白御影の階段

寺生まれの毛利さんシリーズ5話目です。二部構成のお話の前編。  ※オリジネタ プロフ絵変更に失敗して2種類絵が出てます。
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種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 守護霊(?)とやらに会って以降、特定の交差点や何かを通る度に左目が熱くなり、周りを見ると近くに花などが供えられている事が増えた。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:36:35
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 意識してみると、最近何かがあったらしい場所ではより熱く、そうでもない所では反応が弱いか完全にないという事が多い。もちろんごく最近でもなんの反応もない所もあるし、全く何の変哲もない道なのにやけに熱くなる事もある。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:37:28
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@nullどうやら、左目は霊センサーみたいなもんだそうだ。普通慣れてくれば気配で霊の強弱がわかるそうだが、しばらくはその熱を指針にすればよいだろうと毛利に言われた。今の段階ではあんまり左目が熱くなるような場所には近付かない方がいいらしい。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:38:23
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null元々そういう力を持っていたのか、それともあの子鬼がくれたものなのかはわからない。だがまぁ、変なもんが見えたりしない分、気は楽だ。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:39:06
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null もう一つ変わった事といえば、奴らとの遭遇率が上がった事だ。家康は何かと俺を遊びに誘うようになり、毛利はバイト先にちょいちょい現れるようになった。だから、本当に今のバイト先が本屋でよかったと思っている。毛利は本を自費で買いたい派らしい。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:39:53
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 何故こんな事をしているのかを家康に尋ねてみると「こういった力は伝染病みたいなもので、力が強い者の近くにいると感染しやすいんだ」「か、感染?」「そう、感染」などと穏やかな顔で物騒な事を言われた。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:40:46
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null もちろん人の中にはそういったものに抵抗力を持つ者もいて、必ずしも感染するというわけではない。が、俺みたいに潜在能力(具体的にどういうものかは聞いてない)がある奴には効くそうだ。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:41:59
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null ……そういや変な事が起きるようになったのも大学入ってからだな。正確にいえば、毛利の噂を聞いてから。……考えすぎかもしれないが。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:42:55
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null それ以外は本当に変わった事がない。相変わらず外は暑いし、バイトもある。修行めいた事でもやらされるのかと思ったが、特にそんな事もなくぐだぐだと過ごしていた。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:43:50
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 「……これでいいのか?」いつもは街中をうろついていたのを、海での釣りに誘ったのは俺の方だった。沖ではなく堤防で二人並んで糸を垂らしながら、俺はポツリと呟いた。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:45:07
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 「ワシに釣りの事を聞くな。お前の方が詳しいだろう」「違うって。わかってんだろ」ビギナーズラックなのか、先に魚を釣ったのは家康の方だった。餌を付け直しながらこちらを見もしない。その態度がなんだかいつもと違って見え、少し強い口調になってしまう。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:46:02
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 「……逆に聞こう。元親はどうしたいんだ?」「どうって……それがわからないから聞いてんじゃねぇかよ」ヒュッと小気味いい音を立てて家康は竿を振るう。その視線は浮に向いていて、俺の方には向かない。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:47:05
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 「ワシは……こっちの………ない……」「あ?」ゴゥッと急に強い風が吹き、家康の言葉は風に攫われてほとんど耳に入らなかった。聞き返そうとした瞬間、厳かな曲調の音楽が波間に響く。どうやら家康の携帯が鳴ったらしい。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:48:13
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 携帯を開いた家康は表示された名前を見て、ほんの一瞬だが表情を曇らせた。いつも笑顔なのを見慣れているせいか、なんだか不安になる表情だ。家康はすまん、と小さく断ってロッドをクーラーボックスの上に置き、俺から距離を取って電話に出た。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:49:13
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null こっちが風上になるので、電話の声は届かない。何故だか縮こまって口元を隠しながら電話に出ている家康は、時折俺に目をやるが、目が合うとすぐに逸らされる。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:50:18
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null そりゃまあ誰だって隠したい電話の一つや二つあるだろう。けれど、それにしたって普通の電話ならこの態度は解せねぇ。おそらく、というか十中八九俺絡みの話なんだろう。そして、それを俺には知らせないようにしている。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:51:22
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 気にしすぎては駄目だとわかってはいるが、だからといってこんな状況で釣りに集中できるわけがない。顔の方向は海に固定し、視線は家康の方に向ける。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:52:17
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 話がヒートアップしているのか身振り手振りで何かを訴えていた家康だが、ある所で急に力をなくしたようにうな垂れ、ゆっくりと携帯を耳から離した。その瞬間、また強い風が吹き、今度は逆にこちらが風下になるように流れてきた。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:53:13
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 「タイムリミットか」小さな、抑揚のない家康の声が耳に飛び込んでくる。気のせいかとも思うほど短いそれに、何故だかやけにゾッとした。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:54:15
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 「………えーと、ここ、ドコデスカ……?」煩いくらいに蝉が鳴くのが聞こえる、鬱蒼とした暗い山中。道路の明かりもまばらで、夏だというのに寒々とした光景だ。そんな所で車を止められ、俺をここに連れてきた張本人、毛利元就に話しかける。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:56:26
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null しかし、毛利は運転席でじっと腕時計を見つめているだけで、なんの反応も返さない。予想はしてたが、心細いから無視はやめて欲しい。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:57:24
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null しばらく車中にて重苦しい雰囲気に耐えていたが、休に毛利が車を降りたので、慌てて後に続く。「な、なぁ、今どこに向かってんだ?」「荷物は車に置いて行け」話しがまるで噛み合わない。もはやこれはわざとの域ではないだろうか。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:58:27
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 毛利が喋らないので、仕方なく俺も黙ってついていく。道路の片側は崖で、もう片側は木が生い茂っている。歩いている所はアスファルトなので歩きやすいが、一歩ガードレールを踏み越えると明かりもない森だ。蝉の声はそっちの方から聞こえてくる。 #kaidan_bsr

2011-08-06 23:59:49
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 「なっ……」木を見ながら歩いていたせいで歩みが遅れたのか、視線を前に戻すと毛利がいなかった。どこに消えたんだと慌てて辺りを見渡すと、少し行った所に森の中へと続く階段があった。思わずそこまで走って行き、階段を見上げる。 #kaidan_bsr

2011-08-07 00:00:49