くろぐだの奇妙な冒険 第５巻 ～進化するスタンド～

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 11 日向寺の言葉に、訝しげな表情を浮かべる桐生。そのまま、日向寺は立ち去りながら言った 「私は私の罰を背負う。この街は、私にとっての地獄であり煉獄なんだよ。チャオ！」 姿を消した日向寺を、桐生は忌々しげに思いながら呟いた 「…何が罪だ。悪魔め」

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 12 暫くして… ASIT本部で対策会議を開いていた日向寺の元に、一本の電話が入った 「来週、陸自と協議に入る。貴様も来い」 「おや、じゃあ休みだったんだね」 日向寺が言うと、桐生は少し苛つきながら返す 「…店主が蕎麦粉を探しに長野旅行だそうだ」 「ね？未来だったろ？」

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 13 日向寺がそう言うと、桐生は電話を切った 「先生。本部長は何と？」 電話を渡してくれたミヅキはそう聞いてきた。日向寺は軽く笑って答える 「彼は頭は切れるんだけどね。固くていけないよ」 ミヅキは不思議そうな顔をした

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 14 「と言う訳で、第二回R.S.C.対抗肝試し大会の時期がやって来ました～！拍手！」 そんな風に叫ぶかせんに、拍手を返したのはくろぐだだけだった 毎度お馴染みの空き教室。夏休みが近いこともあり、殆どの生徒は早帰りだ。なので普段より騒げる…と言うのはかせんの談だ

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 15 「ほら二人共！せっかくくろぐだちゃんが乗り気なんだから、そこは乗ってよ～」 かせんは残り二名の方を見てそう言った。しかしフニコロはソファで熟睡し、はんちょ～も腕を組んだまま黙っている そんなはんちょ～の両肩を、かせんは掴んで揺さぶった 「ね～、はんちょ～！」

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 15 「うっせぇ！」 はんちょ～はかせんの手を捻り、首に腕を回して締め上げる 「ちょ、ギブギブギブ」 直ぐ様その手を叩くかせん。はんちょ～は少し腕を緩め、かせんの耳元に口を近付けた 「…お前、またアレやるのかよ…去年の事を忘れたとは言わせねぇぞ…？」 「大丈夫！」

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 17 そう元気良く言い放つかせんを、また強めに締め上げるはんちょ～。直ぐに顔が青くなる 「…あれで退学にならなかったのは、奇跡に近いんだぞ…？」 実は去年。かせんは肝試し大会を開いている。夏休みになった学校を改造し、お化け屋敷に仕立て上げたのだ 当然、叱られる

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 18 何とか首が繋がったのは、他でも無い用務員の氷川のお陰である 再び腕を緩めると、かせんは小さく言った 「…大丈夫。今回は規模を小さくやるから。あの特研の三人にも手伝ってもらって、さ」 かせんの言葉に、はんちょ～も少し考える。確かにそうすれば、全開よりは楽だろう

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 19 「だが参加者はどうする。去年の件もある。前回みたいに大々的には出来ないだろ」 前回の肝試し大会は、学校中から人を集めて行った。その為、先生の耳に入ったのだが… 「それも大丈夫。くろぐだちゃんだけにするつもりだよ」 「…何故だ？」 はんちょ～は腕を離した

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 20 かせんは首を擦りながら、はんちょ～に話を続ける 「ほら、あんなことあっただろ？彼女に少しでも楽しい事を経験させて、嫌なことを上書き出来れば…なんてね」 「お前…」 前回の事件。はんちょ～はそれを思い出した。日常を破壊したそれは、はんちょ～の頭にも残っている

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 21 そんな事は直ぐにでも忘れたい。しかしあの血と硝煙と、何より何が起こったのか理解すら出来ない人々の悲鳴を、簡単に消し去ることは出来ないのだ ましてやくろぐだはまだ高校生である。そんな記憶がある方がおかしい 「そこまで考えてるとは…」 はんちょ～が意外そうに言う

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 22 「やだなぁ、僕はこれでも頭脳派だよ」 そう笑顔で言うかせん。しかし、はんちょ～の脳裏にはロケットを飛ばすだけのかせんしか出てこない 「兎に角。この計画は先生にバレない様にしないとね」 そう言い、かせんは手を前に出した。はんちょ～とくろぐだがそれに手を重ね…

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 23 「フニ先輩！？」 「…今年は私も参加するわ」 フニコロもそれに手を合わせた 他三人が意外そうな顔でフニコロを見るが、当の本人は小さく欠伸だけする 「…よしやるぞ！第二回R.S.C.肝試し大会！」 「おー！」 全員の声が小さく、だがしっかりと部室に響いた

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 24 夏休み… それは、学生にとっては天国の期間である。しかし、彼ら二人にはそんな事は無かった 「はいそれ！そうそのタイヤ！それを連ねて山にするのよ！後そっちのパイプ！それは地獄の針山にするんだから尖らせるの！そこ！達磨は軽く壊してライトだって言ったでしょ！」

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 25 「制作指揮」の腕章を付けたリカルドの叫びが、外の部活の声よりも体育館に響く。かせんが上手い事先生に頼み、体育館を押さえたのだ 特研の三人は、くろぐだの道中を撮影する事を前提に協力をしたのだ。しかも三人だけではなく、特研のスタッフを添えて…である

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 26 特研スタッフ達は、事細かに出るリカルドの指示に的確に従う。そんな様子を、呆然と見ている二人 「…なぁ、規模は小さくするんじゃ…？」 「…そのつもり…だったんだけど…」 しかし二人の前に積み上がる大道具やセットは、どう考えても学校一個分程になる。あり過ぎだ

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 27 「はい、二人共」 そんな二人に、ヒトシは何やらスーツを渡す。そのマスクは、巧妙に出来た怪物のそれだった 「脅かし役だろ？あっちでルロイがアクター指導してるから受けといで」 「サイズ…何時の間に測ったんですね…」 かせんは怪物の手を自分に嵌めながらそう言った

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 28 「ま、それが出来なきゃスーツ制作なんて出来ないよ」 そう清々しく言い切るヒトシの手にも、同じ様な怪物スーツがあった 「はんちょ～君！脅かすなら大きく動かさなきゃ！それからかせん君は、もっとしっかりアクションする！」 ルロイは言う 「は、はい！」 「ひぃ…！」

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 29 ルロイのアクター指導は、予想を遥かに越える程厳しかった。しかも毎日である。かせんは直ぐに、彼ら三人を仲間にした事を後悔した しかし、それ以上に… 「…青春、だなぁ…」 「…ん？まぁな…」 夕暮れの中、どの部活も居なくなった校舎にセットや大道具が運び込まれる

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 30 それを体育館の窓から見るかせんは、はんちょ～に呟いた。二人はその手に珈琲缶を持ち、マスクを横に置いたままである 「一週間。長がった様な…短かった様な…」 「でも、楽しかったろ？」 そう言うはんちょ～に、かせんは楽しげに返した。はんちょ～も笑顔で頷く

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 31 一週間の間、彼らは常に肝試しの事しか考えて無かった。それは、二人にとっても初めての事だった そして特に理由の無い笑いが漏れ…二人は、徐々に迫る宵闇を眺める 「さ、今夜の為に仮眠するか！」 そうかせんに言って…はんちょ～と拳を合わせた 事件の事など、忘れていた

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 32 夏休みの思い出作りの為に、一週間も本気で予行練習…いや～、青春だねぇ… それに、少なからず二人は恐怖を忘れられた。残すは二人。さぁ、今度はその二人が楽しめるのか… それは次回だ。チャオ！