isaacσのマイクロノベル

isaacσ @isaac_sigma

子供たちがクリスマスツリーに短冊をさげていた。そういえばお店で売ってたなあ。楽しそうな様子を見て、自分も短冊に願い事を書くことにした。いまごろ織り姫と彦星は何をしているのかな、と思いながらペンを持つ。願い事は、来年の七夕が晴れて、二人が無事に会えますように、かな。 #マイクロノベル

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地球上空に出現した空飛ぶ円盤はサファリパークに着陸した。それに気づいたキリンたちは草を食べるのをやめ、円盤に向かって歩き始めた。キリンたちを収容すると、空飛ぶ円盤は宇宙の彼方へ飛び去っていった。キリンたちは待っていたのだ。太古の昔から。迎えが来るのを首を長くして。 #マイクロノベル

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機械の体をもらえる星に行くことになった。「でも無料期間は週末までなの」謎の美女は言う。それじゃ各駅停車の旅なんてしてる場合じゃない。「これに入って」砲弾だった。「目的の星まで一っ飛びよ」「だ、大丈夫？」「ええ。機械の体なら耐えられる」「それをもらいに行くんだよ！」 #マイクロノベル

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放牧していた羊たちが、みんな逃げちゃいましたよ、と近所の人が知らせに来てくれた。「ふうん」気にせずに本を読み続けると「早く探しに行かないと」と心配そうにする。「大丈夫」僕は牧場を見る。「世界中どこにいても、いつか彼らはここに帰ってくる。子供を作りに。鮭のようにね」 #マイクロノベル

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思い切って彼女に言った。「サンタと別れてくれ」「でもあの人やさしいの」まあサンタだし。「それにプレゼントもくれるし」だろうなあ。自分があの偉大な存在に勝てるとは思っていない。しかし「僕ならイブに一緒に過ごせる」「それなのよねー。あの人の唯一の欠点は」サンタだしな。 #マイクロノベル

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今年の花見の場所取り部隊が決定した。僕もそのメンバーの一人。出世にかかわる重要な任務に誰もが緊張の色をかくせない。……そして当日。「さいしょはグー！」「じゃんけんぽん！」「あいこでしょ！」各社の部隊員同士の勝ち抜き戦が始まる。花見の場所取りはどこまでも平和だった。 #マイクロノベル

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祖父が自分の財産を埋めた場所がわからなくなってしょげていた。リスか。これで何度目だよもう。「地図くらい描けよ」「もし人手に渡ったら大変だ」「忘れたら同じ」自分の年を考えろ。幸い祖父の持ち会社は順調で生活には困らない。仕方ない。いつか誰かが見つけて役立ててくれれば。 #マイクロノベル

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火曜の朝は月曜の朝よりも少しだけ重かった。毎日少しずつ重くなっていく。お休みの日にリセットされて、また月曜の朝から重くなっていく。たまに週半ばで重さに耐えきれなくなると会社を休み、家で一日中ごろごろして重力に耐える。その横を母が軽やかにスキップして通り過ぎていく。 #マイクロノベル

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星の降るような夜、子供たちは虫取り網をもって丘に集まる。そして無心に網を振る。やがて虫かごいっぱいに流れ星を集めて嬉しそうに子供たちが戻ってくる。でもその中の一人に「それはお空に返しなさい」というと「はーい」と答えてふたを開け、ふわふわと月はまた夜空に帰っていく。 #マイクロノベル

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乙姫に開けてはいけないと言われた箱を開けると、中は配線だらけだった。中央の時計が作動を始める。赤の配線か、青の配線か。でももう時間はない。思い切って赤を切った……「開けてしまったのね」青年の故郷が消滅したという報せを受けた乙姫は、直ちに次の箱の作成に取りかかった。 #マイクロノベル

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武者修行の旅に出た若様が帰ってきた。迎えに出たら、入り口に立っていたのは可愛らしい町娘だった。「ただいま」声を聞いて判った。若様だった。どこで修行を積んだのか、娘らしい身のこなしが完璧に身についていた。「そんなに見ないで。恥ずかしい」ほつれ毛を直す仕草が色っぽい。 #マイクロノベル

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おもちゃ箱の中から笑い袋を見つけた。ボタンを押してみたら、ウンともスンとも言わない。電池切れかなと思って開けてみると、小さな人が寂しそうに体育座りしていた。しまった。ずっとほうっておいたせいで拗ねてるらしい。ごめんね。笑って。笑ってよ。今度はこちらが笑わせる番だ。 #マイクロノベル

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「今夜は闇鍋よ」妻がエプロンをはずしながら言う。「闇鍋って」妻が一人で作ってもう煮上がるのを待つだけだった。どこが闇鍋。「闇鍋セットを買ってきたの。出来合いのほうが美味しいわよ。本格的にやると何ができるかわからないからリスキーだし」それは普通の鍋だよ、もう。 #マイクロノベル

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給料が安くてやる気が出ない。そう言うと、すかさず同僚が自分のやる気スイッチを押してくれる。同僚がやる気をなくすと、今度はこっちが押してやる。今までこれでなんとか回っていたのだが、最近は社員同士がひたすらやる気スイッチを押し合ってばかりいて、業務がまったく進まない。 #マイクロノベル

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君のその気持ちは吊り橋効果なんだよ。そう彼女に言った。僕だって君の告白を聞いてどきどきしてる。でもきっとこの気持ちも吊り橋効果。いま映画も小説も空前の恋愛ブームで、結婚率もうなぎのぼり。でもわかってる。それはすべて地球に迫る小惑星が引き起こす吊り橋効果なんだって。 #マイクロノベル

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「ねえ、そろそろ時間じゃないかしら」「えー、今いいところなのに」テレビを観ていた夫はしぶしぶ立ち上がり、窓を開けて首を出すと「ぽっぽー、ぽっぽー」と鳴いて時を告げた。そしてまたコタツに戻りテレビを観始めた。義務さえ果たせばあとは自由なので、人時計生活は気楽でいい。 #マイクロノベル

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「負け犬負け犬って言うけどさ、いったい犬は何に負けてるの？ 猫？」「猫だったら犬に限らず勝てるやついないだろ」「うん、わたしも猫には勝てない。むしろ負けてうれしい」「俺もうれしい」「猫最強」「猫最強」#マイクロノベル

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男「君の瞳に乾杯」 カチーン！ 男「......さすがに眼鏡はずるいと思うな」 女「どうせそう来ると思っていたもの。弁償してね、眼鏡」 #マイクロノベル

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「回転寿司なのに全然回ってなくない？」「よーく見て。ちゃんと回ってるから」「えー？」目を凝らす。「あ」「わかった？」よく見ると、ひとつながりのリング状になった巻き寿司が、つけ場をぐるりと囲んで回っていた。「どうやって食べろと」「適当に切り取って食べて」「う、うん」 #マイクロノベル

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駆け込み乗車があとをたたないことに頭を痛めていたら、今日の乗客は一味違った。階段からホップして足を振り上げると手を地面につき、手で地面を押し上げて体をひねると、バク宙で華麗に電車に飛び込んだ。「測方倒立回転とび1/4ひねり後ろ向き（ロンダート）乗車はおやめください！」#マイクロノベル

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「それで君はなぜ頭に牡丹餅を乗せているのかね」会社で上司が聞いた。「じつは横断歩道を渡る時に左右確認はしたのですが」「うん」「まさか棚から牡丹餅が落ちてくるとは思わず」「言い訳はいい。牡丹餅を置いて家に帰りたまえ」「え、牡丹餅はどうするんですか」「私がいただこう」 #マイクロノベル

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枕を変えてからというもの悪夢にうなされて飛び起きるわ、飛び起きたら飛び起きたで、幽霊が入れ替わり立ち替わり枕元に立つわ、とても落ち着いて眠ってなどいられなかった。せっかく枕を新調したのに。そう思いながらラベルを確認して理由が分かった。これ冷感枕じゃなくて霊感枕だ。 #マイクロノベル

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娘とお祭りに行くと、射的の景品に自分の日記帳が並んでいた。よせよおい。他人の手にわたる前にと、さんざん散財した挙げ句に取り戻した。「何か恥ずかしいことでも書いてあるの。そんなに必死になって」娘が聞く。「いや全然書いてないので真っ白なのが恥ずかしいんだ」「なーんだ」 #マイクロノベル

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女「私、唐揚げなんて嫌です！」主任「そこを何とか。ケーキから美女が飛び出すのはもう飽きた。唐揚げが好物だから唐揚げがいいと客が」女「でも熱いじゃないですか」主任「うちのシェフはアイスを天ぷらにできるから、その点は何とかなると思う」女「そういう問題じゃありません！」 #マイクロノベル

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「モルダー、あなた好かれているのよ」「え、だ、誰に///（ちらっ）」「誰にって……ほら、UMAとかエイリアンとか、ああいうのに」「ああ、そっちのほう……」「そっちのほう？ ほかに何があるの？」「いいんだ。気にしないでくれ、スカリー」「おかしな人ね。変なのは元からだけど」 #マイクロノベル