【検証! EVは本当にエコなのか】-モビリティのEVシフトとCO2排出量に関する一考察-

昨今、「EVはエンジン車に対してCO2排出量が少ない」という大前提に基づいた政策誘導が世界各国で行われようとしています。 その妥当性を電力供給やライフサイクル分析の面から実証的に問い直します。 確かにEV(電気自動車)は、走行中にはCO2を排出しません。しかし、電気を火力発電で供給すれば、そこでCO2が発生します。また、走行段階だけでなく、生産や廃棄の段階を考える必要があります。EVはバッテリーの生産段階で多量のCO2を排出するからです。 本稿はそれらをデータで検証します。
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HIROKI HONJO @sdkfz01

【検証! EVは本当にエコなのか】 -モビリティのEVシフトとCO2排出量に関する一考察- 昨今、「EVはエンジン車に対してCO2排出量が少ない」という大前提に基づいた政策誘導が世界各国で行われようとしています。 その妥当性を電力供給やライフサイクル分析の面から実証的に問い直します。 pic.twitter.com/gEuM73pV2V

2020-12-19 16:01:37
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確かにEV(電気自動車)は、走行中にはCO2を排出しません。しかし、電気を火力発電で供給すれば、そこでCO2が発生します。また、走行段階だけでなく、生産や廃棄の段階を考える必要があります。EVはバッテリーの生産段階で多量のCO2を排出するからです。 本稿はそれらをデータで検証します。 pic.twitter.com/X1X4UckZBK

2020-12-19 16:02:05
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なお、稿者は自動車会社に勤務していますが、この文章はあくまで個人的な意見を述べたものに過ぎません。従って、如何なる企業・業界団体のスタンスを代弁するものではなく、また内部情報は一切流用していません。データは全てオープンソースから採っています。以上、念のため。 pic.twitter.com/2mLuZLdWJB

2020-12-19 16:02:31
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≪1節 EVを取り巻く情勢≫ 各種メディアで報じられているとおり、欧米先進国は2030年代を目途にモビリティの電動化を大幅に進めようとしています。先日、日本政府もこれに追随する意向を表明しましたね。 また、中国やインドなどの新興国でも、同様の動きが見られます。 pic.twitter.com/JU2htUtmcA

2020-12-19 16:03:00
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官民の研究機関の中には、「次世代エコカーの本命はEVである」という分析結果を発表するところも少なくありません。 pic.twitter.com/xBjoKyHsAl

2020-12-19 16:03:50
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これは、現段階で「EVは環境性能に優れている」という言説が広く流布されているからです。CO2排出ばかりでなく、NOxなどの有害物質も減らすことが出来るという分析もなされています。 pic.twitter.com/7QYTKGPGyU

2020-12-19 16:04:24
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ここで具体例をあげると、日産はライフサイクル(生産から走行、廃棄まで)アセスメントを行い、EVは同クラスのガソリン車に比して約4割もCO2排出量を削減できると結論付けています。 pic.twitter.com/sdAyzTcRfI

2020-12-19 16:05:07
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このように、日々メディア等を通じて広まる「EV神話」。一体どこまで正しいのでしょうか?本稿では観念的・定性的な議論は行わず、実際にデータを用いて検証します。 pic.twitter.com/O2ppgdlEg5

2020-12-19 16:05:41
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稿者は、モビリティの将来像は次の3つの条件によって規定されると考えます。 ①車両自体の走行性能向上(燃費比較の妥当性) ②マクロな電源構成(火力・原子力・再生可能エネルギー等の割合) ③ライフサイクルアセスメント(Well to Wheel での評価) 以下、順に見ていきましょう。 pic.twitter.com/sZUo2bLscZ

2020-12-19 16:06:20
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≪2節 車両自体の走行性能向上≫ 実は、先ほど提示した日産のデータには、少しアヤシい(?)ところがあるんです。それは「同クラスガソリン車」の燃費。私がおおまかに逆算したところ、リッター当たり10㎞そこそこになりました。EVの優位性を示すための比較対象として妥当な数値とは思えません。 pic.twitter.com/NbUtaYa8QN

2020-12-19 16:07:06
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そこで、本稿ではエンジン車、EVとも最新の現行車型で比較を行います。 エンジン車は4代目プリウス(2016年発売、EPA燃費24.7㎞/ℓ)、EVはテスラモデル3(2017年発売、EPA電費6.4㎞/KWh)。どちらもサイズが近く、優れた燃費を誇るので、比較には適していると思います。 pic.twitter.com/B8acgueQ2p

2020-12-19 16:07:46
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因みに、「最近の電気自動車は燃費(電費)が急速に向上している」と言われますが、それはエンジン車も同様であり、よほど大きな技術変革が無い限り、車体の性能ではなく発電時のCO2排出量が勝負を分けることが分かります。 (テスラは時系列の比較ができないので、此処だけ日産リーフのデータ) pic.twitter.com/MUoFqgDlvV

2020-12-19 16:08:53
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≪3節 マクロな電源構成≫ 実は、発電時のCO2排出量は、国によって大きく異なるのです。原子力に依存(75%)するフランスは先進国の中で飛びぬけてCO2排出が少なく、火力に頼る(80%)日本は多くなっています。特に東日本大震災後は原発のシェアが3%にまで低下したため、以前より増加しています。 pic.twitter.com/JbWjxMNvl6

2020-12-19 16:09:58
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中国やインドのような新興国のCO2排出量が多いのは、コストが低く燃焼効率の悪い石炭火力の割合が高いからに他なりません。(中国70%、インド75%) pic.twitter.com/jSYb464VFd

2020-12-19 16:10:45
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また、電線を介して電気を送る際に、放電によって失われる所謂「送電ロス」も無視できません。先進国では5%程度、国土が広く送電網が旧式の中国やインドではそれより高くなります。 pic.twitter.com/cR0eVG7d1l

2020-12-19 16:11:26
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以上を踏まえて、テスラモデル3が1㎞走るたびに何グラムのCO2を排出するかを国別に算出しました。当然ながらフランスは極めて低く、先進国のなかでは日本がビリ、新興国の中国・インドはかなり多くなります。 pic.twitter.com/1MiT85cWoP

2020-12-19 16:12:31
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一方、ガソリンで走るプリウスは国を問わず1キロ当たり93.1グラム。これを先ほどの表の上にプロットしましょう。 国によって優劣が分かれることが理解できますね。走行時の燃費では、欧米先進国ではEV有利、日本は互角、新興国はエンジン車有利です。 pic.twitter.com/ILe8hlj4qE

2020-12-19 16:14:10
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但し、まだまだ残された検討課題があります。即ち、 ①生産/廃棄を含めたライフサイクルアセスメント ②大量のEVを走らせるための電力供給源 の2つです。①は次節で考察しますので、まずは②を見ていきましょう。 pic.twitter.com/5eATz9V8Ev

2020-12-19 16:15:12
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乗用車を全てEV(テスラモデル3)に置き換えると、電力需要はどの位増えるんでしょうか?ざっと計算すると、現在の総発電量に対して、日本は+10%、ドイツは+16%、米国に至っては+18%にもなります。 大規模な発電、送電インフラの整備が必要不可欠ですね。(その費用は誰が負担するんだ?) pic.twitter.com/YjsIvCLLMU

2020-12-19 16:16:00
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HIROKI HONJO @sdkfz01

10%~18%程度の発電量の増加なら、なんとかなるのではと思う向きもあるでしょうが、先進国ではこれが中々難しい。原子力は国民のアレルギーが強いですし(バイデンはやる気みたいですが)、水力は拡張余力に乏しい。再生可能エネルギー(太陽光・風力)は極めて高コストで安定供給も覚束ない。 pic.twitter.com/ekzDEnEVqP

2020-12-19 16:17:07
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HIROKI HONJO @sdkfz01

そうなると、頼みの綱は火力ですが、最先端のLNGコンバインドでどうにかテスラモデル3がプリウスに優位に立てる程度です。 それ以外の火力ではEVが全く不利になります。(画像参照) pic.twitter.com/1ZsJA4aYKS

2020-12-19 16:18:13
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以前から注目されている再生可能エネルギーですが、正直採算性の点で問題にならないと稿者は考えています。例えば、原子炉1基分の発電量(100億KWh/年)を太陽光発電で調達しようとすれば、パネル面積だけで東京ドーム1,218個分の広さになります。 pic.twitter.com/cRJB9TJ243

2020-12-19 16:19:22
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これは、面積にして5,700万平方メートル。実に、山手線の内側の9割に当たるのです。これだけのパネルを入手するには12.4兆円が必要で(パネルの本体価格のみです)、原子炉1基の建造費4,400億円を遥かに上回ります。 pic.twitter.com/Cv1GpUD6NO

2020-12-19 16:20:34
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なお、電源の3割以上を太陽光・風力に転換した「クリーンエネルギー先進国」ドイツでは、電力供給が不安定化し(天候次第なのでピークとボトムの差が極めて大きい)、加えて非効率な再エネ電力の高価買取でコストが発生。過去20年間で電気代は2倍以上に高騰したのです。 pic.twitter.com/7GApbSjGU8

2020-12-19 16:21:43
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HIROKI HONJO @sdkfz01

これでCO2排出量が減少したならまだ救いがありますが、収益性が悪化した電力会社は高価なLNG発電を縮小、安価な褐炭発電を拡大したため、排出量は減っていないのです。 全く、何がやりたかったのか、、、 pic.twitter.com/ZNGUEUuArS

2020-12-19 16:23:44
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