初期近代英語で「主の祈り」

シェイクスピアらの活躍したエリザベス朝イングランドで話されていた「初期近代英語」、実は教会の祈祷文や聖歌の歌詞として、今でも残っているのです。 「主の祈り」をテキストに、初期近代英語を読んでみましょう。
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教会ラテン語たん @latina_eccl

ドイツ語には2人称単数と複数の別、またある種の敬語表現が残っており… du(きみ)/ihr(きみたち)/Sie(あなた、あなたがた) thou(ザウ)とdu(ドゥー)、ye(イー)とihr(イーア)… ちょっと似ていますね。

2021-02-20 13:17:14
教会ラテン語たん @latina_eccl

そして、主語がthouの時は、動詞・助動詞の現在形および過去形の語尾が-st, -estと格変化します。 Thou lovest me.(汝、我を愛す) この点もドイツ語と似ています。 Du liebst mich.(古語的な語法では"liebest"とも)

2021-02-20 13:23:35
教会ラテン語たん @latina_eccl

そして、いわゆる三単現(3人称・単数・現在形)の動詞の語尾は、-th, -ethと格変化します。 He loveth her.(彼、彼女を愛す) ドイツ語では-t(古語的には-et)で、これもまた少し似ています。 Er liebt(liebet) sie.

2021-02-20 13:28:32
教会ラテン語たん @latina_eccl

さて、「主の祈り」の冒頭、"which art in heaven"というところに出てきた"art"ですが、これは「芸術」という意味ではなく…be動詞の2人称・単数・現在形なのです。 Thou art my Lord.(汝は我が主なり) You are my Lord.

2021-02-20 13:35:47
教会ラテン語たん @latina_eccl

文法についてはひとまずざっとこんなところで、発音についても軽く… 基本的に、現代の教会や音楽界で、典礼文や聖歌として発音する時には、ほぼ現代英国英語に則ります。 米国英語のように母音の後のrが/ɚ/(R音性母音)にならず、/ə/(曖昧なア)と発音します。 Father→/ˈfɑːðə/(ファーザ)

2021-02-20 13:47:46
リンク Wikipedia R音性母音 R音性母音(アールおんせいぼいん)とは、r音のような音色を備えた母音のことをいう。 母音を調音する際にそり舌音のように舌尖を反らせたり舌を盛り上げたりすると、咽頭に狭めが生じる。その狭めによって母音がr音のような音色を備えることになる。これをr音化と呼んでいる。 国際音声記号ではr音性を表す補助記号[ ˞ ]が用意されており、母音字母の右側に密着して付けられる。 国際音声記号ではr音性を示す補助記号をつけるが、シュワーには1つの記号が用意されており、中央の横線が斜め上にあがってr音性記号と連結するような形 3 users 1
リンク Wikipedia シュワー シュワー(独: schwa)とは母音の一つ。または、その音を表す音声記号・文字 ə のこと。 シュワーは、音素として「中舌中央母音」または「曖昧母音」を指す。同じ記号で表記されていても、両者は異なる。 一つは国際音声記号によって定められた中舌で口の開きの度合いも中間的な中央母音 [ə] を指す。これを中舌中央母音(なかじた・ちゅうおうぼいん)または中段中舌母音(ちゅうだん・なかじたぼいん)という。 もう一つは曖昧母音(あいまいぼいん)とも呼ばれ、各言語において見られるはっきりとした特徴のない中性的な母音の 12 users 44
リンク Wikipedia 英語の /r/ の発音 英語の /r/ の発音(えいごの /r/ のはつおん)は、英語における音素 /r/ の現実態であり、異なる方言において多くの変異が存在する。 方言にもよるが、世界中の英語の変種において/r/には少なくとも以下のような異音がある。 ほとんどの方言で、多くの位置において/r/は唇音化した [ɹ̠ʷ] である。例えばreed [ɹʷiːd] やtree [tɹ̥ʷiː]。後者の場合、/t/も同様にわずかに唇音化するかもしれない。一般米語では、単語の初めで唇音化するが、語末ではしない。 多くの方言で、子音連結 /
教会ラテン語たん @latina_eccl

これについては、実際の現役当時の初期近代英語では母音の後のrをわりとはっきり発音していたようですが…(Father→/ˈfɑːðəɹ/) 私の話ではひとまず現代の教会・音楽界での流儀に従います。

2021-02-20 13:52:54
リンク Wikipedia 有声歯茎・後部歯茎接近音 有声歯茎接近音(ゆうせい しけい せっきんおん、英: Voiced alveolar approximant)は、一部の音声言語で使用される子音の一種である。国際音声字母(IPA)において歯茎および後部歯茎接近音を表す記号は、⟨ɹ⟩ で、小文字の r を180度回転させたものである。これに相当するX-SAMPA記号は r\ である。 英語において文字 r で表される最も一般的な音は、有声後部歯茎接近音(voiced postalveolar approximant)である。これは少し後ろで発音され、IPA 1 user
教会ラテン語たん @latina_eccl

初期近代英語ならではの発音として残っているのは、現代英語では発音されない子音に挟まれたeを/ə/と曖昧母音で僅かに発音し、一音節として数えることです。 これは、音楽の譜割りがそうなっているので残ったのでしょう。 loved→/ˈlʌ-vəd/(ラ-ヴ[ェ]ド) 現代英語では/lʌvd/(ラヴド)

2021-02-20 14:02:38
教会ラテン語たん @latina_eccl

では、実際に「主の祈り」の(現代の)初期近代英語の発音をカタカナで見てみましょう!

2021-02-20 14:04:49
教会ラテン語たん @latina_eccl

Our Father, which art in heaven, hallowed be Thy name; Thy kingdom come; アワ ファーザ ホィッチ アート イン ヘヴェン ハロウェド ビー ザイ ネーム ザイ キングダム カム

2021-02-20 14:07:31
教会ラテン語たん @latina_eccl

Thy will be done, in earth as it is in heaven. ザイ ウィル ビー ダン イン アース アズ イト イズ イン ヘヴェン

2021-02-20 14:07:59
教会ラテン語たん @latina_eccl

Give us this day our daily bread. And forgive us our trespasses, as we forgive them that trespass against us. ギヴ アス ディス デイ アワ デイリー ブレッド アンド フォギヴ アス アワ トレスパッセズ アズ ウィー フォギヴ ゼム ザット トレスパス アゲインスト アス

2021-02-20 14:10:53
教会ラテン語たん @latina_eccl

And lead us not into temptation; but deliver us from evil. アンド リード アス ノット イントゥー テンプテイション バット ディリヴァー アス フロム イーヴィル

2021-02-20 14:12:06
教会ラテン語たん @latina_eccl

※evilは、実際の初期近代英語では「エヴィール」と発音されていたようです。

2021-02-20 14:12:53
教会ラテン語たん @latina_eccl

For Thine is the kingdom, the power, and the glory, for ever and ever. Amen. フォー ザイン イズ ザ キングダム ザ パワー アンド ザ グローリー フォー エヴァー アンド エヴァー アーメン

2021-02-20 14:14:27