くろぐだの奇妙な冒険 第２巻 ～タイキョバード（太虚鳥）～

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 第四話「タイキョバード（太虚鳥）」 1 宵闇の中。ゆっくりと歩を進める日向寺。規則的に鳴る杖の音に合わせ、目的のアパートの一室に近付いていく と、日向寺の目の前に鳥の形のスタンドが現れた。それはトーテムポールの様なデザインをしており、日向寺をじっと見つめている

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#くろくだの奇妙な冒険 2 「悪いね。出迎えとは」 日向寺がそう言うと、鳥のスタンドはアパートの一室に吸い込まれて行った。それを見た日向寺は、その部屋のドアを開ける 「ようこそ、皐月」 中に入ると、目の前に一人の男が居た。その頭にはヘルメットの様な物が着いており、後ろに繋がっている

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#くろくだの奇妙な冒険 3 それは、大きな箱だった。所謂スーパーコンピューターの一種であり、実はこのアパート全体がそれで埋め尽くされている 「私の予想より、少し遅かったね。と言う事は、《彼ら》と会っていたのかな？」 そう男が言うと、日向寺は肩を竦めた。それは肯定を意味する

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#くろくだの奇妙な冒険 4 「まぁ、座りなよ」 男がそう言い、卓袱台を挟んだ所を指す。そこには既にお茶と座布団が用意されていた 「…スカロ君の件、助かったよ。彼は何時リスタートしても、必ず別の場所から現れるからね」 日向寺が座りながら言うと、男は笑った 「はは。彼はほら、用心深いからさ」

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#くろくだの奇妙な冒険 5 それから、卓袱台の上に折り畳み式の将棋盤を載せる。日向寺は無言で、駒を並べ始めた パチリ 静かな部屋に、駒とスパコンの音だけが響く。と、不意に男が口を開いた 「…君は、何回目なんだっけ？」 「318回目だよ。我ながら、良く途中で止めなかったものだ」 パチリ

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#くろくだの奇妙な冒険 6 日向寺の返答に、男は納得した様に頷いた 「成る程ね。道理で手際が良い訳だ」 パチリ 「そうでもないさ。もう少し効率良く、色々な手配が出来た筈だと今でも思うよ」 パチリ 日向寺はそう自嘲気味に笑う。だが、男は顎を擦りながら呟いた 「そうでもないだろうさ」 パチリ

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#くろくだの奇妙な冒険 7 「実際、県警のASIT創設は私の予想よりも速かった。それに、不確定要素の排除も素早いものだ。警戒すら出来なかった筈さ」 パチリ ASIT。県警が創設した、対スタンド使いの為の特殊部隊。この男の居る部屋も、彼らが作ったものだ 「そして、私もその対象。だろ？」 パチリ

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#くろくだの奇妙な冒険 8 「…私が来た時点で、逃げるつもりは無かったのかい？」 そう日向寺が言うと、男は一瞬手を止める。そして、窓を指差した 「スナイパーが居るだろ？端から逃げられる部屋じゃない。鳥籠なんだよ」 パチリ 男の言葉は事実だ。故に日向寺は薄く笑って駒を打つ パチリ

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#くろくだの奇妙な冒険 9 「悪いね。だが、未来予知の能力は《後ろ向き同盟》に渡ってはいけないものだからね」 パチリ 「だと思ったさ」 男は少し悩んだ後、駒を置いて話を続ける パチリ 「だが不思議なものだね、皐月。私は君に殺される未来を見たが、何も怖くないんだ。寧ろ清々しさすらあるよ」

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#くろくだの奇妙な冒険 10 日向寺はそれを聞き、少し驚いた表情を見せた。それに満足したのか、男は楽しげに笑う 「私が死ぬことで、バッド・デイ攻略の道が開くんだ。それに、それが世界の為と別れば怖くもない。そう言う覚悟が出来たからね」 「覚悟…か」 パチリ 日向寺は一手打つ

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#くろくだの奇妙な冒険 11 男の頭に、鳥型のスタンドがとまる。男はそれを慈しむ様に撫で、一手 パチリ 「君の持っている、その矢。何と無くだが、意思がある気がするんだ」 パチリ 「矢は、覚悟が出来た者を…そう言う素質があるものを選ぶ」 パチリ 「だから…君が選んだ少女。彼女は《当たり》だ」

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#くろくだの奇妙な冒険 12 「当たりねぇ…」 パチリ 日向寺の一手が意外だったのか、男の手が一瞬止まる 「…兎に角。その矢が鍵になる。矢が再び彼女を選んだ時、バッド・デイ攻略は更に進む筈さ」 パチリ 「まぁ兎に角。君が欲しい情報は、全てココに入っているよ」 そう言って、男はスパコンを指す

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#くろくだの奇妙な冒険 13 「私のスタンド「タイキョバード」の弱点は、人間の頭では容量不足な点だ。君はそれを、コイツで解決した」 パチリ 「応急措置だがね」 パチリ 日向寺がそう言って、止めの一手を打った。男は驚き…手にしていた駒を投げる 「…驚いた。五手先で必ず私が積む。凄いや」

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#くろくだの奇妙な冒険 14 「…193回。私が今まで君と将棋をした数だ」 「それだけやれば、癖やパターンも把握出来る…って訳か」 男の台詞に日向寺は頷く。男は楽しそうに笑って、タイキョバードを空に放した 「さ、私はそろそろ彼方に行こうかな」 そう言って、男はタブレット端末を日向寺に差し出す

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#くろくだの奇妙な冒険 15 「本来、祝福は君の仕事なんだろうけど…今回は私がやらして貰うよ」 そう言いながら、男は日向寺の額の前に掌を差し出した 「グレートスピリットの加護のあらんことを…319回目の世界で会おう、《ひなたでら》皐月」 その瞬間、男の身体を黒い物が貫いた。影だ

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#くろくだの奇妙な冒険 16 「わざわざ私のスタンドで死ぬとはね…」 日向寺はそう言い、消え行くタイキョバードを外に逃がした。鳥籠から解放されたタイキョバードは、夜空に吸い込まれる様に消える 「…しかし、世界の為に殉じるか…」 日向寺は左袖から、欠けた矢を取り出した。光を鈍く反射する

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#くろくだの奇妙な冒険 17 「そんな彼でも、黄金の精神の持ち主にはならなかった…」 そう呟いて、矢を指でクルクルと回す。それは何処を指すべきか分からないコンパスの様に、ただフラフラとしていた 「果たして、本当に黄金の精神なんてものはあるのかい？矢よ」 その問いに、答えるものは無かった

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#くろくだの奇妙な冒険 18 こうして、私は予測の存在しない道を進むことになった だが、全く道が無い訳じゃない。暗闇の中だからこそ、見える道は光に照らされている訳だ 兎に角。これからはこのタブレットに書かれた道を進むとしよう。彼が残した希望だからね では、今日はこの辺で

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 T市組織解説 R.S.C.：レスキュー・スタンド・クラブの略 一条学園の生徒であるか先輩が立ち上げ、現在くろぐだちゃん含め四人 基本はスタンドを使っての人助けとかボランティア…だが、いっつもはんちょ～君がこき使われる

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#くろくだの奇妙な冒険 Ｔ市組織解説 日向寺組：さっちゃんがバッド・デイ含めた後ろ向き同盟攻略の為のチーム。現時点で一番の戦力を誇る 日向寺を筆頭にしたスタンド使い達の集まりで、Ｔ市の至るところにメンバーが居る

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 Ｔ市組織解説 ASIT：アシット。県警がさっちゃんとお話して作った超法規的集団 Ｓ県杜王町の連続失踪事件や、イタリアでのマフィアの抗争、そしてカルフォルニアでの事件を元に作られている 装備は自衛隊からの横流しなので、普通にアサルトやロケランを所持している

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#くろくだの奇妙な冒険 Ｔ市組織解説 後ろ向き同盟：危険なスタンド使い達の同盟。Ｔ市で好き勝手に暴れており、ASIT創設の理由にもなっている 互いに不可侵且つ攻撃しない事を唯一のルールとし、破ると高確率でバッド・デイに殺される 今のところ、R.S.Cとの関わりはない

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#くろくだの奇妙な冒険 第五話「海を見に行こう！」 1 「ほら、これがＴ市が誇る日本最大の造船所、マゴニア重工加賀美湾造船所だ！」 そう言って、かせんは驚くくろぐだに説明した。そこは最早、小さな街と言っても過言ではない程の施設である 「別にお前が誇ることは無いけどな」