ギガベース日誌 ACT08「PHANTASMA BEING」07

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再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「お前がファンタズマビーイングであろうがなかろうが、私の知っているヤンという男は死んだのか。全く、どうして私ばかりが、生きて老いて残ってしまうのだろうな」 「そうまで言うのなら、俺が辿らせてやる。先に行った奴等の血と糞に塗れた、地獄への轍をな!」 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:08:26
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ヤンの怒号と共に、二機は交戦距離に突入。白銀のレーザー光とバズーカ弾が交差する。 インテリオルに古くからあったリンクス同士の闘争は、互いの機体の武装・装甲適正・相対速度を全て把握しているが故に、初めからある程度の結果が見えているものだった。 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:12:58
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ブラインドボルドの適正戦闘距離に対し、レザネフォルは背部の大型レーザーキャノンで射程に勝る。そして、相手がタンクと言えど、飛行状態を維持しながら一気に間合いを詰める機動力にはブラインドボルドには無い。 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:17:26
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互いが最も得意なスタイルを維持すれば、それは必然的に真正面からの撃ち合いと化し、総火力と射程で勝るレ・ザネ・フォルの撃墜は有り得ない。 故に、突然のOBで距離を詰めてきたヤンの行動を、スティレットは予め読んでいた。 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:18:57
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距離を詰めれば詰めるだけ、ブラインドボルドはコジマライフルの脅威に晒される。それを承知で尚、PAを捨ててまで接近した果てに、ブラインドボルドは敵のタンク型脚部に組み付いた。 「荒々しいな……」 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:23:10
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クイックターンで振り解くも、すぐに最接近する二機。コジマライフルの先端には毒々しい殺人粒子が蓄積され、病的な光を示しているにも関わらず、ヤンは自機にとっては適さない戦闘距離を維持する。 「撃ち合いに付き合ってやるとでも思ったのか?」 「いいや、全く」 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:25:59
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「貴様は、あの猫共を守るだろうと思っていたからな」 「っ?!」 スティレットの言葉に、ヤンは意表を突かれた。 直後、レザネフォルの肩部から発光体が射出される。 旧レイレナード製のフラッシュロケット。強烈な閃光にヤンの注意が奪われた一瞬に、何かが傍を通り過ぎた。 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:32:04
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スティレットはフラッシュロケットを使用するようなリンクスではない。熟知は疑念へ、疑念は失敗の確信へと変わり、ヤンの心を満たす。 「艦載機っ……?!」 「大方、あの猫にアルドラの連中を食わせたんだろう。さ、行けよ。せっかく回収したのが散ってしまうぞ」 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:35:55
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回復した眼で敵機を凝視すれば、脚部の格納スペースから人型の影が覗いている。艦娘だ。 「全機発艦完了!Essex classに出し惜しみは無いわ!」 仰々しいアタッチメントで脚部内に固定された正規空母イントレピッドから発艦した攻撃隊が、深層情報を食らった個体目掛け飛翔する。 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:41:34
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「艦娘と連携など……代表の思い付きを押し付けられただけと思っていたが、案外上手くいくものだ。後は好きにしろ、イントレピッド」 「集中してないと振り落とされそうなんだけど?!」 「そうか……悪いが、これから更に乗り心地が悪くなるから覚悟しろ」 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:46:40
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脚部に潜ませていたイントレピッドからの苦情をシャットし、スティレットは自機の高度を上げた。 上昇操作と同時に計器を確認。高度7400m。まだ、破滅に至る高度までは余裕がある。 下方のブラインドボルドからの攻撃を、PAと脚部裏面に敷き詰められた装甲が受け止める体勢だ。 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:49:37
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ヘルキャットの群れに追いかけ回される深海棲艦載機。ヤンが敵ネクストに背を向け横槍を入れなければ、艦載機に保管されたアルドラの深層情報は機体と共に空に裂け散るだろう。 「深層情報はその情報量の大きさ故に、無線での伝達にはそれなりの時間を要するらしいな」 #ギガベース日誌

2021-06-13 01:55:31
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「海なら棲素が満ちていて楽だろうが、生憎此処は空だ。食ったばかりなら尚更だろう?」 スティレットは、ヤンは背を向けるだろうという確信を抱いていた。 地中海を占拠する深海棲艦達にとっては、替えの効くリンクスよりも情報のほうが重要であるに違いないのだから。 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:00:01
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そして、背を向けたヤンを、確実に殺せる条件は既に揃っている。 フルチャージされたコジマライフルと背部兵装の同時攻撃。コジマ粒子は直撃せずともブラインドボルドのPAを完全に崩壊させ、続く攻撃がメインブースターを破壊せしめるだろうと。 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:03:02
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「クソッ……!!」 状況は、スティレットの思う通りに傾いた。ブラインドボルドは艦載機の方向へ急転する。 「……残念だ」 ゼルドナーフレームのコアは突出形状の装甲により、極めて生存性に優れる。しかし、それはあくまでも前方からの攻撃に対してのものだ。 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:05:44
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旧き戦友へ、手向け代わりの終わりを。 スティレット自身のみが知る感傷を込めた一撃を、敵の背に向け放つ。 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:08:56
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

しかし、 攻撃は、上方から降り注いだ光によって阻害された。 避け損ねた初撃が背部のプラズマキャノンとレーザーキャノンを同時に貫き、コジマライフルの攻撃のみがブラインドボルドの真横を掠めた。 「……馬鹿な」 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:10:49
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

攻撃は、止んでいない。 上空から無際限に降り注ぐ光の雨。 高度を確認する。7600m。 「大気圏外からでは……アサルトセルでは無い……!?」 「No way!!スティレット!上です!上方に多数の機影が!」 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:13:39
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

成層圏を見上げたスティレットは、機体のカメラアイの不調を疑った。 星ではない光が。 人類が手を伸ばすのをやめた空と宇宙の隙間に留まり、檻としての役割に徹していた筈の彼等が。 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:17:52
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

かつて企業によってこの星を覆い尽くすほどにばらまかれた無人兵器アサルト・セルが、作戦領域の直上を覆い尽くしている。 クレイドルの飛行高度からでも、その姿を目視することはできない。しかし今、明確な実像が認識できる距離にまで、彼等は降下していた。 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:23:19
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

有り得ない。スティレットの思考が困惑に満たされていく。 アサルトセルの最低運用高度は大凡高度200kmに位置する。地球を飛び出そうとする者の排除に特化した攻撃衛星が、カーマン・ラインより下の領域へ侵入してくるなど、起こり得る筈がない。 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:28:59
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

しかし、歴戦の思考はすぐに有り得ざる状況を説明する仮設を打ち立てた。 アサルト・セルが、それを知るものに語られるような、ただの攻撃衛星ではなかったとしたら。 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:31:03
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

再度降り注ぐ攻撃。 レーザーキャノン、あるいはレールキャノンに相当する超弾速の弾幕は、かつて霞スミカから聞かされた「無差別攻撃」とは似ても似つかない。 イントレピッドの艦載機隊は瞬く間に全滅し、攻撃はレザネフォルに集中する。 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:33:46
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

一方で、ブラインドボルドと深海棲艦載機には、流れ弾の一発すら向けられていない。 「成程。インターネサインの運営権とは、つまりそういうものか。小島め、もったいぶった説明を……」 「理解が早いね。流石はインテリオルのオリジナル」 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:36:58
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

降り注ぐ無感情な殺意から逃れ急降下する最中、耳障りな男の声が通信に割り込んだ。 「貴様が財団か」 「その調子だと、君の新しい飼い主は、君に全部を知らせたわけじゃあなさそうだ。見てもらったほうが早いって判断かな?」 #ギガベース日誌

2021-06-13 02:39:48
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