柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 『SIDE:柳生十兵衛』

これはアロハ天狗によるSFパルプアクション剣豪エンタメ・マーダーパンク小説「柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」のtwitter再放送ログです
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柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「隊長…すみません…僕があんなことを言ったせいで…」ヨルンの震える声が、無線越しに聞こえる。「全員で意見を出し、俺が決めたことだ」「でも…」「全員腹は同じだった。お前は最初に言い出しただけだ。責任を感じるのは傲慢だ」ヨルンと目が合った。 75

2020-11-18 19:48:19
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「お前は行け。逃げ遅れている連中の避難を助けて、研究データを財団に持ち帰れ」「た、隊長たちは?」「俺たちは奴の気を逸らし、最後の抵抗に出る。おそらくは全員死ぬ」「死ぬって…そんな…」「フィールド・チームはそういうものだ。俺も助けられてここにいる。命令を復唱しろ」 76

2020-11-18 19:53:22
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「ひ、非戦闘員の避難を支援し…研究データを持って撤退します…!」ヨルンの涙声を聞いて、エルンストは安心した。絶望した中にも芯が残っている。運よく生き残れば、いっぱしの研究者になるだろう。「行け」エルンストと残った隊員が各所のビル影から同時に飛び出す。 77

2020-11-18 19:58:19
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

十兵衛は再び粉塵に隠れようとはしない。こちらをナメていた。ヨルンは十兵衛の死角となる低空を高速で駆け抜けていくが、見守る余裕は無かった。エグゾウィングの性能限界を超える乱反射軌道で十兵衛の周りを旋回し、十兵衛をレーザー射撃し続ける。 78

2020-11-18 20:03:14
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限界を超える高速軌道で意識が曖昧となる。腹を貫かれてようやく、もう自分しか残っていないことにエルンストは気づいた。垂直落下しながら、懐から一本の偃月刀を取り出した。「こんなものに頼るとは、科学者の風上にも置けんな」 79

2020-11-18 20:08:20
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そう呟くと、歪なアラビア文字が書かれたその偃月刀を自分の傷に深々と突き刺した。 引き抜かれたその傷口から血は流れず、替わりに瘡蓋《かさぶた》がそこから溢れ出す。 「オッ、オッ…オ?」十兵衛は訝しんだ。 80

2020-11-18 20:13:21
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あの落下しているヤツから溢れる血?いや、かさぶた?アイツそのものよりもずっと大きくないか? エルンストが瓦礫の山に落下すると、十兵衛はそろそろと近づいていく。 瓦礫の山が根元から崩れ始める。「ワ、ワ、ワ!!!」十兵衛は慌ててその場を離れた。 81

2020-11-18 20:18:19
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瓦礫を跳ね飛ばしながら、小山の様な瘡蓋が盛り上がる。“それ”からは人の手を模した、ぬるりとした無数の触手が生える。瘡蓋本体、触手を問わず、その表面には大量の眼球が、あるいは二つ三つと結合して現れる。 「タナマナシヤマユタハ…」 82

2020-11-18 20:23:21
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意味をなさない呟きが瘡蓋の何処かにあろう口から漏れ、既にその神秘を使い果たした偃月刀が、跳ね飛ばされた先の地面で砕けた。 83

2020-11-18 20:28:20
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砕けたその偃月刀こそ、結界鎖国暴風を超えて魔列島・日本の調査に赴くテスラ科学財団の部隊に、本来は対立組織である『ミスカトニック研究学園都市』、その史学科から支援提供された神話級アーティファクトであった。 84

2020-11-18 20:33:22
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その刀身に刻まれた忌まわしき賛美の詩が、エルンストの肉と骨を触媒に、宇宙的な神格の欠片を地上に顕現させた。 悍ましき神の肉片を前にして、十兵衛は二刀を構え、歯をむき出しにして笑った。 85

2020-11-18 20:38:19
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「ク、ク、クゥ〜〜ッッッッ!!こーいうのを待ってたんだぜ!さあ、オイラとバトルしようぜ!!」 瘡蓋の山は、全身をズルズルと引きずり意外なほどに早く十兵衛に近づいていく。生白い腕の如き触手が彼に伸びる。十兵衛はそれを瞬断する。 斬り落とされた触手が触れた地面が溶ける。 86

2020-11-18 20:43:19
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それだけではない、瘡蓋から伸びる触手が触れたあらゆるもの、人の死骸、コンクリートから金属に至るあらゆるものが即座にぐずぐずと腐り落ちる。腐液には瞬時に妖蛆が湧き、その蛆もまた即座に腐り果てる。 「ゲーッ、バッチいぜ!」 十兵衛は飛びのいて距離を置く。 87

2020-11-18 20:48:19
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「それならさっさと…決めちまうか!」大きく上に振りかぶって、斬撃を飛ばす。瘡蓋の山は簡単に垂直方向に両断された。「イヨシ!あっけなすぎてつまんねえぜ・・・オオッ!?」 88

2020-11-18 20:53:17
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

両断された瘡蓋の間に、更に瘡蓋がこぼれる。元の瘡蓋とこぼれた瘡蓋の境はすぐに失われ、痛ましき神は再びもとの姿に戻った。 十兵衛は、二度、三度とそれを繰り返すが効果はない。触手はすぐに生え変わり、瘡蓋はすぐに一つの山に戻る。 「ヌカルヘヴフツァトクバエルユルフヌエド…」 89

2020-11-18 20:58:20
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瘡蓋の山からは、冒涜的な言葉の羅列が続く。その言葉はあらゆる意味を持たず、それ故に耳にした者を発狂させる呪言であった。(十兵衛は既に発狂しているため無効) 「…遠くからチマチマってんじゃダメ、か。仕方ねえ…」 90

2020-11-18 21:03:13
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十兵衛は駆け出す。迫りくる無数の触手を二刀で切り裂きながら、十兵衛は走る。 91

2020-11-18 21:08:20
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瘡蓋の山が近づき、十兵衛は跳んだ。その頭頂(頭と呼べるなら)に着地した。十兵衛は、二刀を一度天に掲げると、一気に突き刺した。剣気によって伸びたそれではない、魔刀・英霊頑刀と邪刀・武利裏暗刀の刀身そのものを。 「プルヨアヅエウシアケタタゴアナエガウエ!!!!」 92

2020-11-18 21:13:21
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呪言に苦悶の色が混ざる。刀身が差し込まれた傷口から、黒紫に輝く病んだ火花が溢れ出す。英霊頑刀と武利裏暗刀、二つの魔刀に宿る邪悪なエネルギーが、旧き神の欠片に流れ込む!魔刀と宇宙的恐怖、起源の異なる二つの邪悪な力がぶつかり合い、太陽が黒く欠ける。 93

2020-11-18 21:18:20
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十兵衛の全身を触手が這いずり、その皮膚が腐り落ちていく。だが、十兵衛は刀を離さない。「どお…でえ…!!コレがオイラの…スーパー武器だぜ!!」 火花の勢いが最後にひときわ激しくなり、止んだ。瘡蓋の山の内部から紫の光が溢れ、その身が大きく悶える。 94

2020-11-18 21:23:21
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十兵衛が頂上部から飛び降り、地面に着地する。瘡蓋の山に背を向けたまま、ゆっくりと二刀を『十』の形に振り抜き大見得を切る。その背後で、空まで伸びる大爆発が起きる。旧き神は再び、この次元から放逐された。 95

2020-11-18 21:28:20
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十兵衛は、触手によって腐った自分の肉を事もなげにそぎ落としてそれ以上の浸食を防ぐ。彼の全身はそのような傷と欠損によって埋めつくされていた。少しの間満足げに自分の戦いの痕跡を眺めていた十兵衛は、すぐに元の目的を思い出し、公園に向けてゆっくりと歩き始めた。 96

2020-11-18 21:33:20
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瘡蓋の山がいた跡を十兵衛は歩く。そこに落ちていた小さなロケットペンダントが踏み潰されたが、彼は気づくこともなかった。 97

2020-11-18 21:38:19
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「なんだよ…これ…」薬師池公園にたどり着いた十兵衛は呆然と呟いた。 そこには無数のテントがあり、焚火の跡があり、食器や雑貨が散らばっていた。人は一人もいなかった。 十兵衛は鼻を嗅ぎまわり、生き残りの向かう先を追う。わからなかった。 99

2020-11-18 21:48:19
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十兵衛には関係ないことだが、石灰が撒かれ匂いが潰されていた。足跡も丁寧に消されていた。何者かが手際よく、ここにいた獲物が逃げる手助けをしたに違いなかった。 「つまんねえつまんねえつまんねえ!!」十兵衛はその場に仰向けになり、大きく駄々をこね始めた。 100

2020-11-18 21:53:22
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