掌小説語り～自作つぃのべる集～78

リュカ @ryuka511

足元に纏わりつく物を蹴り飛ばす。長い戦いがやっと終わったのだ。感慨深く辺りを見回す。夥しい数の生命を失った肉体が転がる様は美しくさえある。そうだ、これ全部俺の悲願達成を祝う芸術作品に仕上げよう。全てを失い、再起の為の戦いだった。最後の仕上げにそれぐらいやってもいいだろう #twnovel

リュカ @ryuka511

血と罪を一身に背負い、王国の輝かしい歴史の影を担ってきた。君の命令ではないが、穢れて穢れて穢れきっても生き延びてきたのは、偏に君の為だと云うのに、君は私をそんな目で見るのか。褒賞が欲しい訳ではない。私を王国の一員と見てほしいだけなのに。 #twnovel

リュカ @ryuka511

浮気調査の依頼人はずっと片想いしてる人だった。卓上には彼女の夫が別の女と腕を組み、ホテルへ入る写真。彼女はどうしたいのだろう。裏切り者とやり直したいのか、新たな道を探したいのか。事務所を訪れた彼女は疲れた顔で俯く。「真実は君を救わないよ」僕なら君にそんな顔はさせないのに #twnovel

リュカ @ryuka511

飲んだ物をグラスに吐き出してしまった。その鮮烈な赤に吐き気が増す。友は溜息を吐き首を振った。「グラスに移してもダメか。一体何があった?」あの日以来、私は血を飲めなくなった。私を愛し憎んで、私を化け物と罵り自死した女の狂ったような笑い声と血塗れの顔が、脳に焼き付いて離れない #twnovel

リュカ @ryuka511

長い旅の果てにようやく辿り着いたお宝の中身は、空でした。落胆する仲間達を剣士は見回します。「でも俺は、お前達っていう宝を得たぞ」「そういうのいいから」「ダサい」「寒っ」古文書と地図を見比べお宝の在処を探る仲間達の背後で、剣士はキラキラの笑顔のままで石化してしまいそうです #twnovel

リュカ @ryuka511

秋の短い期間に、死者の国から多くの者が現世へ帰還するという。あの人もその中にいるだろうか。私の所へ、帰って来てくれるだろうか。あの人には、大切な人がたくさんいたから。僅かな時間でもいい、私の所へ来てほしい。身に付けた仮面は目印。一夜の夢でもいい、一目あなたに。 #twTorT #twnovel

リュカ @ryuka511

この短い期間だけ、私達は此岸へ帰還できる。此岸へ渡り、それぞれ会いたい人の元へ駆ける死者達の中、私は立ち尽くす。会いたい人はいる。だが私を待つ人はいない。辛くなるだけだと解っているのに、今年も来てしまった。あの人が幸せでいればそれでいいじゃないか。あの人が私を忘れていても #twTorT