佐々木敦さんと岩波と批評の外様性

いつのころからか常に「なにかの外側に身をおいていよう」と考えていて、「なにかの内側で安全に守られて活動する人」のことをずっと指をくわえてうらやましく思っていて、なのに「所詮あいつは○○」みたいにカテゴライズされてわかったかのような顔をされることがいちばん頭くる。誰の影響で「外側」を意識するようになったか、忘れてしまったけど、佐々木敦さんの一連のツイートには勇気をいただいた。
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佐々木敦 @sasakiatsushi

そういえば、昨日アサヒアートスクエアで桜井さんに会ったので、「この際だからホントにサブカル岩波文化人を目指しましょうよ笑!」とかゆってみたのですが、なんだか疲れておられて、あんまりノッてくれなかった。。

2011-07-19 11:36:14
佐々木敦 @sasakiatsushi

岩波にはまったくと言っていいほど相手にされてないし、サブカル文化人てゆうのは、どっちかというと、昨日上の階でカラオケしてた人達のことを指すのではないかと(悪い意味じゃなくて)。

2011-07-19 11:38:25
佐々木敦 @sasakiatsushi

岩波といえば、遠い昔、久保田晃弘さんと『ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック』って論集を作ったのだけど(僕は編者に名を連ねていないが、それは外してもらったからで、内容には深く関与していた)、その続編を久保田さんと僕の対談本として出来ないかという話が持ち上がったことがあった。

2011-07-19 11:42:58
佐々木敦 @sasakiatsushi

で、確か青土社とか春秋社とか幾つかの版元を経て、巡り巡って岩波に企画が持ってかれたことがあった。岩波側の編集者は久保田さんとは旧知で、その関係だったのかもしれない。すでに結構年配の方だったと記憶している(名前は忘れました)。

2011-07-19 11:45:15
佐々木敦 @sasakiatsushi

喫茶店で長々と企画意図を説明して、いかがでしょう御社にてこの企画を、みたいな段階になった時に、その岩波の方はこう仰ったのだった。うーん、これだったら久保田さんおひとりの本がいいですね、と。うわあ初対面の僕を前にしてそれ言うんだと思って、怒りでも哀しみでもなく、なんかコワくなった。

2011-07-19 11:51:12
佐々木敦 @sasakiatsushi

久保田さんは現在は多摩美の教授だが、元々は東大で船舶工学を専攻されていた工学博士。非線形数値流体力学、人工物工学の研究からアートへと架橋なさった方である。つまり僕とは格も箔もまるで違う。その岩波の編集者としては、やっぱりウチで出すのだったら久保田教授の単著を、と思われたのだろう。

2011-07-19 11:54:15
佐々木敦 @sasakiatsushi

久保田さんご自身は、昔、一年に一度だけ、ムサビの僕の授業とクリストフ・シャルル教授の授業と共同で、久保田さんとICCの畠中実を迎えて、四人で或るテーマについて喋るというパネルディカッション型の特別講義をやってたことがあった。三年か四年続いたんじゃなかったかな。

2011-07-19 11:56:31
佐々木敦 @sasakiatsushi

で、それが終わってムサビからの帰りに、いつも久保田さんのクルマで最寄り駅まで送ってもらってたのだけれど、車内で聴かせてくれる久保田さんのi-Podのランダム選曲がムチャクチャ面白くて、この人は信用できる!とあらためて思った。そいえばここ数年お会してないけれど、お元気でしょうか?

2011-07-19 11:58:32
佐々木敦 @sasakiatsushi

で、話を戻すと、それで岩波は終わりで、そのまま同企画も頓挫した。そして月日は流れ、『世界音楽の本』という大部の辞典が編纂された時に、編者のひとりである高橋悠治さんのご紹介で、僕も一項目だけ執筆した。これが今に至るも僕が岩波とかかわった唯一の仕事である。

2011-07-19 12:01:06
佐々木敦 @sasakiatsushi

で、『世界音楽の本』が刊行された際に、確か今は亡き「論座」だったかな、朝日新聞と岩波書店の偉い人が対談をなさっていて、その中で同書のことが触れられ、岩波の方が「佐々木敦さんにも書いてもらってる」みたいな言及があって、ああこういう時は名前を出されるのだなあと思ったりもした。

2011-07-19 12:03:39
佐々木敦 @sasakiatsushi

まあ、確か『ニッポンの思想』の頃だったから、そういうことだったんだと思いますが。朝日もおんなじで、「論座」にちょこっとだけ出されたこともあったけど、数年前まではまさか自分が朝日新聞に書評を書いたりする日が来るとは露程も思わなかった。もちろん自著が書評されるなんてまさか中のまさか。

2011-07-19 12:07:11
佐々木敦 @sasakiatsushi

で、ようやく元々の話に戻る。サブカル岩波文化人の「岩波」がリアル岩波のことだけではないということは無論承知だ。言いたいことは、仮に僕になんらかの影響力とか知名度があったとして、それは営業とかコネとか権謀術数とかで得たものではなく、自分なりにやってきたことの結果であるということだ。

2011-07-19 12:12:39
佐々木敦 @sasakiatsushi

このことを僕は胸を張って言える。僕のことが嫌いだったり僕が書くことを評価できなかったりする人は沢山居るだろう。だが、僕の書いてきたこと、僕が喋ったり呟いたり、具体的にやってきたことをポジティヴに受け止めてくれた方が一定数居てくれたからこそ、僕は存在しているのだ。消えていないのだ。

2011-07-19 12:14:56
佐々木敦 @sasakiatsushi

あの人(たち)は、僕という存在を、勝手に大きく見積もった上で(断っておくが僕の「影響力」など微弱なものだ)、引き下ろすという謎の二段階の行為をしている。僕が「佐々木敦」になるにあたって何らか不当な振る舞いをしており、そして今は更に不当な力を行使していると。そう思うなら思えばいい。

2011-07-19 12:18:32
佐々木敦 @sasakiatsushi

ただ、やっぱりちょっと虚しくなるのは、ああいうことを書かれることや書かれ方のヒドさはまあいいとして(前にも書いたけど、あの負のエネルギーには頭が下がる)、演劇なら演劇のプロパーの内側には、ああいうのに多少とも共感したり同意したりする人も結構いるんだろうなあ、と思ってしまうからだ。

2011-07-19 12:22:02
佐々木敦 @sasakiatsushi

『批評とは何か?』や『絶対安全文芸批評』でも言ってるが、僕にとって「批評」とは、常に「外部」に立って何ごとかを語ること、「当事者」性と逆立しながらも対象に能動的に関与する、ということだ。どこかに専門領域を担保した上で、別の分野について批評してるのではない。あらゆる事の外様なのだ。

2011-07-19 12:25:29
佐々木敦 @sasakiatsushi

だから、運命(利益)共同体的な感覚で諸ジャンルにかかわっている人たち、表面張力的なインサイダーやそうしたインサイドにシンパサイズしている人たちからは嫌われてきたし、攻撃されてきた。それはある程度仕方がないことだと思っているし、はっきり言って、もう慣れた。でも疲れる、こともある。

2011-07-19 12:28:35
佐々木敦 @sasakiatsushi

たとえば僕は昨年の「フェスティバル/トーキョー」のパネルのひとつに出て、公募プログラムでオブザーバーをして、開催後のトークに参加し、更に鴻英良氏と対談もした(全てF/Tのドキュメントブックに再録されている)。公募プログラムは次回からコンペになるのだが、僕は審査員に選ばれなかった。

2011-07-19 12:35:09
佐々木敦 @sasakiatsushi

去年だって僕から何かやらせてくれ、とか運動したわけじゃない。去年は去年、今年は今年。すべては要するに向こう側(仕事の発注元とかキャスティング権を有する側)がどう考えているか、でしかない。それはあらゆる仕事にかんして言えることだ。そこを誤解されたりすると、やっぱり厭な気分になる。

2011-07-19 12:38:33