チェルノブイリ救援中部メンバー中熊弘隆さんによる、南相馬放射能測定報告 No.2【完結編】

ツイッターで公開された一連の南相馬放射能測定報告、前回分の続きで、飯舘村についても触れられています。 冷静な線量報告と現地ルポですが、抑えたトーンながら中熊さんの福島への思いが溢れ出し、紡がれる言葉は福島の今をあぶり出します。 前半のまとめはこちら→ http://togetter.com/li/161791
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中熊 弘隆 @nakaguma3

福島市とその周辺④  駐車場奥の喫茶店では、やはり若い男女が休日の午後を楽しんでいた。子供連れも多く、皆笑顔で手をつなぎ歩いて行く。線量計など持ってうろうろしている自分がまるで不審者のようだ。若い頃ならハンドマイク持って「ここは危険だから近づかない方がいい」と騒いだかも知れない。

2011-07-25 21:08:31
中熊 弘隆 @nakaguma3

福島市とその周辺⑤  しかし、今の僕はこの光景にただ圧倒され、その場を黙って退散するしかなかった。一路福島市内へと向かった。市内に入ると、中心部に近づくほど線量は上がった。何カ所か計測したうち、競馬場前や市役所前の地表面で2.0~2.2μSv/h、空間で1.0~1.5程度。

2011-07-25 21:08:54
中熊 弘隆 @nakaguma3

福島市とその周辺⑥  その後、道に迷い、中心街をうろうろしていると、たまたま県庁前に出た。表か裏か分からないが、大きな木の下で、車内の線量計が2.5μSv/hを表示した。時間がなかったので地表面は計測しなかったが、この周辺の線量は、現在の飯舘村村役場周辺と同等かそれ以上と思われる

2011-07-25 21:09:30
中熊 弘隆 @nakaguma3

福島市とその周辺⑦  福島市29万人、郡山市33万人、その他の市町村を含めると、この汚染地帯に暮らす人々は100万を超えるだろう。現在、子どもたちの一時避難や「疎開」の動きが市民レベルで始まっているが、先の見えない状況はこの先まだまだ続くのだろう。

2011-07-25 21:10:03
中熊 弘隆 @nakaguma3

福島市とその周辺⑧  長らく反原発運動を続けてきた女房が言った。「NO MORE FUKUSHIMAではだめ、SAVE FUKUSHIMAでいこうと思うけど、お父さんどう思う?」 「SAVE FUKUSHIMA」いいと思う。福島の救済なくして日本の救済はあり得ないのだから。了

2011-07-25 21:11:42
中熊 弘隆 @nakaguma3

飯舘村のこと①  20年近く前なるが、浪江町に住む女房の友人の家に泊めてもらったことがある。友人は、渓流釣りが好きな僕を「天国がある」と言って「秘密のポイント」に案内してくれた。飯舘村方面へ向かったことだけは記憶している。近くにダムがあるらしい。渓流沿いに車を停めた。

2011-07-26 20:56:54
中熊 弘隆 @nakaguma3

飯舘村のこと②  友人は車を降り、川を指さし言った。「見えます?」。足下の渓流に目をやると、流れの緩やかな深みの中に無数の大きな魚の姿があった。「あれ全部山女魚だよ」。僕は河原に下り、大きな岩の陰から川面を覗いた。3~40センチはあるかと思える無数の山女魚が群れている。

2011-07-26 20:57:25
中熊 弘隆 @nakaguma3

飯舘村のこと③  友人が僕の耳元で囁いた。「ここ天国でしょ」。僕は言葉が出なかった。釣り人にとってこれほど至福の時はない。竿を出すのも忘れて、ただぼんやりと、悠然と泳ぐ美しい山女魚たちの姿を眺めていた。「ここは間違いなく天国だ!」

2011-07-26 20:58:07
中熊 弘隆 @nakaguma3

飯舘村のこと④  美しい森と水は、そこに暮らす人々をも美しく育てる力があるのだろう。飯舘村現村長の菅野典雄氏がまだ公民館長時代に著わした「男からのラブレター」を読むと、そこにどれほど生き生きとした暮らしがあったかが分かる。新しい家族づくり、村づくりに村民をあげて取り組んできたのだ

2011-07-26 20:58:59
中熊 弘隆 @nakaguma3

飯舘村のこと⑤  「若妻の翼」事業を初め、菅野氏の関わった事業は女たちを輝かそうとするものが多い。女が輝いてこそ村は輝くことを氏は誰よりも分かっていたのだろう。氏はまた、「男はもっと金儲けにならないことをやるべき」と主張し、男たちに文化的センスを身につけることを求めた。

2011-07-26 20:59:29
中熊 弘隆 @nakaguma3

飯舘村のこと⑦  しかし今、「天翔けた」女たちの姿はなく、新しい村づくりに汗した男たちの姿もない。南相馬へ向かう途中立ち寄ったのだが、現在、飯舘村には、役場に10人ほどの職員と約100人の住人、そして役場に隣接する老人ホームに数10人(実数は聞き漏らした)のお年寄りも暮らしている

2011-07-26 20:59:59
中熊 弘隆 @nakaguma3

飯舘村のこと⑧ 多数の自警団の方々も活動している。この日、役場前に設置された線量計は、3.68μSv/hを表示していた。普段は5μSv/h程度がよく出るらしい。役場周辺は、村内の比較的高地にあり、アスファルトやコンクリート面が多いこともあって、周囲より線量はかなり低いようだ

2011-07-26 21:01:36
中熊 弘隆 @nakaguma3

飯舘村のこと⑨  南相馬で4月から医療ボランティアとして被災者のメンタルケアを続けるNGO代表のK氏は、現在でも線量計を持って村を訪れると言う。彼の話によると、50~60μSv/h程度は至る所で出ると言う。更に、その8~10倍もの線量を発するポイントが点在しているとのこと。

2011-07-26 21:02:11
中熊 弘隆 @nakaguma3

飯舘村のこと⑩  南相馬で30μSv/h以上を経験しているから、あり得ることだとは思うが、僕には、K氏から得た情報を確認する術がない。仮に確認できたとしても、現状では、市民運動が関われる状況ではないと思う。美しいふる里を奪われた、この地域の住民の方々の無念は計り知れない。 了

2011-07-26 21:02:49
中熊 弘隆 @nakaguma3

報告のまとめ①  原発事故は、光と闇の世界を逆転させた。普段と変わらない森の姿、川の流れ、鳥の鳴き声、風の音。しかし、ひとたび線量計の電源を入れると、全く 別の世界が見えてくる。闇の中で不気味に、そして、静かに放射線を出し続ける放射能の姿が見えてくる。けたたましく鳴り響く警告音。

2011-07-26 21:03:24
中熊 弘隆 @nakaguma3

報告のまとめ②  それは、今、眼前に見える世界が実は別物であることを教えてくれる。汚染マップづくりは、暗闇の中で、線量計だけを頼りに少しずつ奴らの所在を明らかにし、本来の光を取り戻すための最初の第一歩に過ぎない。3.11後の日本を我々はどう生き抜けばいいのだろう。

2011-07-26 21:03:59
中熊 弘隆 @nakaguma3

報告のまとめ③  奴らと正面から向き合うことなくして、その答えは得られないのではないか。そう思ったから、今回の活動に参加したし、これからも現地に通い続けたいと思う。人は、相当に厳しい現実を突きつけられても、正確な情報と、基本的な対処の仕方を知れば前向きに生きることができる。 完

2011-07-26 21:04:51
中熊 弘隆 @nakaguma3

お礼  この間、@hamajayaさんのhttp://t.co/YLQEvckをはじめ多くの方がまとめページを作ってくださいました。本当に感謝しています。還暦近くのおじさんには分からないことが多く、大変なご面倒をおかけしました。ありがとう。

2011-07-26 21:05:23