- goremusu9920172
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横殴りに雪が叩きつけてくる吹雪の日には思い出す。 私がまだ「お嬢さん」と呼んで頂けていた年齢の、携帯電話が世の中にまだ無い頃。 買い出しに行ったデパート前で待ち合わせているが、家族は来ない。 待てど暮らせど、来ない。 吹雪の中震えながら立っている私に デパート横の珈琲店のマスターが
2021-01-06 15:37:19「お嬢さん、もう長い時間待ってるみたいだけど大丈夫?良かったらお入り。寒いでしょ?」と声を掛けてくれた。 そりゃもう、寒くて。身体の芯まで凍えていたから 「注文しなくていいから、とにかく入って温まったら?」の有り難いお言葉を 拒むなんて出来なくて。 お客さん居ないからそこ座って、
2021-01-06 15:41:50と言われるままカウンター席に座り、暖かくて人心地がして、ほっとした。 「珈琲飲める?まだ飲んだこと無いか」 秘境育ちの私にとって珈琲とは 砂糖ミルクを入れたインスタントか、コーヒー牛乳のことだった。 「本物は飲んだこと無いです」 「飲んでみる?」 「お金を持っていないので…」
2021-01-06 15:46:34「そんなのいいよ。こんなに寒くちゃお客さん来ないし。珈琲の淹れ方を教えるから、覚えて帰ってよ。 待ち合わせの人が来たらすぐ分かるように ドアは開けておくから」 マスターは私の目の前で ドリップのやり方を見せてくれた。 まず蒸らすこと。 細かい泡が出るようにお湯を注ぐこと。
2021-01-06 15:50:30目の前で落ちていく珈琲の色の なんと深いこと。 角度によって光り方が違い、こんなに綺麗なものなのかと感動した。 「飲んでみて。人生初のドリップ珈琲。まずは砂糖もミルクも入れないで」 恐る恐る口にした、何も入っていない珈琲。 「…甘い!…えっ?美味しい!」 「美味しいでしょ。それが
2021-01-06 15:54:30本当の珈琲の味なんだよ」 それまで飲んでいたインスタントコーヒーは どれだけ砂糖やミルクを入れても 苦い、としか感じなかったのに。 何だこれ~!全く別の飲み物じゃないの! 凍えきっていた手も温かいカップで温まり 頂いた珈琲は美味しくて 夢のような時間だった。 「美味しいんだよね、
2021-01-06 15:59:04これ。ブルーマウンテンっていう種類」 当時のお金で1杯600円…ひえ~っ 「そんな高価なもの…!家族が来たらお支払いします」 「いいの。僕が淹れたかったんだから。お客さん来ないから暇でさ。それに、珈琲好きな人を増やすのが楽しいんだよ」 こんな出会いをしたら 珈琲好きになりますとも!
2021-01-06 16:06:44渋滞に巻き込まれ予定より1時間以上遅れて到着した母は 「ぽんたは生真面目だから今頃 吹雪の中雪ダルマになっているんじゃないかと心配していた」と言い、 父は「どこかで何とか凌いでいるだろうと思っていた」と言った。 凌いでました。素敵な出会いがあったよ。 遅れてきてくれてありがとう。
2021-01-06 16:12:47みんなの反応
@SsAoWoHmoHWLjQL ありがとうございます。初対面のマスターだったのですけれど 本当に親切で良い方でした。 有り難かったですね~
2021-01-06 16:49:47@tyokuko_C4U このあと進学の為に遠く離れた土地へ行った為に なかなか伺えないで4年経ちました。 自分の車を手に入れて 自力で伺った時には 再開発の為にお店は移転された後で。 デパート跡と共にあたりが更地になっていたのを見た時は 悲しかったですね… 再会出来ていないから 余計に忘れられません…
2021-01-06 22:51:28@Pontamama12345 なんだか、童話作家の書いた小説のように美しい物語でした。冬に凍えた心を暖めていただき感謝です。
2021-01-06 21:07:31@nigerugakati そんな風に仰って頂き、こちらこそありがとうございます。 昔むかしの大切な思い出です。 凍える日には思い出してしまいますね。
2021-01-06 21:59:55@Pontamama12345 @tyokuko_C4U 生きてる間に絶対会った方がいい。 いつか会えるなんてないし、来世なんて無い。今会え。
2021-01-06 23:37:52@Pontamama12345 本当に、宝物のように美しいお話でした。コーヒー液の赤らんだ褐色の色や、小さなアブクを立てる蒸らされた粉の香りが漂ってきました。 今は少なくなった漫画のたくさん置いてある喫茶店、どこかに探したくなりました。
2021-01-06 22:29:49