チェルノブイリ救援中部メンバー中熊弘隆さんによる、南相馬放射能測定報告

ツイッターで公開された一連の南相馬放射能測定報告。 行政の話からでは決して浮き彫りになることのない南相馬の現実を、一人でも多くの方に知っていただきたいと思い、ツイート主である中熊弘隆さんの了承を得て、まとめを作成しました。 後半のまとめはこちら→ http://togetter.com/li/166461
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中熊 弘隆 @nakaguma3

52. 向かった先は、飯舘村方面。この時、猫を置き去りにしたことを悔やんでいる。自分たちがいない間に、外で沢山の放射能を浴びて、病気になるんじゃないかと心配しているのだ。携帯型測定器には、ホールボディーカウンターのような機能はない。でも、「測れない」とは言えない。

2011-07-13 16:01:56
中熊 弘隆 @nakaguma3

53. 僕は、自分のシンテックを猫に当て、「ほら、ピイーピイー鳴らないよ、大丈夫みたい」。シンテックは警告音を発しない。女の子は「良かった」と言って無邪気に笑った。それを見ていた低学年の男の子が、もう一匹の猫を抱いてきて、「この子も診て下さい」と言う。

2011-07-13 16:10:35
中熊 弘隆 @nakaguma3

54. 今度は、女性スタッフのKさんが電源を落としたままの測定器を猫に当て、「こっちも鳴らないわね」と言うと。その子も「良かった」と言って笑った。これ以上いると涙をこらえきれない。僕らは子ども達にさよならを言ってその場を後にした。

2011-07-13 16:17:56
中熊 弘隆 @nakaguma3

55. この子らは、ほぼ確実に3/15~16にかけて飯舘村周辺の山中で他の数千人乃至は数万人の南相馬市民とともに夜を明かしている。ある者は車中で、ある者は徒歩での移動途中、途方もない線量の放射性雨を浴びている。

2011-07-13 20:14:30
中熊 弘隆 @nakaguma3

56. そこは今でも400~500μSv/hというにわかには信じ難いほどの放射線を発するポイントが点在するこの世の地獄だ。放射性ヨウ素が最も元気な時期、市民の多くは避難場所として少なくとも3週間そこに留まったのだ。そして今、ここでこの環境で暮らしている。ペットの健康を心配しながら

2011-07-13 20:25:53
中熊 弘隆 @nakaguma3

57. 次に僕らが訪れた家は、更に深刻な状況だった。僕らが訪ねると初老の男性がロシア製の線量計を持って出てきた。若い息子さんも続いた。二人とも疲れ切った表情をしている。ご主人は、里帰りしてきた息子持参の線量計で自宅を測定したところ、異常に高い気がする。ちゃんと見てほしい、と言った

2011-07-13 21:37:33
中熊 弘隆 @nakaguma3

58. 僕らは、屋外から測定を始めた。しかし、男性は「2階の子ども部屋が異常に高い。何故かわからない。早く見て」と言うので、僕がその2階を測定することにした。そこは玄関先の広い土間の上に増設されたものだった。土間は庭より少し低くなっており、雨の日は雨水が浸入してきているようだ。

2011-07-13 21:59:18
中熊 弘隆 @nakaguma3

59. そこは異常な空間だった。2階なのに屋外の地表面より5~10倍も線量が高い。僕のポンコツシンテック君は部屋に入った瞬間から変調をきたしている。チェルノブイリで散々酷使されたと見えて、もうご老体の身なのだ。7μSv/hくらいまでは正確な数値を返すが、それを超えると悲鳴を上げる

2011-07-13 22:09:29
中熊 弘隆 @nakaguma3

60. 警告音は出さないが悲鳴は上げる。そして、10μSv/hを超えるとダウンする。ここの線量は彼には荷が重すぎた。正確な数値は出せないのを承知で部屋の中を測定した。空間線量が5μSv/h、窓際7以上、窓際カーテン周辺恐らく8以上、ベッドと窓との間にある衣類の山周辺恐らく10以上

2011-07-13 22:28:44
中熊 弘隆 @nakaguma3

61. 部屋の隅々が高レベルで汚染されている。「どうしてこんなに高いのか分からない」と、初老の男性は呆然とした表情で言う。この部屋の窓から外を見ると、窓の下数センチの所に1階の屋根があった。鉄板製だが塗料は至る所ではがれ、地肌が露出し錆びている。

2011-07-13 23:17:29
中熊 弘隆 @nakaguma3

61. 窓は西向き、一階の屋根の向こうには林が見える。その先は飯舘村方面の山並みが続く。僕は、当てにならないポンコツ君を片手に部屋の中で考えた。これほどの汚染は、余程の悪条件が重なったとしか考えられない。そこで得た一つの結論は、「この部屋は二度、高レベルで汚染された」

2011-07-14 09:51:03
中熊 弘隆 @nakaguma3

62. 三号機爆発を間近に見た市民達はほとんどパニック状態だったらしい。当時はまだ雪も舞うくらい寒い時期で、ほとんどの家の窓は閉じられていたはずだ。住民達は玄関の戸締まりだけを確認して避難したのだろう。この部屋は離れとなっており、親は子ども部屋の窓の戸締まりまでは気が回らなかった

2011-07-14 10:12:02
中熊 弘隆 @nakaguma3

63. ところがこの部屋の恐らく中学生と思われる子どもは、何かの理由で窓を開けていた。多分カーテンも。原発から飛来した放射能は、飯舘村周辺の山中で雨とともに大量に地表に落ちたことは間違いない。そして一部は南相馬市にも流れ込んだ。そしてこの時の気象は濃霧だったのではないか。

2011-07-14 10:35:05
中熊 弘隆 @nakaguma3

64. 濃霧に吸着した高レベルの放射能は、ゆっくりと山を下り南相馬を襲った。そして、遮る物のない部屋の窓からも屋内に侵入し、部屋の隅々を汚染したのだ。当時の気象条件に関する資料を僕は持ち合わせていないが、窓から離れた部屋の隅でも線量が高いのは、濃霧であったことを裏付けていると思う

2011-07-14 10:45:21
中熊 弘隆 @nakaguma3

65. 二回目の高レベル汚染は、住民が避難先から戻った後に起こったはずだ。住民が帰宅後、この地方には何度も大雨が降っている。「土砂降りの雨が何度も降った。」と、区長さんは言っていた。当時の家屋の屋根には未だ高レベルの放射能が積もった状態だったはず。

2011-07-14 11:37:23
中熊 弘隆 @nakaguma3

66. 通常、屋根には雨樋があり、雨で洗い流された屋根の放射能はそこを伝わり集められて排出口へと導かれる。だからその付近の線量は、周囲とは比較にならないほど高いのだ。しかし、この部屋の西向き部分には雨樋がない。何故か。すぐ下に一階の屋根があり、雨樋は必要ないのだ。

2011-07-14 11:45:27
中熊 弘隆 @nakaguma3

67. その時学校が既に再開されていたかは定かではないが、朝、子どもは窓を開け放したまま部屋を出た。その後、「土砂降りの雨」が降り、二階の屋根に堆積していた大量の放射性物質が一気に流れだし、一階の屋根に当たり、細かな飛沫と鳴って室内に侵入し、窓際のカーテンやその周辺を汚染した。

2011-07-14 18:01:00
中熊 弘隆 @nakaguma3

68. そして、一階屋根の鉄板とこの部屋の壁の境の隙間からも、かなりの量の雨水が室内に侵入した。窓際の異常な線量はそれを物語っているように思えた。勿論、これは僕のかなり大胆な推論に過ぎない。しかし、この線量を説明するには、それなりの説得力のあるものにも思えた。

2011-07-14 18:14:38
中熊 弘隆 @nakaguma3

69. 既にこの部屋の住人だった子どもは他の部屋に移したとのことだったので、僕は自分の考えを男性に説明したあと、「この部屋は立ち入り禁止にした方が良いです」と言った。男性は、深くため息をつき、「この部屋はもう使わない」と言った。その後彼は庭に下りると、「変な場所がある」と言った。

2011-07-14 18:34:54
中熊 弘隆 @nakaguma3

南相馬市に於ける放射線測定 70. 案内されたのは大きな梅の木の下。「上も下も、どこを測っても高い。何故だか分からない」と言う。測定してみると、地表面が1.5、地上1mで1.4前後と、確かに空間で下がらない。奥の茂み部分もほとんど上も下も一定の線量を出している。何故だろう。

2011-07-15 10:39:15
中熊 弘隆 @nakaguma3

71. 一緒に計測したスタッフのK氏が、「こっちからも出てるんじゃないか?」と、僕の頭の上を指さした。頭上には梅の大木から伸びた幾つもの枝に新緑の若葉が茂っている。確かに葉から放射線が出ているのであれば、この状況は説明できる。しかし、腑に落ちない点がある。

2011-07-15 10:40:38
中熊 弘隆 @nakaguma3

72. 放射能が大量に飛散した当時は、まだ葉はなかったはず。根から吸収されたセシウムが葉に移行したのだろうか。しかし、それは考え難い。神谷氏によれば、チェルノブイリ原発周辺の土壌を汚染しているセシウムは、25年たった今でも地表から20㎝以上浸透していないらしい。

2011-07-15 10:41:31
中熊 弘隆 @nakaguma3

73. つまり、土壌の表面から「セシウムはほとんど動かない 」のだ。事故から間のない現在は、恐らく奴らは地表面を薄く膜のように覆っている状態なのだと思われる。雨水と一緒にどんどん土の中に染み込んでいくように考えられがちだが、そうはならない。広葉樹の根は土中深くから水を吸い上げる。

2011-07-15 10:42:03
中熊 弘隆 @nakaguma3

74. ならば、奴らはどこから来たのだろう?「静岡の茶と同じようなことが起こったか?」僕らはほぼ同時に同じ推論にたどり着いた。つまりこうだ。濃霧乃至は霧雨状の細かな水滴に付着したセシウムは、梅の木の幹や枝の表面の割れ目奥まで届き、そこから水とともに更に奥へと浸透した。

2011-07-15 10:42:39
中熊 弘隆 @nakaguma3

75. セシウムに触れた梅の木は、それをカリウムと間違え新芽へとせっせと運んだ。静岡の茶は、古い葉についたセシウムが新芽に運ばれたが、ここでは幹や枝から運ばれたのではないか、そう僕らは考えた。初日最初の測定ポイントで感じた不可解も、これで説明できそうだ。

2011-07-15 10:43:22
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