1Fの中低濃度タンク(いわゆる汚染水タンク)は、なぜ基礎に固定されていないのか

関心のある人向け。(東電の説明に、個人的にかなり違和感を覚えたので、地味に調べなおした内容です。)
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Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

1Fの中低濃度タンク(いわゆる汚染水タンク)は、なぜ基礎に固定されていないのか、という件について、以下、備忘用に連ツイする。 最初に断っておくと、私の考えでは「基礎に固定しない」こと自体は、批難するにはあたらないと思うけれど、耐震性について東電の説明は、肝心な点をごまかしている。

2021-05-18 21:20:56
Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

続き)1Fの、いわゆる「汚染水タンク」は、過去の時点では、かなり濃度の高いSr-90(数千万~2億 Bq/L 程度)を貯蔵していた時期もあったが、現在は、ずっとリスクの低いものしか入れられてないので、ここでは実施計画書の名称である「中低濃度タンク」を用いることにする。

2021-05-18 21:21:23

 
2/13の地震によるタンクの滑動と、東電の説明

Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

2021/2/13 の地震では、ALPS処理水やSr処理水の貯蔵タンク「中低濃度タンク」が想定以上に移動した。(ある程度の変位は想定されていたので、接続する配管はフレキシブル継手によって変位しても大丈夫なようになっていたが、その許容値を超えたタンクもあった。) pic.twitter.com/n1iaFmZtJX

2021-05-18 21:22:31
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中低濃度タンクは、基礎に固定されていない(置いてあるだけ)なので、設計基準を超える地震動により「滑動」した。 しかし、今回は、配管が壊れて漏洩するような事故に至らなかったのは幸いなことだった。(ずれた状態で、再度タンクが動いたらまずいので、対応を検討しているようである。)

2021-05-18 21:22:55
Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

また、今回、移動量(滑動量)が、「Dエリア」のタンクで特に大きかったため、この付近では、地盤の条件が悪いための、地震動が大きかったのではないかと推測されている。この件については目下、調査が進められている。 (参考)2021/4/19 監視・評価検討会資料→ nsr.go.jp/data/000349457… pic.twitter.com/YG5dleSiQO

2021-05-18 21:23:37
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Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

東電は、2021/2/18の会見では、タンクを基礎に固定しない理由を「転倒を防ぐため」と説明しているが、普通に考えれば、固定されているほうが転倒はしにくいに決まっている。(説明の意味がさっぱりわからない。) twitter.com/Spia23Tc/statu…

2021-05-18 21:24:03
さかなのかげふみ @Spia23Tc

追加情報が出ているが>通報基準に応じて公表するが、サンプルタンクは漏洩がなかった、情報の共有としてお知らせ タンクの最悪の事象は転倒。設計上耐震評価はされている、基礎に固定していないのは転倒を防ぐため、ある程度のずれは問題ないと考える サンプルタンク容量 1253m3

2021-02-18 18:23:46
Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

東電の2021/3/5の資料には 「タンクについては、損傷を防止する観点から、基礎に固定せず、平置きしており、⼀定以上の⼒が加わった際に、動くことにより⼒を逃し、転倒やタンクの損傷を防ぐように設計されております。」 という不思議な説明が書かれている。 tepco.co.jp/decommission/i… pic.twitter.com/2nQBf0oR2o

2021-05-18 21:24:48
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Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

「動くことにより力を逃す」のなら、普通は免震架台や、制震ダンパーなどを使うと思うのだけど、まさか、コンクリート床の上を、タンクがガリガリと右に左に動くのが耐震設計!? いやいやそんな…、と思うのだけど、その点を追求した記事は、今のところ見たことがない。

2021-05-18 21:25:11
Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

私が見たかぎり、各メディアとも、タンクを固定しない理由について、東電の説明をそのまま報道しているかと思う。例えば2021/2/25の東京新聞の報道はこんな感じ。 twitter.com/ogawashinichi/…

2021-05-18 21:25:30
小川慎一 / Shinichi Ogawa @ogawashinichi

中身の入ったタンクが19センチも動くとは驚きです。タンクは損傷や転倒を防ぐために基礎部分に固定されず、平置きされています。 タンクは福島第一原発で大型タンク53基の位置ずれる 地震で最大19センチ:東京新聞 TOKYO Web tokyo-np.co.jp/article/88088

2021-02-25 17:33:20
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その後、東電は2021/4/19の資料では、タンクを基礎に固定しない理由を「中越沖地震の経験よりタンクの滑動を許容する設計。」 と記載している。 2021/4/19 監視・評価検討会資料→ nsr.go.jp/data/000349459… pic.twitter.com/bLtYfUq6QE

2021-05-18 21:26:17
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「中越沖地震の経験」というのが具体的に何を指すのかは不明だが、おそらくは、設計基準よりも大きな地震動を受けたとき(中越沖地震のときも、そのようなことが起こった)どのような被害の形式を許容すべきか?(また、どのように復旧しやすいか) といった考察のことだろう。

2021-05-18 21:26:48

 
中低濃度タンクは「耐震Bクラス」

Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

さて、そもそもなぜ、タンクを固定しなくて良いかと言うと、それは、中低濃度タンクが「耐震Bクラス機器」であり、その設計基準に従えば、計算上、タンクを固定しなくても、耐震Bクラス基準の地震動に耐えられるからである。

2021-05-18 21:27:23
Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

2021/4/19の規制庁資料 「2月13日に発生した地震への対応について 」 nsr.go.jp/data/000349458… には、「2月13日の地震は、B クラス設備の設計地震力を超えている可能性がある。」という認識が示されている。 pic.twitter.com/lWqg9SmUIk

2021-05-18 21:27:50
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ここで規制庁はさらに、「(全ての)B クラス機器については、地震後の影響評価・点検内容を明確にする必要がある。実施に当たっては優先度を定めること」としており、ほかの耐震Bクラス機器についても、地震の影響を調査・検討することを求めている。 (今後、新たな問題が見つかるかもしれない。)

2021-05-18 21:28:08
Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

原発の耐震Bクラスというのは、一般的に考えれば、決して耐震性が低いというわけではないけれど、「Bクラス」という語感から受ける印象は良くない。 たとえば福島の漁業関係者であれば、汚染水対策関連の設備には、もっと高い耐震性を備えて欲しいと思うのが当然だろう。

2021-05-18 21:28:34
Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

経産省や規制庁は、低線量のトリチウムの影響は低いから、万が一タンクがひとつふたつ転倒しても、たいしたリスクはないと考えているかもしれないけど、一方で、そんなことが起きれば社会的な影響はかなり大きいだろう。このあたりにも、廃炉の難しさがあるのだと思う。

2021-05-18 21:28:55
Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

全ての設備に、最高ランクの耐震設計をしていては、時間もカネもキリがないので、重要度の低い設備の基準が低いのは当然のことだけど、地元関係者からすれば、なるべく最高の安全対策を求めたいに決まっている。 この件は報道関係者も含め、ていねいな説明が要求される問題なのだと思う。

2021-05-18 21:29:12
Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

ちなみに、原発にある耐震Sクラスの大型タンクとしては、一例を挙げると、非常用ディーゼル発電機用の燃料タンク(軽油タンク)、はSクラスとなっている。中低濃度タンクとの比較で言えば、重要性が圧倒的に違うのは理解できるかと思う。

2021-05-18 21:29:30

 
中低濃度タンクの滑動評価

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ここから、「中低濃度タンク」の耐震性評価がどうなっているかを見ておく: 中低濃度タンクは「耐震Bクラス機器」なので、基準地震動Ss ではなく、  弾性設計用地震動(Sd)は、1/2×Ss  設計用地震力 は、1/2×Sd = 1/4×Ss によって設計されている。

2021-05-18 21:29:47
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計算上、1/2×Ss の場合、摩擦力により「滑ることはない」という評価になるので、タンクを基礎に固定する必要がないわけである。(耐震Sクラス機器なら、むろん基礎に固定する必要がある。) 出典:2015/1/23 「1F汚染水貯留タンクのスロッシング評価について」 nsr.go.jp/data/000097233… pic.twitter.com/iqWJPtsdqF

2021-05-18 21:30:16
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また、中低濃度タンクの基礎は、図のような簡易なもの(基礎厚 600 mm)となっており、これでは 1000トンもの重量のタンクを固定することはできないだろう。(タンクが逼迫していた時期は、このような基礎しか作る余裕がなかった、というのも事実だろう。) 出典:同上 pic.twitter.com/WlGueRAe6q

2021-05-18 21:30:46
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但し、「耐震Bクラスの設計用の地震動」で滑ることがないとは言っても、それより大きな地震の時に問題が起きては困るので、基準地震動Ssについてのすべり量を評価し、可撓性のある配管で接続することによって、大きな地震時でも問題がないように設計されている。(はずであった。)

2021-05-18 21:31:13