ツイノベ連作企画『DROPOUT ~Novelberに参加してみた~』
- Rista_Bakeya
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基本的に、140文字小説→登場人物の解説、の順に掲載しています。
Day 1「門」
学校の正門が近づいてきたら歩く速さも声も落とす。スキンヘッドの体育教師がこっちを見て「染髪はいかんと何度言えば分かる!」私達の手前にいた金髪の男子に怒鳴った。予定通り始まった追いかけっこ。短いスカートもお気に入りのネイルもノーチェックで済んだ私達は今日も無言で笑い合う。 #novelber
2020-11-01 07:54:13毎晩の日課ツイノベが魔女(運転手つき)の旅を追いかける『ストレイトロード』なので、今回の企画は金髪男子サイガの受難と怪異と青春を描く『DROPOUT』でチャレンジします。
2020-11-01 07:57:46補足:笑い合う女子は金髪男子の同級生。依子とその友達。
Day 2「吐息」
吐息ひとつで眼鏡が曇った。マスクをかけると頻繁にそうなる。歩き慣れた通学路なのに数秒でも足元が見えないと少し心配になって、もうそんな季節かと苦笑い。例年と違うのは僕の手を暖める君の掌だ。ひと月前までは昔からの友達の一人で、手を繋ぐなんて考えもしなかった。新しい冬が来た。 #novelber
2020-11-02 09:02:25Day 3「落葉」
医院の玄関を掃いていた下宿人がいつしか手を止めて庭の木を見上げていた。彫刻のような横顔と真剣な眼差しに一瞬どきりとしてから、彼が何を見ているのかと同じ方へ首を向けてみた。細い枝の先で最後の一枚がなびいている。落葉の瞬間を待っているのか。動きが面白いのか。謎が一つ増えた。 #novelber
2020-11-03 09:53:13Day 4「琴」
深夜の音楽室から木琴の音が聞こえる。学校の怖い噂としてありがちな一文が今も伝えられているかは不明だが、その謎に挑んだ先輩の話は我々ミステリー研究会だけが知る秘密、そして誇りだ。近隣の工事の震動でバチが跳ねていたという地味な真相でも。それが出しっぱなしだった奇妙な理由も。 #novelber
2020-11-04 07:34:54Day 5「チェス」
「チェスってやったこと」「ある」人と話せば話すほど、幼い頃いろんな体験教室へ行かされた経験が普通じゃないと思い知る。チェスは確か将棋教室の後に家で教わって、ご褒美目当てで父に勝とうと頑張った。「で、高い服買ってもらった」「勝ったの?」「ズル見破って泣かせたの」悪い娘だ。 #novelber
2020-11-05 09:24:51補足:主人公サイガの姉です。
Day 6「双子」
ボウルの上で殻を割ったら双子の黄身が転がり出てきた。本当は混ぜる手順だけどもったいなくなって、そのままフライパンにあけた。大きな顔が熱で少しずつ色を変えていく。白身の真ん中が膨らんで、スマイルマークの目玉焼きが完成。当直明けでお疲れの彼を和ませるにはちょうどいいのかも。 #novelber
2020-11-06 08:55:38この話を書いてから二日。 こんなことあるのか。 再現とまではいかなかった(片方がすぐ崩れたので、予定通り炒り卵にした)。 twitter.com/Rista_Bakeya/s… pic.twitter.com/GwtKqzTHEm
2020-11-08 19:04:08Day 7「秋は夕暮れ」
「秋は夕暮れ」か細い声が一行を読むと、また教室は静まり返る。先生が指名した長身の彼はいつも大人しく影が薄く、声を聞くのは今みたいな音読の時だけ。しかも何故か遅い。私達が春夏秋冬を二周できる時間で彼は秋の箇所をなぞり終えた。誰も笑わない。授業自体をまともに聞いてないから。 #novelber
2020-11-07 07:53:52Day 8「幸運」
「それ、幸運を呼ぶネックレス?」体育の後の着替え中、ついに気づかれた。「雑誌に載ってるあれね」広告を信じたわけじゃない。転校生の子がつけてるお守りが羨ましくて、似てもないのに欲しくなって。「ホントに買う人いるんだ」友達の目が冷たい。幸運と引き換えに何か失いかけてる気が。 #novelber
2020-11-08 14:18:13