くろぐだの奇妙な冒険 第２巻 ～タイキョバード（太虚鳥）～

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 3 ベアは、悪戯好きな愉快な奴だった。こっそり落し穴を掘ったり、花瓶を幾つも積み上げたり…でも、その度に僕のせいにされた 僕は悪くない そう何度も言っても、誰も信じてなんかくれなかった。後で分かったのは、スタンドはスタンド使いにしか見えないこと。でも僕は悪くない

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#くろくだの奇妙な冒険 4 僕が怒られる度、ベアは僕を抱き締めてくれた。だから僕も、ベアを何時も抱き締めていた 中学生になり、高校生になり…それでも、僕はベアと一緒だった。僕のスタンドなんだから、一緒に居て当たり前だけど… 何時になっても、ベアのした事は僕のせいにされた 僕は悪くない

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#くろくだの奇妙な冒険 5 大学生になったある日、それは起こった。バイトの休憩中、僕の視界を変なものが横切ったんだ それは…矢。動く矢だった。僕は…と言うより、ベアはそれに興味が沸いたらしい。でも、ベアが追いかければ追い掛ける程、その矢は逃げていく 僕も慌てて、ベアの後を追ってしまった

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#くろくだの奇妙な冒険 6 不意に、僕は転んでしまった。その拍子に、矢とベアを押し潰してしまう 何とか立ち上がった時、矢もベアも消えていた。僕の愉快な、唯一の友達が消えた。最悪の日だった ただ、矢の消えた辺り。そこに矢の欠片が見えた気がした。壊れたのかもしれない。でも僕は悪くない

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#くろくだの奇妙な冒険 7 次の日、憂鬱な気分でバイトに行くと…最悪の客が来た。何時もクレームを入れてくる癖に、商品を殆ど買わずに買える奴 ソイツが僕を見つけ、何時もの様にクレームを入れてきた。僕が作った訳でも、選んだ訳でもない商品のクレーム 僕は悪くない その時だった。ソイツが消えた

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#くろくだの奇妙な冒険 8 ホンの一瞬だった。茶色くてふはふはな、見覚えのある手がソイツを殴って…ソイツは、ただの血と白いものの塊に変わった。その瞬間、僕は救われた気がしたんだ 僕の友達。大切なベアが帰ってきた。そう思った時、大きくなったベアの腕が僕を抱き上げた 何時もやっていた事だ

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#くろくだの奇妙な冒険 9 そしてベアは僕を抱き上げたまま、ゆっくりと店を巡った。嫌いな上司、イヤな先輩、そして僕を見て悲鳴をあげる客。皆ベアが潰してくれた 人殺し 誰かがそう叫んだ。でも僕が殺している訳じゃない。僕は悪くない 暫くベアが暴れると、店は静かになった。サイレンが聞こえる

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#くろくだの奇妙な冒険 10 逃げなきゃ。そう思った時、ベアは僕を抱いたまま、パトカーの車列を吹き飛ばして走り出した 楽しかった。ベアが帰って来たこと。嫌なものがなくなった事。そして、自由になった事 でも。僕は考えた。ベアは姿を変えた。なら、名前を変えてあげないと 「バッド・デイ」

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#くろくだの奇妙な冒険 11 最悪な日の応援歌。そんなタイトルの歌があった。今日は僕にとって、最悪な日々を壊した記念日。だから、少し妙だけどバッド・デイって名前にした 喜んでいるかどうかは分からない。下から見上げたバッド・デイの表情はなんとも分からないから。でも、僕は幸せだ

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#くろくだの奇妙な冒険 12 「ってな訳でよぉ…あのクソッタレなポリ公共にピネの奴はパクられちまったんだ！ギャハハハハ！」 建設途中で作業の止まった遊園地。そのメリーゴーランドの上で、真っ黒なゴスロリを来た女がそう笑った 「全く、品が無い…」 眼鏡と白衣が特徴的な男が、眉を潜めてそう言う

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#くろくだの奇妙な冒険 13 「でもよぉ、はむらび！オレ達を捕まえる所か、探すことすら出来ねぇポンコツ共に、ピネを殺れるとは思えねぇだろ！？あぁ？」 ゴスロリ女はそう言って、また下品に笑う。それを聞いたはむらびと呼ばれた白衣の男は、眼鏡を上げて呆れた様に溜め息を付く 「烏女風情が…！」

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#くろくだの奇妙な冒険 14 それが聞こえたのか、ゴスロリ女ははむらびに顔を向ける 「烏上等！死体やゴミを漁るのは得意だからなぁ！？」 「まぁまぁ、二人とも落ち着いてよ」 ベンチに座り、洋書を読んでいた男がそう二人に言った。その顔は笑顔だが…どこか凄みがある 「なんだよ、ブシドー」

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#くろくだの奇妙な冒険 15 烏はそうブシドーと読んだ男の方を見る。しかし、さっきまでの調子は無い 「―人生は歩く影法師。憐れな役者だ。舞台の上で大見得を切っても、出番が終われば消えてしまう」 「…マクベスか」 ブシドーの言葉を聞き、はむらびは呟く。そして煙草に火を付け、紫煙を燻らせた

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#くろくだの奇妙な冒険 16 「どゆいみ？」 烏はキョトンと首を傾げ、メリーゴーランドから飛び降りた。ふわりと着々をしながらも、その足取りは所か危うい 「…つまり、ピネは役目を終えた。だから消えても構わない。違うか？」 はむらびが煙と共にブシドーに聞くと、ブシドーは大きく首を縦に振った

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#くろくだの奇妙な冒険 17 「彼には悪いけど、今回の件でASITが僕達の敵だって分かったんだ。それだけでも十分だろ？」 「んな事、とうの昔に―」 烏は途中まで言いかけ、口を噤む。それを見たはむらびは、少し愉悦に浸りながら続けた 「…で、貴様が新しい参加者と言う訳だな？」 「Yes I am」

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#くろくだの奇妙な冒険 18 はむらびが煙草で指した先。そこには、宵闇に紛れるほど黒いダブルのスーツを着た男が一人。銀の髪を撫で付け、ニコニコとして現れた 「私ソルティー・ベリー言います。ヨロシクです、盟主ドノ」 外国人なのだろうその男は、慇懃無礼にブシドーへ頭を下げる 「うん、宜しく」

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#くろくだの奇妙な冒険 19 ブシドーはニコニコしながら、背中に大きなスタンドを出した。頭が火鉢の形をしている以外、特徴の無いテディベア。その頭の炎は、小さく今にも消えそうであった 「…クリア、だな」 はむらびはそう言って、煙草を捨てる。が、気付いて踏んで火を消した 「おめでとう」

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#くろくだの奇妙な冒険 20 「オメデトー！ギャハハ！」 烏もソルティーを見、手を叩いて笑う。スタンドを仕舞ったブシドーは、一枚の写真を取り出した 「この男を消してくれないかな？僕達後ろ向き同盟の敵なんだ」 「Si,mio Signore《畏まりました、我が主》…」 そう言って、ソルティーは姿を消した