キタノ・アンダーグラウンド #3

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【もうすぐニンジャスレイヤー連載だ】 ・舞台は2050年頃のネオサイタマ、近未来 ・ネットとかヘッドマウントディスプレイとかサイボーグとかサイバーパンク的なものはだいたい全部ある ・国家は崩壊し、暗黒メガコーポ等が寄り合いで社会インフラを提供・維持している ・ニンジャは超人的に強い

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【ニンジャスレイヤーにおける「カラテ」という単語の三種類】 １：空手 ２：格闘技の総称。「アーツ」に近い言葉 ３：神秘的な身体エネルギー。ここでの説明は省略する。読んでほしい

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【プレシーズン４】 ・時系列は今後始まるシーズン４の手前 ・ネオサイタマを舞台にした、ある程度日常的なエピソード ・一話完結型なので、そのまま読める

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（これまでのあらすじ） ピザタキは立ち退きの危機に瀕していた。キタノスクエアビルの賃料が２倍になっていたのだ。賃上げの影響で家を追われた市民は地下街に溢れ、ドラッグを摂取してゾンビーのような無気力状態でさまよう。しかも火炎放射器で殺戮されるのだ。これは悪質なジアゲである。

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（これまでのあらすじ） タキは持ち前の情報屋の力量を総動員し、このジアゲ陰謀がキタノスクエアビルのみならず近隣エリアに意図をもって展開している事を突き止めた。しかも６次請け構造だ。ケチなビジネスではない！陰謀の中心にいたカワザCEOは、恐るべきニンジャだったのだ！

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プレシーズン４ 【キタノ・アンダーグラウンド】#3 pic.twitter.com/XC2S53LFTE

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「……まずは貴様だ。イバカミ＝サン」カワザCEOは中年個人事業主に残忍な眼差しを向けた。彼、イバカミはその眼差しに撃ち抜かれ、脂汗を垂らし、震え上がった。「アイエエ……」「ハンコの隠し場所を言うがいい。小賢しいぞ」「お、お許しください……」「許しを乞えと俺が言ったか？」「アイエッ」1

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「我が社は素晴らしい契約条件を付与した。つまり……貴様と貴様の家族の命は奪わないでやるという破格の契約だ。しかも別途、1万オムロまで与えると……。あのケチな金券ショップの不動産権利を譲り渡せば！それを貴様は……！」「生きていかれません！そう思ったのです」「何……？」 2

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「あの場所で私はずっとやってきました。先祖から譲られた物件です。先祖の誇りとあの金券ショップの賃料収入がなければ、家族を養えません……」「イヤーッ！」KRAASH！ショック・ヌンチャクが閃き、イバカミの椅子が破砕した。床に転がったイバカミの尻を更に打ち据えた。ヒュパン！「ンアーッ！」 3

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「ザッケンナコラー……」カワザCEOは低く呟いた。「なせば成る。なせば成るを知らんのか。１万オムロあれば、お前は人生をやり直せる。我が社がその機会を与えてやっているんだ。他の大家どもはそのあたりの機微をしっかりと理解した。それを貴様は……イヤーッ！」ヒュパン！「ンアーッ！」　4

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イバカミは痙攣し、失禁した。そのブザマなありさまを見下ろすカワザCEOは、しかし、乾いていた。彼は乾きを自覚した。昔の彼は取るに足らぬニュービーであり、実績もなく、債務者に暴力をふるう程度の事で快感に酔うことができた。今は違う。人間の器がレベルアップし……サクセスが足りぬのだ。　5

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「こんなつまらぬ事を俺に……イヤーッ！」ヒュパン！「ンアーッ！」「させおって……」彼はイバカミをさらに痛めつけ、踏みにじり、そして己の逆立てた金髪を指でなぞりながら、もう一人の囚われ人……彼の手下サラリマンを見た。「それもこれも、貴様の営業能力の不足、そういう事だな」　6

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「違いますCEO」手下サラリマンが必死に弁明した。「このクソ野郎がだんまり決め込んだから……俺、わたくしは、ヤルキに満ち溢れてるンです！コイツがクソだから……」「イヤーッ！」「アバーッ！」カワザCEOのショック・ヌンチャクは手下サラリマンの首を一撃で刎ね飛ばした。ナムアミダブツ！　7

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無論、イバカミを痛めつけた際、彼は手加減していたに過ぎない。ハンコの情報が要るからだ。一方、しくじった手下の命の価値など彼は認めなかった。「なせば成る……聖なる言葉だ」彼は手下サラリマンを見渡した。彼らは大声で叫び返した。「なせば成る！絶対契約！」「スッゾ……」彼は頷いた。　8

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かつて彼は偉大なる闇会社ネコソギ・ファンドに入社し、辣腕をふるった。人生の最初の絶頂であった。だが、社長のラオモト・カンの急死と、芋づる式の逮捕劇、その後のネオサイタマの混乱……今となっては全てが懐かしい。　9

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護送車両内でニンジャソウル憑依し覚醒した彼は、内部から車両を破壊。炎上するネオサイタマの混乱の中へ走り出た。ショッギョ・ムッジョ。全てのピンチはチャンスを呼ぶ。上昇志向とニンジャソウルはガッチリと噛み合い、闇金ビジネスで成り上がり……いつしかアマクダリ・セクトに彼は居た。　10

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アマクダリ・セクトはネオサイタマで権力を拡大し、それに従って、彼が担った上納金取り立てビジネスも右肩上がりの数字を叩き出した。彼には才能があった。弱者を痛めつけ、怯えさせ、生かさず殺さず血とカネを啜る才能が。だが……「イヤーッ！」ヒュパン！「ンアーッ！」「なせば成る……」　11

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そのアマクダリ・セクトも、今はない。月へ行った大首領アガメムノンは月と共に爆発して果てた。遺失分散した噂話の断片を繋げばそういう結論になる。ラオモト・カンも、アガメムノンも、「ニンジャスレイヤー」に殺された。死んだら終わりだ。その点、彼には才能があった。生存の才能が。　12

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カワザ・セイジツ・インコーポレイティッド。暗黒メガコーポに睨まれぬ適切な範囲の非道行為を行い、ジワジワとカイシャの存在感を強めていっている。今やヤクザとメガコーポの狭間で油断なきビジネスを行う、ネオサイタマの邪悪なる潤滑油だ。さらに今回の巨大なビジネスは大きなシノギになる。　13

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彼はカタナを始めとする複数のトップ暗黒メガコーポのエージェントと渡りをつけ、ネオサイタマを貫く地下鉄プロジェクトをでっち上げた。どの担当者から見ても、それは完璧な巨大プロジェクトである。だが実態はなかった。カネが動き、ジアゲが動員され、実際に物件が転がり……辻褄が合う。　14

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暗黒メガコーポ同士は常に緊張状態にあり、計画の全貌は知り得ないようになっている。複雑怪奇なカレイドスコープ。ハリボテの大事業だ。計画はいずれ頓挫するが、カネは頂く。カワザ社の責任範囲も不明瞭。まさに彼……ネゴシエイターの名にふさわしい、口八丁手八丁が導いた巨額ディールであった。15

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愚か者をハメ込み、カネを引きずり出し、次へ行く。そうやって彼はしめやかに悪事を続けてきた。最終的に計画的に破綻する投資案件だろうが、5年も6年も続くなら、1年で潰れるカイシャよりよほど善良だ。彼はそううそぶきながら、抵抗できない弱者を痛めつけ、快楽を貪った。　16

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「俺の野望にとって、お前は小石だ」ネゴシエイターはイバカミの尻を踏みにじる。「ンアーッ！」「家族がどうとか、先祖から受け継いだ物件だとか、くだらないんだよ。既得権益に縋るな！まっさらになってやり直せ。その手助けをしてやるんだ！なせば成る！ハンコはどこだ！」「ンアアーッ！」17

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イバカミは虫の息だ。身体を丸める彼を、サッカーボールめいて壁に蹴り込んだ。「イヤーッ！」「グワーッ！」そこには手下サラリマンが並んでいる。恐怖と残虐な喜びの入り混じった表情で、その一人が転がってきたイバカミを蹴り返す！「イヤーッ！」「グワーッ！」戻ってくる！皆、ゲラゲラ笑う！　18