コペイカ2枚をポケットに - コロリョフのゲン担ぎ-

西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

@Kei_Kei_Twi さんに教え貰ったセルゲイ・コロリョフの逸話。彼の最期となってしまった手術入院のために家を出る際に、縁起担ぎとしてポケットに入れていたコペイカ硬貨２枚が見当たらずに家内に尋ねた云々の話。逸話の出所を調査しました。

西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

コロリョフの生涯について、もっとも入手し易い(発行部数も)であろう日本語文献は、JAXAの的川泰宣さん執筆の『月をめざした二人の科学者』(中公新書)だろう。本書はフォン・ブラウン(米国)とコロリョフ(露国)の二人に焦点を当てた力作だが、先の逸話は記載なし。

西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

寄り道して、西側諸国(←旧い表現)でコロリョフの一巻本の伝記として初めて出版されたのが、James Harford著、『Korolev』(John Wiley & Sons,Inc.) 1997年刊。外科手術に関する詳しい記述が在るが、例のエピソードは載ってない。

西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

話を本題に戻します。日本ロケット協会より頒布されている冨田信之さん著、『セルゲイ・コロリョフ』(2014年)。書店流通していないのが、日本語文献として第一級資料。本書646頁に「コロリョフは『かつぎ屋』だった。彼は、御守りとして10コペイカ銅貨を2枚、いつもポケットに入れていた。」と記述。

西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

これを読んだ時に違和感を覚えたので露語文献調査開始した訳です。おやっ！？と思ったのが『10コペイカ銅貨』の記述。御守りにするには10コペイカは大きくないか？と。

西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

ソ連は、1961年にデノミネーション導入して額面を額面(旧)10対(新)1に貨幣を切り替えた訳なねでコロリョフの手術(1966年)はデノミ後の物価になります。公衆電話料金が1コペイカの時代です。(←あとで、テストに出ます。)

西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

党の意向でコロリョフ存命中は存在を秘匿されてたので、関係者を除いてソ連の一般市民でさえ彼の名前を知らない。彼の初の伝記が1969年、1970年に相次いで刊行された。その中の１冊、ピヨトル・アスタシェンコフ著『アカデミー正会員セルゲイ・コロリョフ』(1969)は関係者への聞き取りによる力作。

西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

あと、彼を知る関係者が生存中なためソースが旧い(≒一次資料、孫引きされる前)ので後年に出版された伝記よりも出典のオーソリティーが高い面も在ります。勿論、出版検閲制度が在る時代に発行されてるので読む時には注意を要します。

西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

奥様からの聞き取りに基づく、コロリョフとニーナの会話が載ってます。冨田本に記載されてない内容に、外套のポケットに二枚の硬貨が見付からずコロリョフがニーナに尋ね、彼女は『公衆電話(で掛ける)ため？』と質問し、彼は『Нет, по копеечке (いや、単なる1コペイカ硬貨さ)』と返事してます。 pic.twitter.com/b3sng9vSyH

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西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

結び コロリョフは二枚の1コペイカ硬貨を験担ぎに常にポケットに入れていた。

けいけい 🇻🇳 @Kei_Kei_Twi

@Mahler_Brahms 自分が読んだのは，日本ロケット協会のコロリョフ本でした． コロリョフの家博物館でもその話を解説されたと(おぼろげですが)記憶してますし，コロリョフ本の著者も同博物館へ行ってるはずなので，出所は博物館の解説かも？

西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

単なる趣味でロシア宇宙開発史(ソ連時代)を調べてた筈なのに、いつの間にか歴史学だか文献学みたいなことやってるw。

西木（にしき堂） @Mahler_Brahms

ちなみに、冨田本がメインで依拠している露語文献のヤロスラヴ・ゴロヴァノフの『コロリョフ 真実と神話』にもコペイカの逸話が記載されてましたが、？コペイカ硬貨迄は詳述されてませんでした。