村上隆氏の語る日本画のこれまでとこれから。

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takashi murakami @takashipom

しかし、現状の美大にある日本画科の存在の意味性は希薄です。日本なんだから日本画ぐらい入れとこか、的な理解力で新設美大系にも配置されました。 現在配属されている先生達が、日本画への確固とした理念を持っていた訳でもなく職業として、先生という役を演じているに過ぎません。

2010-04-25 17:44:22
takashi murakami @takashipom

そんな状況下の美術大学問を受講とした日本画科の美大生。彼らが状況に忸怩たる思いと共に飲み込まれてしまった状況は、自己責任の範疇で溜飲を下げて来たと思います。

2010-04-25 17:44:33
takashi murakami @takashipom

コミュニケーションが下手糞でマンガ絵も描けない。でも、絵を描きたい。旨くなるなら予備校の厳しい修行にも耐える、と、愚鈍で実直な人間が多いのも特徴です。

2010-04-25 17:44:47
takashi murakami @takashipom

そんな彼らの目指すは日本画の巨匠達。戦前戦後、昭和の巨匠達の生き様。愚直でも社会とのコミットメントを時代時代のパトロンとなった人間達が後押ししていっぱしの芸術家としてデヴュー出来たという時代背景がありました。

2010-04-25 17:44:56
takashi murakami @takashipom

しかしその最後の威光は平山郁夫氏の死によって完全に断たれたと言えましょう。彼の存在意義の争点が良く勘違いされていますが、作品の善し悪しではなくデパートのイベント興行としての絵画展事業と大衆を旨く繋げた時代があり、大衆の求めるストーリーもあったのです。

2010-04-25 17:45:03
takashi murakami @takashipom

1977年に制作されたアレックス・ヘイリー原作のTVドラマ『ルーツ』が日本にも上陸し、大ブームになりました。アメリカのまさに黒歴史の黒人奴隷問題を描いた社会派ドラマ。戦争の傷跡がやっと癒えて来た頃、国家とは何かその国に生きる自分はどこから来たのか、は一つのブームでした。

2010-04-25 17:45:12
takashi murakami @takashipom

そんな時代にNHKのドキュメンタリー「シルクロード 絲綢之路」が大ブーム。 日本人のルーツ探しというテーマは時代に完全にONした形。シンクロニシティなのかどうかは確証出来ないが平山郁夫氏の『シルクロードシリーズ』展覧会興行も大ブームに。

2010-04-25 17:45:34
takashi murakami @takashipom

しかし、そもそも平山郁夫らのデヴュー当時、戦後のドタバタの頃、日本画界は逆風吹き荒んでいたんです。『日本画滅亡論』が唱えられ、それに対抗した展覧会を加山又象、横山操、杉山寧、高山辰雄、東山魁夷、らと共に平山郁夫もぶち上げていました。(この辺記憶曖昧)

2010-04-25 17:45:41
takashi murakami @takashipom

押し寄せる西欧近代化の波。洋画の本物(西欧から送り込まれてくる本物の作品群ダヴンチのモナリザとか)、デザイン、ライフスタイルも西欧風に一気に加速する中、「こんなんでよいのか?」という自問が起業家達からも起こり、『日本画滅亡論』の中、懸命に陣を貼る作家に肩入れしたんだと思います。

2010-04-25 17:45:50
takashi murakami @takashipom

つまり、日本画はこの辺から日本社会の中で勢力をつけて来た。加山又造等はブリューゲルの模写的な図像を日本画の技法で発表。杉山寧等は岩を砕いた岩絵の具を画布に盛りつけ盛り上げ仕上がり等は溶岩が噴き出したようなおどろおどろしいマチェールに、70年代頃の篠山紀信的な裸婦を配置。

2010-04-25 17:46:01
takashi murakami @takashipom

とにかく『時代に負けるな』『西欧に負けたくない』というほとばしるパッションが各作家、作品から溢れ出し、サポーターも絆され、シーンを支えていた。しかし、問題は80年代から始まった日本画商のマネーゲームに飲み込まれた形での日本画作家の価格高騰である。

2010-04-25 17:46:12
takashi murakami @takashipom

日本画商はNYやロンドンのオークションハウスに出入りし始め、日本画で稼いだ金を元金に次から次へと日本のクライアントのために印象派の作品を落札して行く。本物か否かも鑑定可能な目等養えるはずも無い程の風雲急な展開であったはず。

2010-04-25 17:46:20
takashi murakami @takashipom

そんな中、画商も画家も政治的な力もメディアコントロールも理解し、駆使し始め、価格の上昇を組織的に造り上げる作法をクローズドサーキットの交換会内で造り始めてしまう。冷静に考えれば、たこが自分の足を喰うたとえ話と同じである事に気がついたかどうか。

2010-04-25 17:46:29
takashi murakami @takashipom

そして迎えたバブル経済の崩壊。ここで、日本画ストーリーは終わり始める。が!平山郁夫はネバーギブアップ。あっぱれとしかいいようが無い。まずは院展のブランディングのため東京芸大ブランドとの抱き合わせで若手を次々と社会貢献事業へと派遣。

2010-04-25 17:46:37
takashi murakami @takashipom

平山郁夫自らの立ち位置も芸術大使として、敦煌莫高窟の修繕事業に集中。 カンボジアの遺跡保護にも言及、活動し、「文化財赤十字」等を立ち上げ、日本の芸術家として唯一、世界に政治的影響力を持って存在した活動家となった。

2010-04-25 17:46:46
takashi murakami @takashipom

芸術家としての信念貫徹にのみ集中しつつ、独自の政治力で地ならしもしながらゆっくりと地盤を堅め、日本画のブランドをも確固とした。故、社会的存在意義等無くなった日本画と言うジャンルが、あたかも高級嗜好品とメンション出来たのは彼の存在感であったとも言えよう。

2010-04-25 17:46:53
takashi murakami @takashipom

その平山郁夫が亡くなった。今、日本画界は求心力を無くしてしまった。糸の切れた凧だ。

2010-04-25 17:47:30
takashi murakami @takashipom

平山郁夫礼参でも無い。批判でもない。実態としてバブル崩壊後の日本画のブランドは彼への社会的信頼に依拠し続けて来た。そしてその核心部が消失したのだ。普通なら「スワ!」と新人も出て来て良さそうなモノだが、残念な事にマーケットがグダグダだ。

2010-04-25 17:47:39
takashi murakami @takashipom

ここまで長文に渡って昭和の日本画、そして平山郁夫ヒストリーを書いて来たのには理由がある。日本画の学生はこういう歴史を全く知らないのだ。否、いま、現職として大学で働いている日本画の先生も知らないかもである。

2010-04-25 17:47:58
takashi murakami @takashipom

そうした歴史を振り返ったとき、今現在の日本画とはなんなのか、を考えるアイディアの源泉があるはずなのに、昭和日本画のブランド力に今もすがろうと、ぼんやりと呑気に構えている。お〜っと、落日確定の国家日本をぼんやり観ている我らと同じか、、、。。。

2010-04-25 17:48:06
takashi murakami @takashipom

さて、で、どうよ。美大日本画に入学し在学中の学生諸君よ!自分の立ち位置が見えますか?

2010-04-25 17:48:20
takashi murakami @takashipom

で、まずは、全く汚れのついていないであろう、日本画に入学されたばかりの新入生への御提案です。皆さんの未来には作品がしっかりと社会に理解され、尊敬されるような状況を造り上げる事は可能です。しかし、それを可能にするには自らを律し、修行し始めねばなりません。

2010-04-25 17:48:29
takashi murakami @takashipom

先生方、まわりの人間の意見なんか無視。自分の師匠は信ずるに値する、自分が傾倒した作品一直線に向かって行く。そしてその作家周辺の歴史を学び、描法を策定し、実験し、自分の願う芸術の誠意と正義ににじり寄る修行を諦めずにおこなう。

2010-04-25 17:48:37
takashi murakami @takashipom

ぐ〜っと、テンションがあがり過ぎてしまったので、ここで、リアルなお話を。

2010-04-25 17:48:46
takashi murakami @takashipom

つまり、学校に入って、がっかりしたと思うけれども、そんなこんなで美大なんてのは現状こんなモノ、と諦めて。そして芸術は個人闘争である事も思い出して。美大受験では合格不合格がハッキリするように、この世界は力と運が全て。人を当てになんか出来ません。

2010-04-25 17:48:53