そみ(蝉)
学校の近くに路上で死んでいる蝉を持っていくと、一回だけ息を吹き込んで飛ばすことができる親爺がいたので夏休みにも良く通っていた。復活した蝉のことはそみと呼んでいた。 #ありもしないはなし
2020-08-21 22:15:32飛べるのは一度きりなので、親爺からはなるべく高いところから放ってやれよと言われる。なので大体学校の裏山を登って、崖になっているところから蝉を投げた。途中まで放物線を描いていた蝉が、一番高いところを過ぎた辺りでみ゛、と息を吹き返して斜めに飛んでいに、随分遠いところへと落ちてゆく。
2020-08-21 22:18:55御旅所の穴
今居にある二鳥居社は廃社になって久しいが、元八幡以南の御旅所は街道沿いに今もある。人一人が通れるくらいの穴が掘られてあって、奥には水の流れるのが見えた。昔は人が死ぬとこの中に入れて流すこともあったらしい。今でも時たま森坂の人が捨てさせろと言うことがある。 #ありもしないはなし
2020-08-26 20:40:21御旅所の穴に遺体を捨てると、死んでからも二鳥居の祭列に加わることが出来るからという。いつだったか子供が落ちて、随分遠くの海にある入り江の奥の洞穴で死体が上がったことがあった。祭列に加われたのかは知らない。
2020-08-26 20:44:39赤ボッチ(一つ目一つ足の神)
赤ボッチと言う場所がある。多くは山の中にあって、小さな窪地になっている。地面は白か灰色の礫で埋め尽くされていて底の方だけ赤い。アカボチ、アカボンチと言うこともある。あまり良い場所ではない。 #ありもしないはなし
2020-09-01 23:14:35ここには一つ目一つ足の神が出る。赤ボッチの中にいる人間は踏み尽くされて死ぬ。石塊が白いのは踏み砕かれた骨で、赤黒い土はそれ以外のものが底にたまって出来る。
2020-09-01 23:19:00光りものを呼ぶ男
山にある、ひときわ大きな檜の梢まで上った男がそれからというもの光り物をよぶようになった。呼びたくて読んでいるのでは無い。向こうから勝手に来るのだという。 #ありもしないはなし
2020-09-09 20:05:02草を乗せて沈める遊び
人の名前を書いた紙や葉を水に浮かべて、その上にいくつ草花を載せられるかを競う遊びがある。人と競うこともある。その際は順繰りに草花を載せていって沈んだところで勝ち、または負けとする。 #ありもしないはなし
2020-09-18 23:35:20意中の人を落とす呪いだとして流行ったこともあるが、誰かの名刺に葦が一つ載せられたものが水底に沈んでいるのを見たときは呪いかもと思った。さすがに石は載せない。あくまでも載せるのは草木だ。
2020-09-18 23:38:01