シー・ノー・イーヴル・ニンジャ #4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アップ……ダウーン」「アップ……ダウーン」むせ返る熱気とバイオイカが焼ける臭気で、この日のバイオイカジャーキー作業場も平常どおりの過酷さであった。囚人たちは単調な作業に埋没し、己が機械のネジクギとなって取り込まれたような感覚に陥る。それが何年も、罪によっては何十年も続くのだ。

2011-08-03 10:27:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アップ……ダウーン」「アップ……ダウーン」ベツリキは顔色がすぐれず、目が泳ぎがちだ。フジキドはそれを尻目に無表情で淡々とイカを裏返す。「……モリタ=サン」思いがけずフジキドに声をかけて来たのはゼンダであった。「どうした」「この前は済まなかったな」「……」

2011-08-03 10:36:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドはイカを裏返しながらゼンダの言葉を待った。ゼンダは無駄口を叩かない男である。極端に。「あんた、どうしてここに?」「前も言った通り、スシ屋強盗だ」フジキドは答えた。だがゼンダは遮った、「いや、いいんだ。そういうのは。咎めたり、チクろうってンじゃない」「……」

2011-08-03 10:43:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺が言うのも何だが、あんた、普通じゃ無いからな」「……その質問は単純な興味からか、ゼンダ=サン」「そうだ」ゼンダは言う。「今後あんたと話す機会も無いだろう」「……」フジキドはイカを裏返しながらゼンダを見た。ゼンダは確信的な表情であった。今後話す機会が無いと彼は言ったのだ。

2011-08-03 11:00:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この男はベツリキの脱獄計画について、ある程度感づいているようだ。今日これからフジキドが行う事について……?ゼンダの方から口を開いた。「だいたい知ってる。今日なんだろ。ベツリキ=サンを見てりゃわかる。俺は鋭いんだ……最近な……」

2011-08-03 11:55:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは無言である。ゼンダは言葉を継いだ。「ベツリキ=サンの計画に乗っからせてもらう」「……復讐か」「俺にはもう何も無い。だが、外でやるべき事が残ってる。ソバシェフ・ランペイジ事件は続いているんだ」ゼンダは目を細め、フジキドの反応を見守った。

2011-08-03 12:28:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドはイカを裏返しながら考える。ゼンダはどこまでやる?彼が世に放たれれば、今度は建設中物件の破壊などでは終わるまい。彼を絶望へ追いやったメガコーポの人間のみならず、多くの無実の市民すら犠牲になるやも知れぬ。だが、フジキドにはゼンダの復讐を懸念する資格など、ありはしない。

2011-08-03 13:20:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドがニンジャスレイヤーとしてニンジャを殺し続ける中で、無実の市民はどれだけ死んだだろう?ニンジャスレイヤーの存在がどれだけの市民を不幸にしただろう?そんな事を考えていてはキリが無い……。「イカを裏返せ、ゼンダ=サン」フジキドは言った。

2011-08-03 14:22:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!アイエエエエ!アイエエエエ!グワーッ膵臓!膵臓がーッ!」グラウンドにフジキドの絶叫が響き渡ったのはその日の昼休みの事であった!「グワーッ!アバーッ!」砂利の上に嘔吐!さらに両腕をしゃにむに振り回し、近くの囚人を殴りつける!「グワーッ!?」「苦しい!苦しい!」

2011-08-03 14:37:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「てめェ何を……グワーッ!?」「苦しい!苦しい!」「グワーッ!?」「取り押さえろよ!看守!」「助けて!」「グワーッ!グワーッ!」ジュッテとサスマタで武装した看守達が駆けつけた時には、フジキドは砂利の上で痙攣、虫の息であった。「この野郎!」殴られた囚人達が倒れた彼を蹴りつけている。

2011-08-03 14:40:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おい畜生やめろ!」ジャイゴが食堂からグラウンドへ飛び出し、囚人達を押しのけて近づいた。「そいつはリンドウの奴だ!おい!どうしたんだモリタ=サン!」「膵臓グワーッ!」「どけ」看守が無慈悲にジャイゴを押しやる。そしてフジキドから他の囚人を引き離した。「全員首の後ろで手を組め!」

2011-08-03 14:43:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!アバーッ!」フジキドは痙攣しながら今度は吐血しだした。「ヤバイぜ!」囚人達がどよめく。「医務室だ!急げ。ストレッチャー重点!」看守が大声で指示。すぐにストレッチャーが別の看守達によって運ばれてくる。「グワーッ!グワーッ!」「急げ!」

2011-08-03 14:48:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ナムアミダブツ!あいつ、マジでやりやがった」ベツリキは柱の陰で呟いた。フジキドは複数の看守によって医務室へ運ばれて行く。医務室は独房と同じ建物、渡り廊下の先だ。グラウンドでは興奮した囚人達が看守に詰め寄り、あるいは互いに言い争い一触即発!

2011-08-03 14:56:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ベツリキはしめやかに歩き出す。囚人達の視線とは逆方向だ。看守達もグラウンドでの騒ぎが暴動に発展しないよう、今まさに瀬戸際の状態である。そんななか、ベツリキ一人だけが目的を持って……否!「待て、ベツリキ=サン」「アイエエエ!?」ベツリキは思わず悲鳴を挙げた。振り返るとゼンダ!

2011-08-03 15:00:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺も行くぞ」「なンだと!?」「お前の企みに気づいたのはモリタ=サンだけではなかったと言う事だ。だが話は後だ。お前に拒否権は無い。断ればすべてバラす。迷っている時間も無いぞ、さあ!」「……クソッ!なら来い!早く!」

2011-08-03 15:04:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ビガービガービガー!警報音が鳴り響く。『正門でトラブル!各自武装し侵入者を押しとどめよ!マッポの到着を待て!』「……正門?」腰を落として足早に進みながら、ベツリキは訝しんだ。「また何か別件か?」ビガービガービガー!「まあいい。好都合よ。いいかゼンダ=サン、ボイラー室だぜ」「うむ」

2011-08-03 15:12:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おや、なんだか騒がしいね?」紳士然とした男は……イグゾーションは独房の外へ耳を向けた。だがさほど気にはかけず、狭い独房の隅で震えながら失禁するトオヤマ・デンジをにこやかに見下ろすのだった。「そうでも無いか?ウミノ=サン」「……!」「そんなに怖がる事は無い、ウ、ミ、ノ、サ、ン」

2011-08-03 15:24:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ……!」「よいか?私は、その……拷問だの、暴力だの、その類の野蛮な行いは好まないのだ。あれはそれ相応のゲニンの仕事だからね」イグゾーションは無感情に言う。「部下にはその手の行為を好むサディストも少なくないがね。ニンジャソウルは人間の残虐性に影響を及ぼすのかな?」

2011-08-03 15:31:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イグゾーションの手がトオヤマ・デンジ……偽名を使ったウミノ……の首筋に伸びる。「教えてくれないか。質問には全て答えたまえ。正直にするんだ。そうすれば君もきっと生きられる。私は寛大なのだから」「し、知りません。ニンジャソウルのそうした性質の事は。本当です」「そうか。では次の質問だ」

2011-08-03 15:38:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエ……アバッ……!?」首筋を押さえつけられたウミノの目が白色LEDボンボリめいて徐々に輝き出す。「アバッ……?」「大丈夫だ……まだ……まだオーバーロードはしていない……実際繊細な作業だよ。君の体内から活力を引き出してあげているんだ。恐れずに喋る……活力を」「あああ……」

2011-08-03 15:56:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「では次の質問だ。君はなぜ、君が指揮するコフーン遺跡の調査隊から逃げた?大変名誉な仕事であるし……ロードのご期待も大きかったわけだが……」「アバッ……アバッ……アバッ……お、恐ろしかったのです。災いが。全世界に災いが。ビジョンが……」「ビジョン。なんと非科学的な」

2011-08-03 16:19:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イグゾーションは眉を顰める。ウミノが震え、体の内側が輝き出す。「アバババッ!?」「……いけない。力がこもってしまう。君は嘘を言っていないね。あの神器が大きな災いを呼ぶと?学者の君はそんな蒙昧な話を真っ先に否定してかからねばならんだろうに。だからカギを持って逃げたと?」「そうです」

2011-08-03 16:27:51