋律をバトンタッチしながら、共に「調和」しあえように進んでいく、チャーミングさに溢れた佳曲です!
2020-09-08 08:00:47
こちらはもう30年以上前の録音になりますが、何度聞き返しても新鮮なものです。ヤコブ・リンドベルイとポールオデットの両氏による、この伝説的なデュオCDの最初のトラックが、他ならぬ「Drewries accordes」でした! pic.twitter.com/smwdRNXR8s
2020-08-28 09:38:46


とにかくこの曲は、両パートともリュートが良くなる調性&音域で書かれているので、ちょっとした指ならしや、楽器の響きを確かめる感じで弾くのに最適です。私のイメージとしては、リュートを持った2人が出会って、「じゃあ何か一緒に弾いてみようか」となった時に、まず弾く曲です。
2020-08-28 09:43:53
このCDの解説は、簡潔にして的を得た、英国のリュートデュオのレパートリーについての紹介文となっていますので、興味のある方は是非ご一読を。「Drewries accordes」のように両者が対等な役割である曲の他に、片方がシンプルな伴奏に徹して、もう片方はひたすら速弾きの妙技を披露する曲があります。
2020-09-08 19:39:00
後者のようなある意味で「一方通行」的な曲も、パートを適宜交換することによって、対等なリュートデュオ曲に早変わり。そうしたアレンジの例として、エリザベス朝時代に流行した、「ロビン」の旋律に基づく変奏曲をご紹介。私のスコラでの最初の修士リサイタルから。 m.youtube.com/watch?v=1ZPpkF…
2020-09-08 19:48:44
この「ロビン」の途中で登場する3連譜による書かれた変奏は、意表をついて実に印象的。それで思い出すのが、私がかつて大先輩岡本一郎氏と「Drewries accordes」を演奏会で弾いた際、氏は最後近くの「決め所」で、3連譜による変奏をご自身で即興的に加えていました。こうした姿勢も見習いたいですね。
2020-09-08 19:58:46※3連「符」です(↑)。何度もすみません

なんと、そのリュートデュオでの本番のときの写真が、PCの古いデータの中から出てきました。若い!というより、細い... twitter.com/contra2nd/stat… pic.twitter.com/o5K2UWFN4F
2020-09-08 21:15:11

最後に個人的エピソードも入れつつ、このリュートデュオ曲の紹介ツイートを終わります。まとめも乞うご期待!今後もリュートデュオ曲のマイナスワン音源の需要があるようでしたら、いずれまた別の曲をとりあげるかもしれません。 twitter.com/smrtaccompanis…
2020-09-08 23:20:42