くろぐだの奇妙な冒険 第2巻 ~タイキョバード(太虚鳥)~

作者:日向寺皐月(@satuki_hyugaji)さん 「#自分のスタンドを考えてみるタグ」から始まったフォロワースタンド使い化企画連載小説(三次創作) 第2巻分まとめ https://togetter.com/li/1608662 ←1巻 3巻→ https://togetter.com/li/1608751
3
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 2 はんちょ~の突っ込みも虚しく、かせんのエンジンは止まらない どうして彼ら三人はこんな所に居るのか。それは、二日前に遡る… 「どう?この街も慣れた?」 放課後。R.S.C.が普段から占拠している空き教室で、かせんは本を読むくろぐだに聞いた 「そうですね…」

2020-09-23 22:17:40
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 3 くろぐだは持っていた本を、山になっている同じタイトルの本の上に積んだ。日向寺に渡された全巻を、やっと読み終えたのだ 「まだ近所のスーパーとかコンビニしか行った事が無くて…」 「よし、それじゃあツアーだツアー!」 くろぐだの返事に食い気味でかせんは返す

2020-09-23 22:21:18
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 4 しかし、フニコロはソファから身体を起こす事無く 「私メンドイからパス」 とだけ言った。となれば、残るは… 「…何だよ」 二人の視線を感じたはんちょ~は、若干引き気味に言う 「行くよね?」 「いや俺は」 「行くよね?」 「いやお」 「行くよね?」 「…近いわッ!」

2020-09-23 22:24:52
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 5 段々詰め寄るかせんに突っ込みを入れたはんちょ~は、くろぐだの視線から逃れる様に後ろを向いた 「兎に角。俺だって予定くらいはあるし、忙しい事だって―」 「とか言って来てくれるんだから、はんちょ~も大概ツンデレだよね」 「うるせぇ」 かせんの顔にハンカチを投げた

2020-09-23 22:27:59
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 6 しかし当のかせんは意に返さず、くろぐだの方を見て更に説明する 「んで、あれが南極重工の造船所。あっちがSMARTBRAINと鴻上財団の共同で、あれが愛染テックので…」 「…もしかして、殆ど造船所ですか?」 くろぐだがそう聞くと、かせんは嬉しそうに頷いた

2020-09-23 22:32:16
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 7 「その通り!この辺り内海で波が穏やかだからさ、大分昔から造船で有名だったみたいだよ?」 かせんの説明通り、この加賀美湾は前に轟半島がある。その為古文書の類いにも名前がある程だ 「凄い…!」 そんな説明を聞き、くろぐだの眼はキラキラと輝いていた

2020-09-23 22:36:48
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 8 はんちょ~はそんなくろぐだの表情を見、かせんが何故連れ出したのか理解した くろぐだは高校の為に、一人暮らしを始めている。それは親元を離れ、見知らぬ街に一人きりと言う事。大学生にもなればいざ知らず、くろぐだはまだ高校一年生。寂しくなって当然である

2020-09-23 22:39:40
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 9 (彼奴、そう言う所は気が回るんだよなぁ…) はんちょ~はそう思いながら、二人の後を着いていく。建ち並ぶ倉庫に作業車、巨大なクレーンの数々。自分では見慣れたこの景色も、誰かにとっては新鮮なものに映るのだ と、はんちょ~の視界に妙な車が横切った。作業車ではある

2020-09-23 22:44:07
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 10 だが。普通の作業車であれば、積み荷が有ると黄色いランプを回して注意する。なのに横切ったそれは、積み荷が満載してあるのにランプが付いていなかったのだ 「…気になるなぁ…」 先を行く二人からそっと離れ、自身のスタンドを出した 「ファスト・アンド・フュリオス!」

2020-09-23 22:47:21
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 11 出てきたスタンドは、機械で出来た骸骨だった。頭にはV8と飾られ、背中には八本のパイプが炎を上げる。だが下半身はなく、変わりにはんちょ~の身体から直に生えていた 「V8!」 そう言って、はんちょ~は横の木枠を殴った。途端にそれは金属のパーツに変化する

2020-09-23 22:51:47
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 12 そして、その金属片は組み合わさって行く。それは小型のバイクに変わり… 「…本当はV8が良かったんだけどな」 はんちょ~は跨がり、静かに走らせた 暫く不審な作業車を追っていると、不意に一つの空き倉庫に入って行った。はんちょ~は手前でバイクを停め、そっと中を覗く

2020-09-23 22:56:09
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 13 中からは何も聞こえない。はんちょ~は更に足を進ませ… 「何してんの?」 「うっ…わ…」 後ろからかせんに声を掛けられ、慌てて口を閉じる。見ればくろぐだの左手にはあの大鎚があり… 「…追ってきたってか」 そうはんちょ~が言うと、かせんは滅茶苦茶良い笑顔でSUした

2020-09-23 23:00:08
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 14 「さっきの車、怪しかったもんな」 かせんはそう言い、自分も小さなロケットを出現させる。二人には、あの車の心当たりがあったのだ 「…やっぱり例の密輸か?」 はんちょ~の呟きに、かせんは頷く。最近県警が、麻薬の密売ルートを一つ潰したとニュースになったばかりだ

2020-09-23 23:05:03
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 15 「密輸犯ってどんな奴かな…?」 「何ワクワクしてんだよ…」 何故か愉しげなかせんに突っ込むはんちょ~。そして気付いた 「…くろぐだちゃんは?」 「…え?」 かせんは後ろを見る。さっきまでそこに居た筈のくろぐだの姿は無く、変わりに水溜まりが出来ていた 「探そう」

2020-09-23 23:08:21
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 16 かせんの台詞を聞き、はんちょ~も直ぐに頷く。が。そんなくろぐだは直ぐに見付かった。最悪の形で 「…!?」 「くろぐだちゃん!」 倉庫の反対側、海に面した辺りに…一人の男とスタンドの姿が。そのスタンドは水の塊を纏っており、その内の一つの中にくろぐだが居た

2020-09-23 23:11:33
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 17 くろぐだは苦しそうに藻掻いており、溺れ掛けている事は明白だ。と、二人に気付いた男が話し掛ける 「…探偵ごっこは御仕舞いかな?」 「お前…ッ!」 かせんは手にしたロケットを投げ付ける。しかしそれはスタンドに触れる前に、水の塊に取り込まれてしまった

2020-09-23 23:15:46
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 18 「君達もスタンド使いなのか…だが、ジ・オーシャンに攻撃は入らないよ」 男はそう言い、オーシャンと共に二人の方に走って来た 「回避!」 二人同時に反対に回避。がら空きの背中にロケットと金属片が飛ぶ。しかしそれも、驚くスピードで吸い込まれた 「甘い!」

2020-09-23 23:20:01
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 19 男は前転し、自身の足元まで延びた水溜まりに触れる 「捕まえろ!ジ・オーシャン!」 「!?」 はんちょ~は咄嗟に飛び上がり、小さな津波を回避した。だが、かせんはタイミングを逃して足を取られる 「うわっ!ちょ!」 かせんはロケットを用意して飛び立とうとした。しかし

2020-09-23 23:24:18
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 20 「あ、ロケットの燃料は水に弱いんだ。そもそも点火にナトリウムを入れなければもごもごもご」 かせんは何かを説明しながら、水の塊に飲み込まれて行く。やっと自分の状況に気付いたかせんだが、時既に遅し。直ぐ動かなくなる 「あの阿呆…ッ!」 はんちょ~は地面を殴った

2020-09-23 23:27:35
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 21 「さぁ、君もお友達の元においで」 男の言葉と同時に、水がはんちょ~に襲い掛かる。はんちょ~は回避するが、まだ水は追い縋って来た 「逃げても無駄だよ。ここは港だ。水は幾らでもある」 その言葉と共に、横の海から水柱がはんちょ~目掛けて降りかかった 「終わりだよ」

2020-09-23 23:31:16
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 22 水柱に飲まれるはんちょ~…だったが、突然それが吹き飛んだ 「な…!?」 はんちょ~の身体に、巨大なプロペラが付いていた。背中のパイフが炎を吹き上げ、プロペラが高速回転して水の塊を吹き飛ばした 「二人は返してもらうぜ…!」 そのままプロペラを更に強く回す

2020-09-23 23:34:51
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 23 「く…ッ!」 男は堪えようと足を踏ん張るが…濡れているので滑ってしまう。そして― 「うわぁっ!」 「吹き飛べよ!」 徐々に近付いたはんちょ~の風圧に負け、男は吹き飛ばされた。姿が見えなくなってから、プロペラを解除して水浸しの二人に近付く 「おい!二人とも―」

2020-09-23 23:38:24
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 24 はんちょ~が近寄ったその瞬間、水の奔流がはんちょ~を包んだ。その先には、ボロボロになった男とオーシャンが居る 「…ガキ風情が…ッ!」 更にもう一撃、水柱をはんちょ~の居た辺りに喰らわせた。水圧は鉄板すら貫くもので、男は勝ったと思っていた。声が聞こえるまでは

2020-09-23 23:42:08
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 25 「…感謝…するぜ…!」 水蒸気の中から、鐡の鎧を纏ったはんちょ~が表れる。ファスト・アンド・フュリオスはパーツさえあれば、身体に鎧を纏うことが出来るのだ。そして胸に付いているタイミングベルトが加速を始める 「俺のエンジンを冷却してくれてよぉ…ッ!」

2020-09-23 23:46:26
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 26 頭の上についた吸気口が蓋を開ける。そして、背中のパイプが火を吹いた 「俺のエンジンはV8だ!そんじょそこらのポンコツと一緒にすんじゃねぇ!」 加速。ただ走るだけなのに、男は回避する事が出来なかった。水を撃つが…止まらない 「水如きじゃ!俺は止まらねぇ!」

2020-09-23 23:50:49