〈再放送〉トーメント・イーブン・アフター・デス #後編

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」電光が迸り、監禁室を白黒に明滅させた!「アイエエエ!」タキが悲鳴を上げた。ステルスを解いたニンジャが虚空より現れ……激しい光を放つ掌打を、ニンジャスレイヤーの背中に叩きつけたのである!肉を焦がす臭気と煙が監禁室を満たす! 21

2020-09-26 20:00:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムアミダブツ!何たる鋭くかつ鮮やかなステルス装束の機構を用いたアンブッシュ攻撃か!当初のクローンヤクザの突入すらも、注意を逸らす囮に過ぎなかった!「ア、ア…ストリングベンド=サン」タキが呻いた!「イヤーッ!」「グワーッ!」さらなる光熱を注がれ、ニンジャスレイヤーは倒れた! 22

2020-09-26 20:03:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アイサツすら必要とせぬままに、決着はついた。「い、いつから隠れて?」タキが震えた。「……ずっとだ」ストリングベンドは答えた。タキは首を振った。「違う。オレじゃない」「うむ。ヤクをキメたお前がベラベラ喋っている間、俺はここで一部始終を見守っておった。経緯は全て把握している」 23

2020-09-26 20:06:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「サイコパスめ。ずっと見てやがったのか。オレに何する」「楽しくなりそうだ。タキ=サン」「サイコパスめ」「まずは足の指から行くか、タキ=サン」「待って、やめ……」……ドクン……ドクン……二人の会話が心音に掻き消される。うつ伏せに倒れ焼け焦げた身体を包む、焼け焦げた装束。闇。 24

2020-09-26 20:09:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(治れ)闇の中、ニンジャスレイヤーは唸った。毒づこうとした。(治れ。クソッ。治れ……何故……)痛みすら感じなかった。死だ。死が巨大な骨の爪となって彼を捉える。(まだ戦う……)(((ウカツ……)))(まだだ……!)(((なんたるウカツ……)))(戦わせろ!おれを……おれはニンジャを……!) 25

2020-09-26 20:12:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは……マスラダ・カイは、抗うように片手をかざした。「嘘だ」マスラダがかざした手を、アユミが掴む事はなかった。彼の目の前でアユミが血の海に崩れてゆく。マスラダは己を見下ろす。なぜ生きている。胸に穴があいている。「嘘だ。何故」マスラダは震える。「何故、おれなんだ」26

2020-09-26 20:15:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アユミ。血の海。散らばるオリガミ。マスラダのオリガミだ。血で赤く染まる。マスラダは血の涙を流す。「何故、おれが生きてる」何度も問い直す。「何故、おれだ」何度も問い直す。「何故おれが生きて、アユミが死んでいる」何度も問い直す。マスラダを貫いたスリケンが、アユミの胸に墓標めいて。 27

2020-09-26 20:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

両膝をつく。視界がぐらつく、そして、踵を返す瞬間のあの男の眼差しが焼きつく、「サツガイ」……忘れるな。容赦なく消えてゆく記憶の断片をかろうじて掴み取る。忘れるな。サツガイ。サツガイ。サツガイ。サツガイの眼差し。虚無、いや、侮蔑だ、いや、悦んでいる……(((殺すべし))) 遠い声。 28

2020-09-26 20:21:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なぜ生きている」(((殺すべし)))「サツガイを」(((殺すのだ)))「殺す……!」(((ニンジャを殺す!)))「ニンジャを!」マスラダは叫んだ。眼前に不定形の炎が熾った。その者はじろりとマスラダを見た。そしてアイサツした。(((ドーモ。はじめまして。ナラク・ニンジャです))) 29

2020-09-26 20:24:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何故生きている」(((ニンジャを殺す為だ))) ナラクが答えた。「何故アユミが死んだ。何故おれが生きている」マスラダは責めた。「おれが死ぬべきだったのに!」(((名乗れ。アイサツせよ))) 怒気がマスラダを打ち据えた。マスラダはアイサツを返した。「……ドーモ……マスラダ・カイです」 30

2020-09-26 20:27:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴウ。ニューロンが風を切り、映像記憶が散り散りになった。マスラダとナラクはいまだ対峙していたが、その後ろに見えるのは、椅子に縛られたタキと、彼をさいなむストリングベンドだった。そして、ブザマに倒れ伏した己自身の姿だった。映像はおぼろで、時間はほとんど静止して見えた。 31

2020-09-26 20:30:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダは目の前のナラクを見た。そして気づいた。今のアイサツは過去の記憶……彼のもとに初めてナラクが現れた瞬間の、記憶の反芻だった。心臓が打つ。再びの反芻。視界一杯に血の中のアユミ。スリケン。「ヤメロ!」(((忘れるなマスラダ。思い出せ。何度でも。火をくべよ。何度でもだ))) 32

2020-09-26 20:33:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「苦しい」マスラダは呻いた。ナラクは囁いた。(((然り。ニンジャだ。ニンジャがオヌシをこのジゴクの責め苦に落とした。忘れるな。儂が何度でも思い出させてやる)))「……サツガイが、アユミを。何故おれが生きて。何故アユミが」(((サツガイというニンジャを殺したいのだろう。させてやる))) 32

2020-09-26 20:36:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「死ねない」(((然り。死ねば殺せぬぞ。ニンジャを殺すのだ)))「傷を治せ……!」(((火をくべるのだ、マスラダ。思い出せ。執着がオヌシに立ち上がる力を与える。忘れるな)))「なぜ、おれが死ななかった!」(((ニンジャ、殺すべし!))) 33

2020-09-26 20:39:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

忌まわしき黒炎が、焼け焦げた肉体を駆け巡る。血流が蘇る。筋肉が蘇る。装束が蘇る。ブレーサー(手甲)が蘇る。メンポが蘇る。火と血が混じりあい、カラテを復元してゆく。そしてニンジャスレイヤーは再び立ち上がった。メンポの亀裂、「忍」「殺」の文字が、赤黒く燃えあがった。 34

2020-09-26 20:42:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何故おれが!」マスラダは血の涙を流した。ナラクの哄笑がニューロンを激しく揺らした。(((ニンジャ殺すべし!執着し、力を無限に引き出せ!))) マスラダは右腕を掲げた。赤黒い炎が蛇めいて巻き付いた。炎の縄の先端には禍々しい鉤爪が備わっている。鉤爪が手首を噛み、マスラダは拳を握った。 35

2020-09-26 20:45:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(何故だ!)マスラダの問いにナラクは答えない。(何故おれを死なせなかった、ナラク!)ナラクは答えない!マスラダの外で現世の時間が流れ始めた。ストリングベンドは驚愕の眼差しを向け、身構えた。マスラダは燃える目で睨み返した。そして……アイサツした。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」36

2020-09-26 20:48:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン」ストリングベンドはアイサツを返した。「……ストリングベンドです」アイサツされれば返さねばならない。アイサツの最中に攻撃を仕掛けてはならない。アンブッシュ(奇襲)を仕掛けた当の相手であろうと、それは同様。極めて重大な掟だ。破る非礼は許されぬ。 37

2020-09-26 20:51:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オジギを終えると、あらためて二者はカラテを構え、互いの間合いを測る。ストリングベンドは不可解を感じている。ニンジャスレイヤーは内臓を灼かれ、焼け焦げて沈んだ。立ち上がる事など出来ぬ筈だった。しかし彼は呪われたフェニックスめいて、禍々しい邪気の炎を纏って立ち上がったのである。 38

2020-09-26 20:54:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ストリングベンドはやや腰を低く落とし、攻撃に備える。この敵の手の内がわからぬからだ。コオオオ……右掌が再び超自然の光を帯びた。一方、ニンジャスレイヤーはストリングベンドを睨み、ジツを睨んだ。コウボウ・ジツ。このニンジャが自ら得たジツではない。サツガイが与えた力。それがわかる。 39

2020-09-26 20:57:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((グググ……あれはコウボウ・ジツ))) 内なるナラクが示唆した。(((掌に極度の光を生じ、その熱を以て敵を焼くジツ也。あの者には過ぎたる力、所詮は付け焼き刃と知れ。此奴に遅れを取るようでは、どの道このさき千度死んでもサツガイには至らぬぞ。執着が足りぬ……執着せよマスラダ!))) 40

2020-09-26 21:00:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

然り。極めて恐るべきジツ。あれを再び受ければ……。彼は己のニンジャ自律神経を働かせ、「まだどれだけ戦えるか」を測った。内なるナラク・ニンジャのソウルは、マスラダの執着、怒り、憎悪を触媒として超自然の火を熾し、かりそめに傷を塞ぐ。だがその力には限りがある。次は致命傷となろう。 41

2020-09-26 21:03:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ストリングベンドの掌が陽炎めいて揺らいだ。二者はじりじりと間合いを維持し動く。椅子に固定されたタキが、脂汗を浮かべて呻く。無残にも、サンダルからはみ出した右足親指があらぬ方向にへし折られている。たった今やられた傷だ。これから始まる拷問のプロローグか。 42

2020-09-26 21:06:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキは血走った目で二者を見つめ、ビクリと身体を痙攣させた。それが合図となった。「イヤーッ!」二者は同時に床を蹴った。タキを中央に、彼らはワン・インチ間合いを保ち、木人拳めいて打撃を逸らしつつ狭い室内を動き回る。ニンジャスレイヤーは幾度も打撃を受けながら、右掌の回避に集中した。 43

2020-09-26 21:09:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ZGGGT!致命的な掌がオゾンの臭いを散らして閃き、ニンジャスレイヤーの側頭部を僅かに削り取った。赤黒の血が噴き、焼けた傷を塞ぐ。浅い。「成る程」ニンジャスレイヤーは呟く。アンブッシュに頼ったのはジツの欠点ゆえか。万全の威力を確保するには一定の充填時間を要するのだ。 44

2020-09-26 21:11:00