海老澤美幸弁護士による法律・判例解説

都度更新する予定です。
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海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

さて、妻の肖像権を侵害したといえるか? 妻は動画の撮影・インスタへのアップをOKしてるわけで、自分の動画をネット上で公開することを承諾してるわけじゃないですか。 だとしたら、それをスクショして同じネット上に投稿することもOKしてるといえるのでは? これがまさにソフトバンクの反論ですね。

2020-10-21 11:22:36
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

妻の肖像権侵害になるか? まずは大前提から。 肖像権とは無断で自分の姿を撮影・公開されない権利で、すべての人がもってます。 姿って人格と結びついてるじゃないですか。だから人格権に由来するといわれてます。 実は法律に「肖像権」が定められてるわけじゃなく、判例の中で認められた権利です。

2020-10-21 11:22:36
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

上のように、無断で自分の姿を撮影・公開されない権利なので、本人の承諾があればOK。 他方、本人の承諾なくても肖像権侵害にならない場合があるんですよ。 キーワードは「受忍限度」です。 要は姿を撮影・公開されることが、普通の人にとって我慢できる限度かどうか、で判断するわけですね。

2020-10-21 11:22:36
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

具体的には次のような要素を考慮して総合的に判断するものとされています。 ・本人の社会的地位や活動内容 ・撮影の経緯 ・撮影の態様 ・メインかどうか ・撮影の目的や必要性 などなど。 これらを総合的に考慮して「普通の人なら我慢できないよね」という場合は肖像権侵害と判断されるわけです。

2020-10-21 11:22:37
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

さて、裁判所は何といったか? スクショは、夫が撮影してストーリーズにアップした動画の一部だから、妻の承諾はあったよね。 Xはこの動画をスクショしたわけ。 でもさ、動画はストーリーズで24時間限定で公開されてるわけで、その後も公開することは想定してないよね。 妻がXにOKしたこともない。

2020-10-21 11:22:37
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

妻は一般人で、夫が妻を撮影したプライベートな動画でしょ。 それにXは動画を無断でスクショして夫の著作権を侵害してるわけよ。 Xは誹謗中傷めいた文字入れして無関係のサイトに投稿してるわけで、目的も必要性もないよね。 総合的に考慮すると、我慢できる限度を超えてるから、肖像権侵害だよね。

2020-10-21 11:22:37
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

この判決が面白いのは、ストーリーズが24時間限定公開であることを、妻の承諾があるかの判断で考慮してる点かと。 確かに妻は、夫が動画を撮影してストーリーズにアップすることは承諾してる。 でもストーリーズってことは、妻としては、ネットで長く公開することはOKしてないと考えられるんですよね。

2020-10-21 11:22:37
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

肖像権は本人がOKなら侵害にならないので、肖像権侵害で一番争いになるのは本人がどこまでOKしてたかなんですよ。 半永久的に残るネットに公開した場合、ネット上でいろいろ使うことまでOKしてただろうという論理も(認められづらいとは思いますが)あり得るわけです。 ソフトバンクの反論はこれです。

2020-10-21 11:22:38
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

で、今回の判決では、妻がどこまでOKしてたかを判断する要素として、ストーリーズが24時間限定公開であることを考慮したわけですね。 この判決がどこまで及ぶかは不明ですが、個人的には、それだけではなく、誹謗中傷めいた使われ方をしたことも、妻の承諾がないと判断する考慮要素になっているかと。

2020-10-21 11:22:38
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

ネットで公開したからといって、誹謗中傷めいた使い方までOKしてるとはいえないですよね。 ましてや、24時間限定のストーリーズをや、ということかなと思います。 SNSやネットで公開してるからといって、スクショしてさらしたりすると肖像権侵害になることもあるので、ぜひお気を付けください。

2020-10-21 11:22:38
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

肖像権と著作権はとても混乱しやすいので、この2つの関係についてもご説明しておきます。 長くなるので別スレにしました。 ご興味のある方はこちらもお読みいただけましたら🙇🏼 twitter.com/ebisawa_miyuki…

2020-10-22 10:09:41
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

インスタストーリーズ判決に関連し、著作権と肖像権を混乱してる方が結構いらっしゃるようなので、著作権と肖像権の関係について簡単にご説明します。 著作権と肖像権は全く別の権利なので、ぜひこの違いを知っていただければと思います。 長文です。 twitter.com/ebisawa_miyuki…

2020-10-22 10:06:43
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

インスタストーリーズ判決に関連し、著作権と肖像権を混乱してる方が結構いらっしゃるようなので、著作権と肖像権の関係について簡単にご説明します。 著作権と肖像権は全く別の権利なので、ぜひこの違いを知っていただければと思います。 長文です。 twitter.com/ebisawa_miyuki…

2020-10-22 10:06:43
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

遅れましたが、肖像権侵害に関するこちらの判決、なかなかユニークなので、簡単にご説明します。 SNSやネット上に公開した自分の姿が写った画像を、他人が勝手にスクショして投稿した場合に肖像権侵害になるのか? がテーマです。 今っぽい肖像権侵害ケースなので、ご興味のある方はぜひ。長文です。 twitter.com/bengo4topics/s…

2020-10-21 11:22:35
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

件のストーリーズは動画ですが、複雑なので写真を例にとります。 蕎麦屋で夫が妻を撮影した場合。 大前提から。 著作権とは、ざっくりいうと著作物(=写真)を自由に使える権利です。 基本的には著作物を創作した人が著作権をもつことになります。 例では、撮影者である夫が写真の著作権をもちます。

2020-10-22 10:06:44
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

これに対し、肖像権とは、無断で自分の姿を撮影・公開されない権利です。 妻は、夫が自分の姿を撮影することや公開することにNOと言えるし、写真を無断で転載する第三者にも、例外はあるものの基本的にはNOと言えることになります。

2020-10-22 10:06:45

肖像権と著作権の関係

海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

さらに肖像権の話。 「無断で」撮影・公開されない権利なので、本人がOKすれば侵害にならないということになります。 このOKの範囲は往々にして曖昧なんですよ。また、一々本人の同意が必要とすると文化の発展が阻害されたり色々不都合があるわけです。 なので、受忍限度論が採用されてるわけですね。 twitter.com/ebisawa_miyuki…

2020-10-22 10:07:14
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

このように、1枚の写真の上には、夫の著作権と妻の肖像権という全く別々の権利が乗っかってるわけですね。 ここで強調しときたいのは、写真を使える権利は著作権だけということ。 肖像権は写真を使う権利ではないので、原則として、被写体は写真を自由に使うことはできません。

2020-10-22 10:07:15
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

モデルがいなきゃその写真は撮影できないのに、モデルが写真を使えないなんておかしくないですか? でもね、現在の法システムでは仕方ないんです。 これは海外でもよく問題になってて、たとえばジジ・ハディッドは、パパラッチが撮影した自分の写真を無断でインスタにアップしてよく訴えられてます。 twitter.com/TheFashionLaw/…

2020-10-22 10:07:44
The Fashion Law @TheFashionLaw

Gigi Hadid is Being Sued - Again - For Posting a Photo of Herself on Her Instagram Account. thefashionlaw.com/home/gigi-hadi… pic.twitter.com/KEZ7noim5a

2019-02-04 13:03:00
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

このように、著作権と肖像権が真っ向から対立することはよくあります。 肖像権はOKの範囲や受忍限度論で侵害にならないと判断されることがあるので、肖像権をもつ側は、OKの範囲を明確にしておくことがとても重要になります。いわゆる肖像権同意書の話ですね。 ここは話が広がりすぎるので別の機会に。

2020-10-22 10:07:44

ピンク・レディー事件(パブリシティ権)

海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

「これってパブリシティ権侵害になりますか?」というご相談をよく受けます。 そこで、どんな場合にパブリシティ権侵害になるかの判断基準を示した超重要ケース「ピンク・レディー事件判決」を簡単にご説明したいと思います。 なかなか面白い判決なので、知っておいていただけましたら。 長文です。

2020-11-23 12:29:28
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

まずパブリシティ権とは何か?から。 たとえばBTSファンは、番組でBTSのメンバーが着てたり雑誌で「BTSのメンバーの私服」と宣伝されたTシャツを「欲しい!」と思って買いますよね。 つまり、BTSメンバーの肖像や名前には、Tシャツの販売を促進する力があるわけです。 この力を顧客誘引力といいます。

2020-11-23 12:29:29
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

顧客誘引力って、その人が努力してお金や時間をかけて獲得したわけじゃないですか。 それを赤の他人がやすやすと使ってお金もうけするのは不公平すぎますよね。 そこで顧客誘引力がある肖像や名前をその人だけが独占できる権利=パブリシティ権が認められたわけです。 基本的には有名人の権利ですね。

2020-11-23 12:29:29
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

肖像や名前って、まさに人格そのものですよね。 だから、顧客誘引力がある肖像や名前を独占できるパブリシティ権も、人格に深く結びついてるといえます。難しい言葉では「人格権に由来する権利」なんていったりします。 人格はその人だけのものなので、その人がOKすれば当然、肖像や名前も使えます。

2020-11-23 12:29:30
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

でも有名人に一々同意をとるのは難しい。 他方、有名人は有名人だからこそニュースで取り上げられたりするわけで、そういったことまでパブリシティ権侵害というのは行き過ぎですよね。 じゃあどんな場合にパブリシティ権侵害になるのか。その判断基準を示したのがピンク・レディー事件判決なわけです。

2020-11-23 12:29:31