大屋雄裕氏「同性婚も夫婦別姓も問題の根源は同じで、婚姻という契約形態が過剰に多くの法的効果を束ねてしまっていること」 2021年3月19日

「問題は、バンドルされてる条件に引っかかって欲しいけど買えない人が出ていること。つまり異性間という要件と、姓の統一という要件」 「婚姻という過剰なバンドルをやめてしまうか、一部だけ享受する契約類型を別に提供すればいい」 「婚姻を解体するとか、別立ての制度を作ってそちらを利用してもらえばいいだろう」
46
Takehiro OHYA @takehiroohya

もそもそと補足を書きます。

2021-03-19 00:56:01

※「補足」の元は下記のまとめ参照

同性婚を認めないのは違憲とする札幌地裁判決について大屋雄裕氏の解説 2021年3月17日 https://togetter.com/li/1683546


Takehiro OHYA @takehiroohya

①私の考えでは同性婚も夫婦別姓も問題の根源は同じで、婚姻という契約形態が過剰に多くの法的効果を束ねてしまっていること。当事者間の性愛、子の養育、経済的な共同体形成、対外的には一方当事者がそれを代表すること(の表現としての姓の統一)、等々。

2021-03-19 00:56:02
Takehiro OHYA @takehiroohya

②ただ注意すべきなのは、一対一の異性愛に基づいて子供を作り夫が外から金を稼いでくる仕事・妻が家事育児に重点を置くというタイプの関係にとってはこのバンドルは別に不便ではないし、むしろ細々とした手続きや契約がいらないから便利だということ。

2021-03-19 00:56:02
Takehiro OHYA @takehiroohya

③性愛だけないとか子供作らないという関係にとっても使わない機能が含まれてるけどまあ使わなければいいだけで別に不自由ではない。みんな全部のソフト使うわけでもないけどOffice買うでしょと、そういうこと。

2021-03-19 00:56:02
Takehiro OHYA @takehiroohya

④問題は、バンドルされてる条件に引っかかって欲しいけど買えない人が出ていること。つまり異性間という要件と、姓の統一という要件。これをどうするかが問われている。

2021-03-19 00:56:02
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑤ただおそらく注意すべきなのは、バンドルされた契約だけが用意されてきたことには一定の理由があって、世の中のかなりの人々にとってはこれが便利だったり別に不便ではなかったというのが一つ。世の中の法的関係を管理するためのコストという観点からそれなりに合理的だったというのがもう一つ。

2021-03-19 00:56:03
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑥戸籍制度を維持するとしても、現在のような核家族ではなく個人ベースにすれば制度設計は柔軟になったはず。なのになぜ戦後の制度改革で核家族を単位にしたか、個人単位にすると数倍になる戸籍の枚数をカバーできる紙がなかったから、という話を読んだ記憶があり本当かどうかは自信がない。

2021-03-19 00:56:03
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑦とにかくコスト問題があること、紙で管理していた時代にあまり細かい要件や契約を扱おうとすると破綻するということは念頭に置く必要がある。……と書いたあたりで言いたいことは見えてきたのではないかと思う。

2021-03-19 00:56:03
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑧つまり情報や契約類型の管理にかかるコストの構造は変わっているというのがポイント。紙ベースの戸籍では、筆頭者の姓を構成員全員が共有していないと検索できなかったかもしれない。でも電子化されたら関係ないはず。マイナンバーと相互関係の登録でいろいろなパターンが記述できるんじゃないか。

2021-03-19 00:56:04
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑨だったら婚姻という過剰なバンドルをやめてしまうか、一部だけ享受する契約類型を別に提供すればいい(Wordは単体でも買えるわけで)。核家族モデルに無理に押し込むんじゃなくて個々の家庭(や人間関係)を把握して適切な行政サービスの対象にした方がいいのでは、というあたりが私の理論的な見解。

2021-03-19 00:56:04
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑩留保1。ただしこれを実現するためには行政が個々人を正確かつ確実に把握する仕組みが必要になる。家族単位じゃなくて個々人に給付金払うなら全員の銀行口座は抑えさせてください。姓にかかわらず家族だと認定するためにマイナンバーで全員管理します、とか。集中された個人情報管理は不可欠になる。

2021-03-19 00:56:04
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑪留保2。そのような情報管理の基盤を構築し、それに合わせて人間関係の登録システムを再構築するためには、相応の時間と手間がかかる。戸籍もほぼ電算化されていて市町村単位のシステムなので、1700強あります。全部変更しないといけない……というのも立法的解決が筋だと私が主張する理由の一つ。

2021-03-19 01:09:23
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑫留保3。というわけで婚姻を解体するとか、別立ての制度を作ってそちらを利用してもらえばいいだろうと理論的には思っているのだが、特に同性婚に対する当事者の希望は切り捨てがたいものを感じている。というのは、そこでの真の問題は法的効果の実現ではなく、対等なものとしての承認だと思うから。

2021-03-19 01:09:23
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑬遊園地があって、一部の生徒だけが入って遊べるのはひどいじゃないかと主張したとして、そうだねじゃあ遊園地壊しちゃおうこれで平等だねというのは効果の面では正しいけど、友達が遊んでるのを塀の外から見ていた子供の心がそれで癒されるかという気はするのですよ。

2021-03-19 01:09:24
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑭このあたり、いや権利義務関係の話ではないよねえと思う私ももちろんいるのです。しかし以前アメリカから来た同性婚運動の代表的な弁護士さんにObergefell判決のあと青少年の自殺件数が減ったんだと言われるとすごくぐらぐらくる私もいるわけです。

2021-03-19 01:09:24
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑮自由をテーマに、人間の尊厳とか個人の人格的承認とか重要な価値なんだと主張してきたのも私であるわけで、そちらからは「平等な存在としての取扱い」の主張を認めたくなるのですね。というわけで結論はなく、このあたりの論点で迷っておるのですというだけの話なのでした。どっとはらい。

2021-03-19 01:09:24

以下、反応や応答


w_kishida @w_kishida

そんな統計があると知って、私も動揺を来しております。(とはいえ特権化された「遊園地」に同性婚が加わるだけで、ほかのアイデンティティに基づく人的結合は排除されたままという、特権と差別的取扱を享受することで救済されるというところに、もやもやするものが残ってしまうというか・・・) twitter.com/takehiroohya/s…

2021-03-19 09:44:18
nabeso @nabeso

これについては前から疑念で、外国人の同性婚者が夫婦別姓で住民票に登録できる以上、データベース的には一切手をつけず、同性婚も別姓婚も運用できると睨んでいる。誰か国会でシステムの仕様と運用を聞いてほしい。 twitter.com/takehiroohya/s…

2021-03-19 13:57:12
Takehiro OHYA @takehiroohya

詳細は調べていないのですが、戸籍については法務省による標準仕様があり、現実的には8社程度がシステムを提供しているようです。また、システム内では個人ごとに姓・名を管理しているので別姓を導入しても大改修にはならないのではないかという予感。 twitter.com/nabeso/status/…

2021-03-19 14:33:07
Takehiro OHYA @takehiroohya

ただし、同性婚を導入する場合おそらく婚姻届に関するエラー処理の部分を直す必要があり(同性でもエラーにならないようにする)、別姓については戸籍筆頭者と子供の姓の処理が必要になる(現在は選択した姓の持ち主が筆頭者になり、子は自動的にその姓を引き継ぐ)。

2021-03-19 14:35:42
Takehiro OHYA @takehiroohya

一定の改修は必要になり、元のシステム数は多くないけど各市町村でアップデートして問題なく走ることの確認は必要。コスト倒れで無理という規模でもなく、明日からできますという話でもないというあたりの見通しかなと。

2021-03-19 14:38:32