虚構内存在と後期クイーン的問題

メフィスト評論賞「ガウス平面の殺人」の解説です
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@quantumspin

まんが・アニメ的キャラクターの特徴のひとつに、二次創作性が挙げられます。東さんは、キャラクターが小さな物語から独立する「メタ物語」的な存在と書きました。これは、キャラクターの視点から眺めると、すごい状況です。自ら暮らす世界が作者の物語選択によってコロコロ変わっていくからです。

2021-02-20 10:48:16
@quantumspin

このような状況にあって、物語内に設定された「真実」が、作者の選択によっていかようにでも選択できてしまえる恣意的なものに過ぎない事を、キャラクター自身が自覚してしまっても不思議ではないと思えてきます。

2021-02-20 10:52:31
@quantumspin

そうすると、そもそも「メタ物語」的なキャラクターが探偵をやっている以上、彼らは「真実はいつもひとつ」などと信じていないのではないか、と思えてきます。先ほど「真実はいつもひとつ」という実在論的信念を自然主義的といったのは、こうしたまんが・アニメ的世界観と対比させる意味もあります。

2021-02-20 10:55:13
@quantumspin

以前、京極夏彦さんの小説が「真実」を相対化した作品と書きましたが、京極小説の場合、どちらかというと自然主義的な世界観を受け容れたうえで、真実を相対化させている印象を受けます。だからこそ相対主義的といったような、イデオロギーの問題として読めるわけです。

2021-02-20 10:58:59
@quantumspin

ところがまんが・アニメ的キャラクターにとって真実の相対化(メタ物語性)という現象は、イデオロギーの水準の話なのではありえません。実際に自らをとりまく世界がコロコロ入れ替わっていくわけですから、彼らにとって真実の相対化とは、抗いがたい「リアル」、厳然と生起している現象と思えるわけです

2021-02-20 11:03:48
@quantumspin

そういう意味で、相対主義的なミステリの描く「真実の相対化」と、まんが・アニメ的なミステリの描く「真実の相対化」とは、そもそもの意味あいが違っている、というのが、私の考えですかね。こうした感覚は、ポストモダンというより、現代実在論に近いと思っています

2021-02-20 11:06:20
@quantumspin

というよりも、現代実在論の視点こそが、虚構本格ミステリ論を組み立てるうえでのヒントになっている、と書いた方が実際に近いですかね。「ガウス平面の殺人」ではキャラクターの実存を、CPS/IoTとかAI、VTuberなどに重ね論じました。

2021-02-20 11:10:54
@quantumspin

ここから、近年の後期クイーン的問題の議論の鎮静化の根拠を見出す事ができると思います。キャラクターには、そもそも「真実はいつもひとつ」という、自然主義的な信念が欠落している。そうなら彼らは後期クイーン的問題に悩みようがない、もしくはネタとして悩むしかない、というのが私の考えです。

2021-02-20 11:13:58
@quantumspin

ポストクリティークと後期クイーン的問題 togetter.com/li/1827326

2022-01-07 07:49:58