くろぐだの奇妙な冒険 第５巻 ～進化するスタンド～

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 第十五話「進化するスタンド」 1 「で、これが完成形か」 「は、はい」 SPW工業相川工場の車両格納庫。そこに日向寺と、パーカーを着た男の姿があった。二人の前には一台のMTBが置かれている 「TRCS-2020A…です。一応ロールアウトと言うことで…」 そう言って、とある物を渡す

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#くろくだの奇妙な冒険 2 それは特殊警棒の様な形をしていた。しかし柄の所にスロットルが付いており… 「あの、これが鍵…です」 そう言って、それをハンドルに着けた。すると、コンソールに光が入る 「えっと…ご要望通りに作ったので、かなり暴れ馬ですが…」 「いや、構わない」 日向寺は言った

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#くろくだの奇妙な冒険 3 「元より、私の設計だ。じゃじゃ馬になるのも予想通りだよ」 そう言い、日向寺はスロットルを捻る。エンジンが唸りを上げ、格納庫に響き渡った 「あ、後これ…」 男は更に、小さな弾薬箱を渡す 「俺のスタンドで作った特殊弾薬です。スタンドに多分効果があるかと…」

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#くろくだの奇妙な冒険 4 「ほぅ」 日向寺はそれを受け取り、中身を確認した 「サイズは12ケージ。ショットガン等で使える…と思います。その…急いで作ったので、量産は出来ませんでしたが…」 日向寺はそれを聞きながら、AA-12のマガジンへ詰め込む。そんな日向寺を見、男は不安げに聞いた

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#くろくだの奇妙な冒険 5 「日向寺さん…その…」 「なんだい？」 日向寺は男の方を見る。男の顔は、少し不安が浮かんでいた 「もしかして…スタンド使い同士の戦争とか…起こるんですか…？」 「もう起こってるよ」 そう言う日向寺は、マテバの弾倉をチェックしている。六発の弾丸は全て正常だ

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#くろくだの奇妙な冒険 6 「それ所か、今このＴ市は世界の命運を握っていると言っても過言じゃない」 「そ、そんな…」 シリンダーを戻し、回転させてジャケット下のショルダーホルスターに仕舞う 「…戦いたくなければ、此処に居れば良い。だがね」 日向寺はそう言って、ヘルメット越しに男の方を見た

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#くろくだの奇妙な冒険 7 「いずれ、この街が全て戦場になる。それまでに、ここから逃げる算段を付けた方が良い」 バイクスタンドを蹴り、ゲートが開くのを待つ 「じゃ、コリス君に宜しく言ってくれ」 そう言い、日向寺は走り出した その頃…

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#くろくだの奇妙な冒険 8 「いや～、本当に映画のチケットをくれるなんてね。やっぱり持つべきものは身近な原作者だよ」 「いやそれはどうだ」 かせんの呟きに、はんちょ～が突っ込む。そしてかせんは、珍しく同行したフニコロの方を向いて聞いた 「フニ先輩が来てくれるなんて珍しいじゃないですか」

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#くろくだの奇妙な冒険 9 そう。今日はR.S.C.が珍しく全員揃っているのである。それは日向寺が四枚チケットを送ったからで… 「ふぁぁ…まぁね…」 眠たげに欠伸をしたフニコロ。そんな三人を見、一番後ろにいたくろぐだは笑顔になった。学校以外で全員が揃うのは今回が初めて。なので純粋に楽しいのだ

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#くろくだの奇妙な冒険 10 と、そんなくろぐだの視界に一匹の黒猫が横切る。少し興味の沸いたくろぐだは、そんな黒猫の後を追って路地に入ってしまった 「猫さ～ん、出ておいで～」 そう言って路地を見渡すくろぐだ。と、そんなくろぐだに声が掛かった 「お姉さん、僕のスタンドが見えるの…？」

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#くろくだの奇妙な冒険 11 「ふぇ！？」 猫を探そうとにゃんにゃん言っていたくろぐだは、そう声を掛けられて慌てる。と、後ろに少年が一人立っていた その少年の足元に、さっきの黒猫がいる。と、くろぐだはさっきの言葉に気付いた 「え…じゃあ君も…」 「お姉さんもスタンド使いなんだ。へぇ～」

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#くろくだの奇妙な冒険 12 くろぐだが言うより先に、少年はそう言って猫を抱き上げた。と、その猫は少年に吸い込まれる様にして消えた くろぐだが驚いていると、少年は再びスタンドを出して話し出す 「僕のスタンドはね、お姉さん。黒猫を見て、《思ったこと》が現実になるんだ」 「思ったこと…？」

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#くろくだの奇妙な冒険 13 「例えば、黒猫が横切るのは不幸の前触れ…って思うと、その人はその日一日は不幸なんだよ。お姉さんはどう思った？」 「えっと…可愛いなって」 そうくろぐだが答えると、少年は少し驚く。そして… 「お姉さん、変わっているって言われない？」 「？」 くろぐだは首を傾げた

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#くろくだの奇妙な冒険 14 「痛ッ」 と、右手に何か痛みを感じるくろぐだ。見ると右手の甲に紅い線が。何かで切ったようなその痕を見て、視界を前に戻すと… 「…あれ？」 さっきと変わらない…つまり、三人が楽しそうに歩いている風景だった 「あれ？あれ？」 くろぐだは辺りを見渡す

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#くろくだの奇妙な冒険 15 しかしさっき路地のあった所は何もなく、代わりに雑居ビルが所狭しと並んでいる 「…どした？」 そんなくろぐだを見かねて、フニコロが聞いてきた 「あ、あの…猫さんが…」 くろぐだは軽く説明する。と、フニコロはくろぐだの頭を撫でた 「ま、そんな事もある」 「え…？」

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#くろくだの奇妙な冒険 16 「ほら、二人共！映画館はこっちだよ！」 そんな二人にかせんは元気に声を掛ける。くろぐだは色々と不思議に思いつつ、かせん達の方に向かう と、気付いた。その右手の甲に紅い線が― 「楽しかった～！」 映画館を出て直ぐ、かせんはそう言ってグッズの入ったバッグを上げる

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#くろくだの奇妙な冒険 17 「日向寺先生、ありがとうございました…」 くろぐだもそう言い、同じくグッズの入ったバッグを持ったまま、此処にいない日向寺に頭を下げた 「お前ら買い過ぎだろ…」 一応パンフレットだけを買ったはんちょ～が、呆れ半分に呟く。と、同じく何も持っていないフニコロが言う

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#くろくだの奇妙な冒険 18 「…寝てる暇なかった」 珍しく起きていたフニコロは、もう一度大きく欠伸をする。それを聞いて、はんちょ～はもう一度突っ込んだ 「いや、映画館はお昼寝スペースじゃ無いですからね」 と、はんちょ～は気付く。映画館の前にある商店街の人混みが、普段とは少し違うことに

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#くろくだの奇妙な冒険 19 そこに居たのは、年齢も性別もバラバラな買い物客…ではなく、手に様々な銃を持った大学生位の集団だった。回りの買い物客達もザワザワとその集団を注目している 「映画の撮影…じゃ無さそうだね」 かせんの言葉を聞き、身構える四人。と、そんな集団の端に白い白衣が見えた

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#くろくだの奇妙な冒険 20 そして、その白衣が見えなくなると…集団は規則正しく、一斉に銃を撃ち始めた 「隠れて！」 フニコロが叫び、自らのスタンドを盾にする。なんとかそれに隠れる三人。しかし回りの買い物客には容赦無く鉛玉の雨が降る 「おいおいマジかよ…ッ！」 「生憎マジだ…！」

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#くろくだの奇妙な冒険 21 銃弾が商店街を蹂躙するのを見ながら、かせんとはんちょ～は叫ぶ。フニコロはくろぐだを抱き寄せ、身を低くしていた 「…師匠…！」 アーケードに銃声と悲鳴、怒号が反響する。全てを貫き、叩き潰し、破壊する凶弾。それらは、日常を非日常に塗り替えるのには最適であろう

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#くろくだの奇妙な冒険 22 暫くし、マガジンが空になった者から銃声が止む。全員が撃ち終えると、それぞれがリロードを始める 「反撃なら！」 「今！」 フニコロがかせんに次いで叫び、スタンドの大剣を振り上げて《斬った》。途端に全員がマガジンを落とし、急いで替えのマガジンの探して蠢く

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#くろくだの奇妙な冒険 23 「今、マガジンへの興味を斬った！暫くは射撃不可の筈！」 「了解！」 そう言って、かせんはロケットを集団の足元に撃ち込んだ。爆破の威力は小さいが、舞い上がる噴煙で全員の視界が無くなる 「はんちょ～とかせんは、まだ助けられる人の救出！ASITが来るまでだから！」

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#くろくだの奇妙な冒険 24 フニコロの指示に、頷いて答える二人。そしてフニコロは、小さく震えるくろぐだに聞いた 「くろぐだちゃん。貴方は戦える？それとも無理？」 くろぐだの目線の先。それは、さっきまで人間だったモノの破片。歪に歪んだそれは、子供用の靴で― 「くろぐだちゃん！」