理想の夫 解説

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2020年後学期「イギリス文学ゼミナール」北村授業アカウント @PirateUni_Wilde

#理想の夫1 10-11行目からして、このパーティのホステスであるガートルードは真面目な人らしいことがわかります。演出によっては、ガートルードは女性参政権運動などをやっているということにする場合もあります。

2020-09-25 11:17:22
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#理想の夫1 昔は女性参政権運動家というのは性差別的な風潮のせいで戯画化されて批判されやすかったのですが、最近だと世紀転換期あたりの真面目な教養ある女性は女性参政権運動をやってる設定にすることも多いです(例:『ダウントン・アビー』のシビル)。真面目な人がやるイメージなんですね。

2020-09-25 11:19:00
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#理想の夫1 13行目ト書きに出てくるlorgnetteは写真のような取っ手がついたタイプのメガネのことです。マーチモント夫人とレディ・バジルドンの2人は基本的に笑いを提供してくれています。 commons.wikimedia.org/wiki/File:Lorg… pic.twitter.com/Xmsc2rcIKo

2020-09-25 11:21:41
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#理想の夫1 マーチモント夫人とレディ・バジルドンが音楽室に入ります(23行目)。ここで出てくるド・ナンジャック子爵について、ト書きにあるattachéは外交官の随行員のことで、ド・ナンジャック子爵はイングランドかぶれのフランス人であるようです。

2020-09-25 11:24:21
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#理想の夫1 フランスかぶれのイギリス人がいる一方、イングランドかぶれのフランス人もいました。画家のモネが一時期イングランド趣味だったのとかはよく知られていますすね。

2020-09-25 11:27:28
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#理想の夫1 執事メイスンがここで来客名を告げます(24-25)。執事はパーティなどで来客を知らせる仕事をしていました。キャヴァシャム卿が入ってきます。キャヴァシャム卿(伯爵)が「役立たずの」(‘good-for-nothing’, 30)息子アーサー(ゴーリング子爵)のことをガートルードにたずねます(26-27)

2020-09-25 11:28:51
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#理想の夫1 これにガートルードとメイベル(サー・ロバートの妹)が返答します。ト書きによるとメイベルはイングランド風の元気な可愛らしい女性で、テラコッタ人形のような雰囲気だそうです。ギリシャ風のガートルードと違うタイプの美人だということですね。

2020-09-25 11:29:27
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#理想の夫1 メイベルによると、アーサーは朝10時にハイドパークで馬に乗り、週3回オペラに行って、1日5回も着替えをし、社交シーズン中は毎晩外で食事をするそうです(32-36)。この話からしてアーサー、いわゆる「ダンディ」ですね。社交とオシャレが得意で仕事は苦手な伊達男です。

2020-09-25 11:30:42
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#理想の夫1 アーサーはまだ舞台に出てきていないのにいろいろ噂されてますが、ふつう、戯曲で本人がまだ登場していないのに噂をされるのは良い役(儲け役)です。大事な役であることが示唆されています。

2020-09-25 11:31:39
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#理想の夫1 なお、ロンドンの社交シーズンはだいたい春から夏までです。41行目でメイベルが水曜日は家にいると言いますがが、当時はお客をもてなす日が家によって決まっていました。そんな話をしているところでレディ・マークビーとチェヴリー夫人が入ってきます(58)。

2020-09-25 11:32:28
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#理想の夫1 ト書きによると、チェヴリー夫人は「ヴェネツィア風の赤毛」(Venetian red hair)です。おそらくヴェネツィア派のティツィアーノの絵に出てくるような赤茶色~ストロベリーブロンドくらいの髪と思われます。ティツィアーノ「聖愛と俗愛」あたりを想像してください commons.wikimedia.org/wiki/File:Gall… pic.twitter.com/1ZjvgNGS0G

2020-09-25 11:34:29
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#理想の夫1 19世紀イングランドの前衛絵画であるラファエル前派、とくに画家ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティは赤毛の女性を好んで描きました。左がロセッティのヴィーナス、右は国立西洋美術館が持ってる「愛の杯」です。 commons.wikimedia.org/wiki/File:Dant… commons.wikimedia.org/wiki/File:Ross… pic.twitter.com/e8O6cdY3Tw

2020-09-25 11:39:06
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#理想の夫1 チェヴリー夫人もこの手の19世紀後半にウケたタイプの赤毛の美女/妖婦のイメージで考えていいと思います。

2020-09-25 11:42:41
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#理想の夫1 ガートルードとチェヴリー夫人が再会します。ガートルードはチェヴリー夫人と学校が同じだったと言っており、チェヴリー夫人に警戒しています。ガートルードが前に会った時とは名前が違っており、どうもチェヴリー夫人は二度結婚したようです(64-65)。

2020-09-25 11:43:44
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#理想の夫1 チェヴリー夫人はしばらく外国にいたようで、ド・ナンジャック子爵とベルリンで会ったことがあります(87)。たぶんチェヴリー夫人は外国語とかもしゃべれる世慣れた女性ですね。

2020-09-25 11:44:25
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#理想の夫1 ロバートが登場します(96)。書きによるとロバートは40歳くらいで、けっこうガートルードより年上ですね。アンソニー・ヴァン・ダイクの絵に出てきそうな雰囲気らしいです。写真はヴァン・ダイク「リッチモンド公ジェイムズ・スチュアートの肖像」です。 commons.wikimedia.org/wiki/File:Anth… pic.twitter.com/Ht15laAuON

2020-09-25 11:45:42
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#理想の夫1 さて、ここで今日のディスカッションポイント1です。様々な登場人物について、ト書きで美術の比喩を使って表現している理由は何でしょう?授業掲示板を後で設置しておきますので、授業登録者の皆さんはそこで議論してみましょう。

2020-09-25 11:46:30
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#理想の夫1 ロバートとレディ・マークビーが議会の話をしています。‘the House of Commons’ (101-102)は「庶民院」のことです。イギリス議会は庶民院と貴族院に分かれていて、その庶民院のほうですね。104-105行目の‘we do our best to waste the public time, don’t we?’は笑うところです。

2020-09-25 11:48:14
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#理想の夫1 レディ・マークビーがロバートにチェヴリー夫人を紹介します(120)。チェヴリー夫人が、ガートルードは学校で‘the good conduct prize’ (132)をもらっていたと回想していて、どうもガートルードは昔から大変清廉な性格らしいことがわかります。

2020-09-25 11:48:55
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#理想の夫1 チェヴリー夫人がロバートに「あなたはお行儀じゃなくチャーミング賞ですね」みたいに言われて139-141行目で返す‘I don’t know that women are always rewarded for being charming. I think they are usually punished for it!’は会話の流れで自然に出てきますが非常に気の利いた台詞です

2020-09-25 11:51:16
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#理想の夫1 これは冗談のようですが、人生の機微をついている発言です。美人が得をするというのはけっこう周りの思い込みであることが多く、美貌のせいでトラブルに巻き込まれる女性も多いですから。チェヴリー夫人は冗談まじりにそういうことを言っていると思われます。

2020-09-25 11:52:00
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#理想の夫1  チェヴリー夫人が、崇拝者があまりにも熱心で心変わりしないと女性は老け込むと発言します(140-144)。こういう直観とか常識に反した台詞がたくさん出てきて、一見浅薄に見えるのですがよく考えると何か裏の意味があるのでは…と思われるのがワイルドの芝居の特徴です。

2020-09-25 11:53:16
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#理想の夫1  153-155行目の、natural「自然」にしているのはとても難しいことだというやりとりはワイルド風の美学をよく表すものです。我々人間は文化と社会の産物なので、「自然」に振る舞うなんていうのはそれこそ自然にできることではありません。

2020-09-25 11:54:40
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#理想の夫1  159-167行目の女性の非合理さについてのやりとりは真に受けないほうがいいです。これはチェヴリー夫人の世渡りのテクニックであり、別に男女の真実を言い表しているというようなものではなく、チェヴリー夫人のキャラを表す台詞です。ワイルドの芝居にはこういう台詞がたくさんあります

2020-09-25 11:55:20
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#理想の夫1 全体的にお芝居はみんなそうですが、ワイルドのお芝居では登場人物がしゃべっていることは別にワイルドの意見の代弁ではなく、キャラを作るために登場人物が言っているのだということを理解しましょう。シェイクスピア劇もそうですけど。

2020-09-25 11:56:13
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